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【連茉小説】「愛の歌を君に2」#2 くすぶる怒り

    前回のお話はこちら

    前回のお話

    原点である路䞊ラむブを成功させた䞉人だったが、その様子を撮圱した動画を芋た麗華れいかの所属事務所瀟長から「サザンクロスでメゞャヌデビュヌしないか」ず声がかかる。拓海たくみず智節ずもあ぀は端からメゞャヌで掻動する氣などなかったが、話を断れば音楜業界から締め出されるこずが分かっおいる麗華は悩んでいた。胞の内を話すず、二人は笑いながらメゞャヌず察立するず宣蚀。その堂々たる振る舞いに勇氣づけられた麗華は぀いに事務所を蟞める決意をする。

    麗華

    「どうなっおも知らないからね  」

     瀟長ず亀わした最埌の蚀葉が珟実のものになるたで䞀週間ずかからなかった。たず、定期的に通っおいたボむストレヌナヌから契玄を打ち切られた。理由を聞いおも「ごめんね」ず蚀うばかりで詳しいこずは䜕も教えおもらえない。それならばず別のコヌチを圓たっおみるも反応は同じ。ここでようやく蟞めた事務所があたしを排陀しようずしおいるのだず悟った。

     しかし仲間は「想定内」だず思っおいるのかあたり氣にしおいない様子だ。最初からむンディヌズでやっおきた圌らにずっおは自力が普通。組織に属し、埓っおきたあたしずはそもそも考え方が違う。頭では分かっおいる぀もり。だが、どうにも萜ち着かない。

     リビングで゜ファに凭もたれ倩井を仰いでいるず、拓海に顔を芗かれた。
     ――䜕考えおるか、圓おおやろうか

     拓海は手話でそう蚀い、あたしの隣に腰掛けた。

     ――自分は、思い通りに音楜掻動が出来なくなるこずを䞍安に思っおるのに、俺らがあっけらかんずしおるから困惑しおる。  違うか

    「  あたり」

     ――心配するな。生きおる限り、打開策は必ず芋぀かる。俺らを信じろ。

    「  だずしおも、あたしはあんたたちのように、でんず構えおいるこずが出来ないわ」

    「それは倚分、レむちゃんがメゞャヌの人間だからさ」
     そこぞ智くんも加わる。
    「拓海の埩掻からここぞの匕っ越し、そしお路䞊ラむブず忙しい日々を過ごしおきたせいでこの頃は亀流する時間がなかったけど、僕らにはむンディヌズ仲間がたくさんいるんだ。ラむブハりスのスタッフたちずも芪しい。僕ず拓海が堂々ずしおいるのはそのせいだよ」

     智くんの蚀葉を聞いた拓海は、「そういうこず」ず蚀わんばかりに笑みを浮かべお頷いた。

    「仲間  か」

     思い返しおみればあたしはずっず䞀人で闘っおきた。業界の人はみんなラむバル。ちょっず仲良くなった子がいおも、そういう子は優しいから業界の厳しさに耐えきれずに去り、氣付けば心蚱せる人間はいなくなっおいた。

     それでも頑匵っお来れたのは支えおくれたファンず、陰ながら芋守っおくれた「神様」がいたからだが、「シンガヌ゜ングラむタヌ・レむカ」を卒業した今はもう神様からの蚀葉や曲は降りおこない。慣れ芪しんだ声が聞こえないこずに寂しさを感じおいたずころぞメゞャヌ界のいじめが始たったのだから、䞍安になるなず蚀う方が無理である。

     う぀むくず智くんがしゃがみ蟌み、あたしの顔を正面から芋た。
    「レむちゃんは僕らが認めた歌姫だよ りむング時代から亀流のある人たちに受け容れられないわけがない。倧䞈倫。みんなホントに氣のいい奎らばかりだ。䜕も怖がる必芁はないよ」

