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Photo byys1970

秩序を守る人とズラす人:『教場』を観て、私は絶対に警察官に向いていないと思った話【ひとりごと】

    たぶん私みたいなタイプは、警察官とか自衛隊員みたいな職業に、致命的に向いていない。

    ――――――

    今更ながら『教場』を一部だけ観た。
    なんかすぐ退校届を生徒に出させたがる警察学校の指導官の話、としてしか認識してなかったのだが、まあこれが面白い。

    やはり木村拓哉氏は素晴らしい役者だなあと感じながらも(元々ゲームのジャッジシリーズ〈通称キムタクが如く〉を通して好きだったけど)、同時にふと思いついてしまった。
    「絶対に向いてねえな俺」と。

    警察学校も軍(自衛隊含む)の訓練も本質は同じところにある。『フルメタル・ジャケット』や『ジャーヘッド』などでも描かれているが。

    あれ、表向きは「心身を鍛える」みたいな話になっているが、本質はそこじゃない。

    「個人の判断より、組織としての統一判断を優先できる状態を身体化すること」こっちが本体。そしてこれが徹底的に、私に向いていない理由だ。

    ---

    ■ 「個を消す」ではなく「上書きする」

    誤解されがちなのだが、完全に「個」を消しているわけではないとは思う。正確には「個を一時的に上書きする術を得る」に近い。

    なぜそれが必要か。
    極端に言うと、警察官も自衛官も軍人も、

    ●判断の遅れ=即死
    ●情報は常に不完全
    ●感情が判断を狂わせる

    みたいな状況が前提だから。

    だからこそ、「考える前に動ける共通OS(=即時判断のためのプリセット)」が必要になる。
    それが「群」。

    ---

    ■ 思考停止を促しているわけではない

    ●命令に従う
    ●フォーメーションを守る
    ●個人の判断を一旦凍結する

    これだけ見ると「思考停止」に見えるが、実際は逆。「思考の外部化」のほうが正確なのだろう。

    つまり、個としての自分の中で毎回判断するのではなく、「あらかじめ共有された判断基準(共有サーバーみたいなもの)」に乗るということ。

    ---

    ■ 『教場』が描いていたもの

    『教場』で徹頭徹尾やっていたのは「状況に適応できる人の選別」に見えた。「倫理的に正しい人」を育てているわけではない。「個をいったん潰せる資質と強度のある人の見極め」である。

    その強度がないと、文字通り「死ぬ」から。
    厳しい世界だ。

    ---

    ■ 教官側のほうがキツい説

    YouTubeでアメリカの新兵訓練のドキュメントを観た時も思った。人格否定に近い指摘の嵐。ああいう訓練キツい。どう考えても教官側のほうが。

    理由は至極シンプルで、「人を壊さずに壊す」必要があるからだ。

    ●心を折るが、折りすぎると脱落させてしまう
    ●恐怖を与えるが、トラウマ化はNG
    ●従わせるが、思考力は残す

    つまり、 常に「矛盾ギリギリのライン」を見極め続ける仕事。しかも彼らは新兵以上に「自己を殺すこと」を強いられる。究極のマネジメント。人材育成の極北。一応私も中間管理職の経験者だから、それがどれだけ高度なことなのかは判る。
    そしてやりたくない。

    ---

    ■ で、なんで自分には向いていないのか

    長々と前提を書いてしまったが、ここで自己分析に戻りたい。

    私はたぶん、カテゴライズするに「秩序を“内側からズラす人”」なのだ。
    またはそういう人を増やす人。資質的にも職業(広告のクリエイティブ)的にも。

    一方で、警察や軍は「秩序そのものを“身体化する人”」を作る場所。
    この時点でベクトルが真逆。

    ---

    ■ 向いていない理由(精密版)

    noteの記事や広告の仕事で作るもの。
    以下の条件が必須だ。

    ●メタ視点を強くする
    ●構造を見抜こうとする
    ●「ズラし」で価値を作る

    これを裏返すと、「完全に同調することに耐えられない」ということになる。
    個をいったん潰す強度が著しく低い。

    ---

    ■ でも、それは劣っているわけではない

    ここは誤解されたくないところで。

    ●秩序を守る人(警察、自衛隊など)
    ●秩序をズラす人(広告、創作、批評など)

    これは、上下ではなく、役割の違い。
    または合わせ鏡のような関係だ。
    この両方がいないと社会は成立しない。

    ---

    ■ 創作(文章執筆)との接続

    これは文章執筆にもそのまま当てはまる。

    「守る人」。
    文法を守る、論理を通す、読者の理解を作る。

    「ズラす人」。
    前提を疑う、文脈を裏切る、論理の跳躍を作る。

    そして重要なのは「両方必要」ということ。秩序が根底にないと、ズラす対象も存在しないから。

    創作とは、秩序を守ることではない。
    かといって、秩序を壊すことでもない。

    「秩序を理解した上で、どこまで疑えるか」。
    それが書き手の仕事だと思っている。

    ---

    ■ 「ズラす人」は単独では成立しない

    前述の通り、「ズラす人」は「秩序がある世界」でしか存在できない。

    ●秩序がある → ズラせる
    ●秩序がない → ただの混沌

    だから自分は、秩序(またはそれを作る側)を否定したいわけではない。むしろ前提として必須。警察や自衛隊の皆様、ありがとうございます。

    ---

    ■ 結論:持ちつ持たれつ

    ●警察学校=秩序に同化する訓練
    ●自分=それに適応できない側

    でもそれは、不適合ではなく、役割の違い。
    社会にはどちらも必要だ。

    そして少なくとも、書く側としては、その役割の違いが武器になる。「物事を疑う」には、疑う対象としての体現者が必須だ。我々書き手は秩序によって生かされている。

    なので、私は「秩序が嫌い」なのではない。
    むしろ秩序があるからこそ、それを別の角度から見ることができてしまう人間なのだ。

    なお、もし仮に自分が警察学校に入ったらどうなるか。十中八九、「座学だけはそこそこ優秀だけど、ある日突然辞めるタイプ」だと思う。

    そして辞めたその日に、「なぜ自分は辞めたのか」という分析記事を書き始める。……そういう人間だから、最初から向いていないのである。

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    ポップカルチャー × 文化論 × 言語を「居酒屋サブカル談義」的に語るディレクター兼ライター。 アメリカ高校留学→芸術系大学→広告ディレクター。 文化批評、留学体験、言語論などを展開。 初めての方は固定記事「自己紹介」へ。 コンサル・ライティングなどの仕事依頼はDMよりどうぞ!

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