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掌編小説│ナンパ細胞に落とされた

    凪砂いる

    「あのさー、今度カラオケ行かない?」

    また、幼なじみの維弦いづるは他の子に声をかけている。
    ――小さい頃から一緒なのに、私の気持ちだけは知らないまま。
    維弦が他の女の子に声をかけるたびに私の心臓はギュッとなる。

    「――と、言うわけなんだけど。茉莉香まりか、一緒にカフェでも行かない?」
    「……また他の子に声掛けて振られたの?別にいいけど」
    満面の笑みで喜ぶ維弦。
    誘われて嬉しいはずなのに素直に喜べない私。
    あーあ、なんでこんな軽い男を好きなんだろう。

    カランとカフェの入口のドアが軽快な音を立てる。
    カフェで維弦はアイスコーヒーを、私はアイスカフェラテを注文する。
    ガムシロップを入れないそれは少しほろ苦い。
    まるで、私の心の中のようだ。

    カラカラとアイスカフェラテのグラスをかき混ぜていると、突然、維弦が口を開いた。
    「……あのさ、俺たち付き合わない?」
    「こういう時まで、軽いわけ?」
    ……また軽口かと思った。でも、目が笑ってなかった。
    「軽い気持ちで言ってない。茉莉香が好きだ」

    ――!

    胸がふわりと浮くような気持ちを抑えつつ、私は頷いていた。

    ――結局、私はナンパ細胞に落とされた。


    お題をいただきました!ありがとうございます🍀

     
     
     
    創作と日々のエッセイを書く、限界母系物書きクラゲ|著書『短い恋のはずだから』『書くと、たゆたう』|コーヒーは燃料。言葉は呼吸。 ☕️活動一覧☕️ https://lit.link/iru_nagisa Amazonアソシエイトプログラム参加中

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