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䞞山健二著「倏の流れ」幎芥川賞受賞䜜

    石野倏実

     「倏の流れ」  䜜者 䞞山健二
       発衚   石野倏実
      ※今から幎近く前に同人誌の読曞䌚で発衚した読曞蚘録です
     
    䞞山健二本名プロフィヌル
     
    幎S幎月日長野県飯山垂で生たれる。
    幎S幎囜立仙台電技高専入孊。
    幎S幎江商入瀟。テレックスオペレヌタヌずしお勀務。
    幎S幎月「倏の流れ」を「文孊界」に発衚。
               同䜜品により第回文孊界新人賞を受賞。
    幎S幎月「倏の流れ」」により第回芥川賞受賞。
    ※歳での受賞。これは綿矢りさ歳か月に砎られるたで最幎少蚘録。
               月  江商退瀟。
               月  結婚。
               月 初の小説集「倏の流れ」倏の流れ、雪間、その日は船でを刊行。以埌䜜家生掻に入り、故郷長野の安曇野にお珟圚たで暮らす。
    幎H幎歳 文芞春秋呚幎蚘念曞䞋ろし「千日の瑠璃」䞊䞋巻刊行。
    幎H幎歳 「新朮」連茉の「ぶっぜうそうの倜」を刊行。
    文壇ず䞀線を画しお創䜜を続け、発衚䜜品は初期の短線から䞭線長線ぞず移行し、゚ッセむ集を陀き線以䞊になる。
     
     
    ストヌリヌ
    死刑執行の拘眮所を䜵せ持぀刑務所高専時代を過ごした仙台にヒントを埗たのかず思うが架空であろうに勀務する刑務官䜐々朚が䞻人公。官舎に身重の劻ず就孊前の息子二人ず暮らしおいる。
    䞻な登堎人物は、䜐々朚、同僚の堀郚、新入りの䞭川、䜐々朚の劻、反抗的な文盲の死刑囚である。季節は倏。早朝時の䜐々朚䞀家の日垞の描写から始たる。劻ずの䌚話。詳现な所内ず勀務の様子。䞭川ず執行間近かな死刑囚ずの間で起きた事件。同倜、蟞職を決意した䞭川の䜐々朚宅ぞの蚪問。その䞭川を誘っおの翌日の堀郚ず䞉人での釣り行き。釣りの翌日は死刑執行日。拘眮所からメヌトル離れた刑堎。死刑囚ず立ち䌚う人々の様子。それはペヌゞにも及ぶ。
    その執行を担圓したこずで埗た翌日の特別䌑暇。䜐々朚は、子䟛たちずの玄束である海氎济に出かける。その海岞での劻ずの䌚話、持船の汜笛、海鳥、劻の子䟛たちを呌ぶ声、走っおくる子䟛たちの描写でラストになる。週間足らずの間に起こった出来事である。
     
    テヌマ
    䜜者は「倏の流れ」ずいう題名をこの小説に぀けおいるが、この小説のテヌマは䜕であろう。
    䞀刑務官の「流れゆく倏」の日垞を通しお、䜕が蚎えたかったのか。
    この仕事は、合法的に蚱された戊争以倖の堎での、人が人を殺すずいうこずができる唯䞀の職業である。いわばこの特殊な職業で生蚈を立おおいる刑務官たちは、仕事堎での特殊性を陀けば、劻子もいお普通のサラリヌマンず同じような暮らしをしおいる。
    ただ、職業ずいうものは、ほが自分の意志で遞択がなされるものであり、この特殊な職業に埓事しおいる人々の動機に䞀切觊れられおいないのが、私には残念であった。
    新入り䞭川のこの仕事に察する吊定は、酒に酔い、倜曎けに䜐々朚の家を蚪れ、やめたいず蚀っおきた䌚話に衚れおいる。
    「僕はやめたす」「䜕を決たっおいるでしょう。あの忌々しい䞋劣な仕事ですよ。実に䞋劣だ」「僕には人を殺すこずなんか出来たせん」
    䜐々朚はここで「人殺しは奎らだ」ず蚀うが、䞭川は「そんなこず蚀っお䜐々朚さんは平気でやっおいるんですか䜕も感じないんですか」ず問いかける。
    「そんなこずはないが―――」ず答える䜐々朚に「じゃあ、なぜやめないんです」ず䞭川。
    䜐々朚は「どんな仕事だっお楜じゃないよ」ず答えるず、䞭川は「䜐々朚さんは平気なんだ。きっずあの仕事が奜きなんです」ず飛躍させた。
    「奜きなもんか」以䞋省略
    この仕事は、誰かがやらなければならない神聖な職業だず、勀務するにあたり、所長の蚓瀺がなされる。
    新米の䞭川は、所長の蚀葉は正しいが自分にはできない、無理だず結論を出した。
     新入りでもあり、ひ匱そうな䞭川は囚人数日埌に死刑執行される死刑囚の反抗の暙的になっおいた。
    深倜の蚪問の圓日、二人は組んでの勀務だった。蹎られ殎られ、口から血も流れ、危うく拳銃たで奪われそうになった。䜐々朚は譊棒でその囚人に脳震盪を負わせ、その間に䞭川に手錠をかけさせようずしたが、䞭川は、それすらも出来ず、結局䜐々朚が手錠をかけた。
    これは事件であるが、取調宀では倧した事件ずしお扱うこずをせず、死刑の執行も延期されなかった。
     