     その目の茝きを芋れば圌が真実を語っおいるのは明癜だった。

    「  ホントに受け容れおもらえるのかな。元メゞャヌのあたしが」

     ――受け容れさせるさ。
     拓海も自信たっぷりの衚情で手を動かした。

    「  分かった。そこたで蚀うなら䌚わせお。ちゃんず挚拶がしたいわ」

    「もちろん。っお蚀うか、そう蚀っおくれる日を埅っおた。なぁ、拓海」
     拓海はうんうんず力匷く頷くず、あたしの腕を取っお立ち䞊がった。

     ――行こう、今から。

    「え、今から  」

     ――善は急げっお蚀うだろ

    「    」

    「悩んでる暇はないよ、レむちゃん。人生は有限なんだからね」

     智くんの蚀葉を聞いたあたしは拓海ず目を合わせた。䞍安げに芋぀めおいたからか、拓海は「そんな目で芋るな」ずでも蚀うかのようにかぶりを振っおあたしを抱いた。

     拓海の胞から心臓の錓動が聞こえる。ドク、ドク、ドク  。芏則正しく動いおるのを感じおいるず、智くんが蚀う。

    「  確かに䞀緒に過ごせる時間は延びた。だけどこの時間はい぀たでも続くもんじゃない。  拓海が声を出せるならきっずそう蚀うだろうし、僕もそう思う」

    「そうだね  。拓海の䜓枩を感じられるのっお、圓たり前じゃないんだよね」
     そうだよ、ず蚀うかのようにその腕があたしを匷く抱く。
    「ありがずう、拓海。智くん。むンディヌズ界のこず、いろいろ教えおちょうだい」

    「オヌケヌ」
     智くんは嬉しそうに答え、あたしず拓海のギタヌを枡しおくれた。

     ――さすがは智節。俺の心情を完璧に蚀語化しおくれたお前はもはや心の恋人だぜ。

    「ふん  。君の考えは単玔だからな。発蚀のパタヌンなど知れおる」
     拓海の手話を読み取った智くんはそう返しおそっぜを向いたが、嬉しい氣持ちを玠盎に蚀えないだけだず蚀うこずは、あたしも拓海も分かっおいる。

     呆れたようにため息を぀いた拓海だが、あたしのずきよりも嬉しそうに智くんの肩を抱き、玄関に向かったのだった。


    拓海

     倕方。ラむブハりスの開店準備䞭に俺たちは店を蚪れた。入るなり、「あ」ず声があがる。

    「拓海さん、智さん。お久しぶりっす 今日のラむブ、芋に来たんっすか」
     バむトでバンドマンのナヌゞンだった。五幎くらい前に知り合い、俺たちを兄のように慕っおくるかわいい男だ。

    「今日はメゞャヌ出身のレむちゃんに、むンディヌズ仲間やここのスタッフを玹介したくおね」
     智節が来店の理由を説明するず、ナヌゞンは子どもみたいにガッツポヌズをした。

    「じゃあ、オレのこずも玹介しおもらえたすよね 今日、バむトで良かったヌ い぀か麗華さんずしゃべりたいっお思っおたんですよヌ   オレ、ナヌゞンっお蚀いたす。ブラックボックスっお名前のバンドで゚レキ匟いおたす。䞃幎前にりむングのラむブ芋お䞀目惚れしお、絶察ここで䞀緒にやるんだっお仲間を説埗しお  。そのあずは色々ありたしたが、察バンの倢が叶っおからずいうもの、ずっず仲良くさせおもらっおるんですよ」

    「ナヌゞンくんっお蚀うのね。あたしはレむ  」

    「あヌっ 名乗らなくおも   麗華さんのこずはよヌく知っおたす。なにせおふたりがずっず  ラむバル芖しおた人ですから。たさかその麗華さんずか぀おのバンド名で䞀緒にやるなんおね  。幎末のラむブで集たったバンドグルヌプはみんなびっくりしおたしたよ。あの日はその話を聞きたかったんだけど、智さんが具合悪そうに店を出お行くのを芋た人がいお、みんなで心配しおたんです。それきり姿も芋なくなったし  」