    䜐々朚は同僚の堀郚に比べ、枩厚である。翌日の釣り堎での䌚話は、どうしおも死刑執行の話題になる。
    堀郚は、䞭川の替りに任務を行うこずを匕き受けた。
    䜐々朚は囚人に察しお「奎ら、人間じゃないんだ」「圢は人の圢をしおいるけどな。どんな優秀な機械にしたっお、数倚く䜜るうちにゃ必ず䞍良品を出すだろう。その䞍良品はどうする捚おるよりほかないんだ。人間だっおこんなに倚くいれば同じこずさ。䞍良品をそのたた䜿うわけにはいかないんだ」ず述べおいる。
    堀郚も同じ考えなのだろう。
    死刑執行ずいう職業においおは、己を玍埗させ割り切らなければ、その任は務たらない。
     
    釣りの翌日は、死刑執行の日である。
    䜐々朚ず堀郚は、所長、䞻任、牧垫その他の立䌚人たちず共に刑堎に向かう。倩候は雚。絞銖刑盎前の死刑囚の様子は、ずおもリアルだ。
     
    いくら残忍な殺人者であっおも、死刑は本圓に必芁なのだろうか。
    皆様に、死刑の是非を問いたい。
     
    無事に任務を終え、詰め所に戻っおきた二人を䞭川が埅っおいた。
    田舎に垰る切笊たで甚意し、別れを告げ郚屋を埌にした。
    圚職䞭は足を匕きずる音のする䞭川であったが、郚屋を出た圌の足音は匕きずっおはいなかった。
     
    クラむマックスの海蟺のシヌンで、䜐々朚は「おなかの赀ちゃんが動いたの」ず蚀う劻に「子䟛たちが倧きくなっお俺の職業知ったらどう思うかな」ず聞く。
    「どうしおあなた今たでそんなこず蚀ったこずないわ」
    「そうか」ず蚀い「ただ、思っおみただけだ」ず続けた。
     
    この仕事に手際の慣れはあっおも、感情の慣れはあるのだろうか。
    しかし誰かがしなければならない仕事ではある。
     
    神聖な仕事であるず自分に蚀い聞かせ、盞手は姿は人間であっおも、人間ではないず割り切る粟神力がなければ務たらない仕事である
     
    刑務官看守は、法務省で「刑務官採甚詊隓」ずしお募集される。総合職や䞀般職から配属される職皮ではない。この職は自分から進んで応募する職業である。
     
    したがっお、䜕床も死刑を執行し䞭堅に至った䜐々朚の新入りの頃の心情を、倜曎けの䞭川ずの䌚話の䞭で描いお欲しかった。
    文孊は、すべおを曞かない。読み手の想像力に委ねる郚分が倚いのが小説であるずしおも、この郚分はもう少し掘り䞋げがあっおも良かったのではないだろうか。
     
    巻末解説で茂朚健䞀郎は、こう曞いおいる。
    「重い眪を犯したずはいえ、ひずりの人間がこの䞖から去るこずが、別の人間の人生を支える。そのような因果的脈絡を、生掻の糧ずしお蚈算しさえする。恐ろしい冷血のようだが、それは私たちが䜏むこの䞖界の象城的瞮図でもある」
    たたこのようにも曞いおいる。
    「およそ、瀟䌚で人ず亀わる職業぀たりはありずあらゆるすべおの生業においお、他者の幞犏ず自分のそれが、完党に和する事態などありえない。刑務官の胞の痛みは、他者ず亀枉しなければ生きおいけない我々党おの哀しみである。だからこそ『倏の流れ』は刑務所ずいう特殊な堎所における人間暡様を掻写したずいう以䞊に、私たち䞀人䞀人の存圚の根幹にかかわる文孊ずしおの普遍性を持぀のである」
    テヌマは「呜「「死刑」「職業」を通しお「生きるずは䜕か」であろうず思う。
     
    䞞山健二に぀いおの私感
     
    昚幎の秋から初冬にかけお、毎日ではなかったが、玄か月間を䞞山健二の「ぶっぜうそうの倜」を読むこずに費やした。それが䞞山健二ずの出䌚いである。
    これでもか、これでもかず剛速球で投げおくる難解な語句。そしおこれらの語句が積み重なった文章は、いい加枛な姿勢で読み向かう読者には、安易に読む進むこずを蚱さない気迫に満ちおいた。
    凊女䜜であり、尚䞔぀長い間、芥川賞最幎少受賞䜜ず蚀われ続けたこの「倏の流れ」の文䜓ず「ぶっぜうそうの倜」の文䜓は、䜿甚されおいる語句の難床が違う。
     
    䌚話もあり省略もあり、リズムもあり䜙韻もあり、無駄のない簡朔な文で構成されおいる「倏の流れ」に比べ「ぶっぜうそうの倜」は、蟞曞を片手に読たざるを埗ない語句ず、䞻人公の独癜の執拗な繰り返しにより、同じ䜜者のものずは思えないほどであった。
    䜜者の倉遷を玐解くには幎代順に読むのが正道であるが、圌の著䜜が倚すぎるため、文䜓が倉わったずいわれ、実隓小説ずもいわれる「千日の瑠璃」䞊䞋巻をやっず手に入れお読み始めたずころである。
    「私は颚だ」で始たり「私は闇だ」「私は棺だ」「私は鳥籠だ」「私はボヌルペンだ」ず毎日「私はだ」から始たるこの長線小説は、ペヌゞ分の原皿を䌑むこずなく日かけお曞き続けたペヌゞ毎に日が付しおあるものである。
    その執念は、䞞山の生きる姿勢そのものなのだろう。
    それは劥協を蚱さず、完璧を求め、さらに高みを目指す。
     
    朝時に起き剃髪をし、時間を原皿甚玙に向かう時間ずする。残る時間の倧半を造園にあおる。自己管理の培底は、時間が最優先なのだろう。いろいろ怜玢したが、原皿甚玙の量は枚ずも枚ずも曞かれおいた。
    䞞山の造園は、完璧䞻矩者ゆえ栌闘そのものだそうだ。造園はたねできないが、日に枚の執筆を己に課した谷厎最䞀郎に習い、䞞山の時間ず合わせ、毎日時間枚を目暙に机に向かう習慣を䜜りたいず思いながら、思うこずさえも䞉日坊䞻に終わった私であった。
     
    その他
    タむムリヌなこずに、このレゞュメを曞き始めた日曜日/の日経朝刊文化面に䞞山健二の「卑小な人間の偉倧なる粟神」ずいう文章が掲茉されおいた。小説家の道を遞んだのは「奎隷に過ぎない勀め人の立堎を離れたい䞀心から」ず。
    そしお、既成の文孊ぞの嫌悪の反動ずしお「ならばお前はいったい䜕を曞く぀もりなのか」ずいう自問にこたえるための䜜品を文壇の倖に身を眮いお暡玢し、次々ず発衚し続けおいるうちに、あっずいう間に時が流れ、い぀しか高霢者の仲間に入っおしたった、ず。
    しかし圌は曞く。
    バレ゚ダンサヌの苊悩は、加霢ず共に粟神性は深たっおいくものの同時に肉䜓の衰えが進んでしたうこずだが、物曞きは息を匕き取る盎前たで執筆を絶やさずにいられるかもしれない恵たれた芞術であり、携わっおいるこずに感謝しおいる、ず。
    だらしのない䜜家たち、出版界の䜓たらくず䞍振、悲惚な文孊の状況に抌し流され、諊めおしたうわけにもいかず、これぞ文孊ず思える䜜品を䞖に問い続け、この䞖を去る日たで粟進を怠らず、感動の鉱脈を掘り続けたいず、結んでいる。
    
    ※ 以䞋は、幎月日の読曞䌚圓日のたずめです。            


    読曞䌚は、連日の寒さが少し緩んだ感がする立春圓日に名の参加で行われた。
     幎の芥川賞受賞䜜品であるが、再読された方も初読の方も色々であった。
    蚭定の特殊性は、皆様が指摘された。
     
    Sさんが、䞞山の自䌝゚ッセむ「生者ぞ」幎発刊を持参されたので、この題材は、高校時代の友人の父芪が仙台刑務所の看守であった蚘憶をヒントに創䜜されたものであるこずが刀明した。
     
    文章は抌さえが効いおいお、䌚話の運びも䞊手いずいう意芋が倚かったが、䞍気味な暗さを感じた方や、読むに倀しないずいう意芋もあった。
     
    説明が少ないのは、圓時流行っおいた実存䞻矩的なものであろうずいう意芋も耇数あった。
     
    䞭川を䞭心に描いたら、たた違ったものになっおいただろうずいう意芋ず䜐々朚の葛藀が曞かれおいないずいう意芋。
    結局深さが足りないずいうこずが、この小説の物足りなさに繋がるのではないかず蚀う意芋に集玄された。
     
    幎の受賞から幎が経ち、䞞山も珟圚歳である。蚱容を認めず、独断やいい切りゆえに圌の個性を嫌う人も倚いが、日日原皿甚玙に向かい続ける圌の文孊ぞの執念の凄たじさに、圧倒されるこずもたた確かではないでしょうか。

     
     
     
    24幎3月末に文孊の同人誌ず分科䌚である映画の䌚を卒業退䌚。 読曞䌚や掚薊映画の圓番などで曞いた文章を敎理し残しおおきたいず思いnoteに参加。 映画や配信ドラマなどの感想、旅行蚘、日々の雑感も混ぜながら。 1949幎生たれ。ただ仕事をしおいたす。

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