    「ああ  。そい぀は悪かったな  。おかげさたでこの通り、若返っお戻っおきたぜ」
     智節はにやりず笑い、俺ず肩を組んだ。
    「拓海は声が出なくなっちゃったけど、それ以倖は超が぀くほど元氣だから」

    「ええっ 拓海さん声なくしちゃったんですか 病氣か䜕かですか かすれた声が奜きだったのに、残念だなぁ  。もしかしおしばらくここに顔を芋せなかったのっおそのせい」

    「たぁ、そういうこずになるかな  」

    「そっかぁ  」
     ナヌゞンは本圓の残念そうにため息を぀いた。期埅に応えられないのは俺も蟛いが、声を代償しになければ死んでいたし、そうなっおいた堎合、声はおろかこうしお䌚うこずも出来なかったのだから仕方がない。

     ――心配するな。俺が歌えなくおも智節が歌っおくれるし、俺はその分ギタヌ挔奏でみんなを楜したせるから。

     手話で話すず、智節が読み取っおナヌゞンに䌝えおくれた。圌は「ホントに声が出ないんだ  」ず぀ぶやいたが「じゃあ、ここぞ来た぀いでに次のラむブの予玄もしおいっお䞋さいよ。オヌナヌ呌んできたすから」ず蚀っお店の奥に向かいかけた。

    「その必芁はない」
     い぀からいたのか、呌びに行くたでもなくオヌナヌはすぐ近くに立っおいた。

    「あ、オヌナヌ。サザンクロスさんがきお  」

    「ナヌゞン。い぀たでしゃべっおいる 開店の準備を進めろ」

    「ひぃっ   分かりたしたぁ  」
     匷面ですごたれたナヌゞンは肩をすがたせるず、いそいそず仕事に戻っおいった。

    「さお  」
     オヌナヌは俺たちに向き盎るず、長い前髪を掻き䞊げた。その仕草は悪い話が始たる前兆。俺も智節も身構える。

    「単刀盎入に蚀おう。残念だが今埌、サザンクロスには出入りを遠慮しおもらう。理由は分かるな 正盎、心苊しいよ。だけど、私はここのオヌナヌだからね。他のバンドを守るためにもそうするより仕方がないんだ。分かっおくれ」

    「    」

     俺たちは顔を芋合わせた。たさかオヌナヌから「出犁」を告げられるずは  。なぜこんなこずになったのか想像するのは容易だったが、正盎な話「嘘だろ」っお感じだ。俺の思っおいるこずを代匁するかのように智節が息巻く。

    「はぁっ なんでだよ。最初期からここで歌っおきた僕たちを排陀しようっおのか ずっず味方だず思っおたのに  」

    「だから、心苊しいず蚀ったじゃないか。もちろん、個人的には味方でいる぀もりだし、これからも応揎しおいきたい氣持ちはある。ただ、ここでは歌わせられないっお話だ」

    「それは  あたしが所属しおいた音楜事務所の指瀺ですか」
     麗華の問いにオヌナヌは「想像に任せる」ずひず蚀だけ呟いた。

    「  がっかりだよ。オヌナヌだけはどんな事があっおもメゞャヌず闘っおくれるず信じおいたのに」

    「それは若い頃の話だ。これだけ倚くのバンドマンが出入りする店になった今ずなっおは、䞀いちバンドの野望より店の方が䜕倍も倧事なんだ」

     ラむブハりスの創蚭ず時を同じくしお結成した俺らずオヌナヌずは同幎代。付き合いが長いこずもあり、最も心蚱せる人物のひずりだった。そのオヌナヌから蚀い枡された、ラむブハりス出入り犁止什  。この胞の痛みず怒り、憎しみにも䌌た感情は、麗華に裏切られたずきに感じたものず同じだった。

     智節はなおも睚み付けながら蚀う。
    「  僕らを芋捚おるっおのか」

    「生き残れるよう手は尜くす。その代わり、ここぞは足を螏み入れるな。  ほずがりが冷めるたでは」

    「くっ  。おい、拓海も䜕か蚀ったらどうなんだ  」

     ――蚀いたいこずはお前が党郚蚀っおくれた  。それず  手話じゃ俺の怒りは十分の䞀も䌝わらねえから  。
     
     俺だっお出来るものなら反論したい。だけどこの感情をうたく手話で衚せそうになかった。

     そう、俺たちは激怒しおいる。が、麗華の方はどうだろう。おそらくこんなこずになっおしたった責任を感じおいるはず。その蚌拠に麗華はさっきからう぀むきっぱなしだ。

     ――お前のせいじゃねえよ。倧䞈倫。若い頃、こういうこずは日垞茶飯事だった。でも、なんだかんだ蚀っおなんずかしおきた。だから今床もきっずなんずかなる。

    「  ごめん」
     俺たちが頌りないからだろうか、麗華はぜ぀りず謝った。

    「最埌の挚拶だけは蚱そう。だが、開店前には出お行っおくれよ」
     オヌナヌはそう蚀い眮くず、近くにいた䞀人の男に䜕やら耳打ちをしおから去っおいった。


    智節

     ずおも最埌の挚拶などする氣分じゃなかった僕らはすぐに店を出た。

    「ごめん、レむちゃん  」
     僕は本来の目的が果たせなかったこずを詫びた。もちろんレむちゃんがそんなこずを氣にするはずもないが、圌女に責任を感じお欲しくなかったから先手を打った。
    「なんかモダモダするから、この足で歌っおいきたいな  」

    「そうね  。あたしも歌いたい」

     ――じゃあ、地元に垰ったら匟くか。本音を蚀えばすぐに匟きたいずころけど、郜内は取り締たりのお巡り、、、が倚いからな  。

    「たったく、面倒な䞖の䞭になったものだ  」

     僕らが孊生の時分には路䞊で自由に匟き語りが出来たのに、最近は䜿甚蚱可を取らないずおおっぎらに掻動出来なくなった。地方はそこたで厳しくないが、郜内では倜ごず譊察官がうろうろし、たむろする若者に声をかけたくっおいる。それが犯眪防止に圹立っおいるならいいが、ミュヌゞシャンの偎にしおみれば幎を远うごずに「衚珟の自由」が奪われ、生きづらさも増しおいるず感じる。

     そうやっお湧き䞊がる想いや感情に蓋をするから䜙蚈に䞍満が溜たるのに、それが分からない連䞭がいる。僕を含め、今やこの囜の倧倚数が噎火寞前だ。もし僕らの䞍満が䞀斉に噎出したらおそらく誰も止めるこずはできないだろう。

     僕らの䜿呜はこの、䞍満を抱く人たちをこちら偎に匕き蟌み、䞀緒になっお自由を奪う奎らに「」を突き぀けるこず。そのためには埓順な家畜でいるこずをやめ、どうすれば生きやすい囜になるか自分たちの頭で考え、行動しおいかなければならない。

     蚀われたずおりに動くだけ、ずいうのは確かに楜ちんだ。しかしその代償ずしお自由な発蚀を奪われ、競争心をあおられ、時間に远われるよう仕向けられ、心身共に病氣にさせられる。そこに幞せはあるのか 僕の答えは「」だ。

    こちずらぁ、歌で死にかけの男を救ったんだ。僕らに出来ないこずなどないっおこずを蚌明しおやる  

     駅前でしゃがみ蟌んでダベる若者に声をかける譊察官を暪目で芋る。
    「  ちっ。倖で自由にしゃべるこずすら蚱されねえのかよ。腐っおんな、この䞖の䞭は」

     ――おいおい、ちょっず前たでのお前が顔を出しかけおるぜ 氣持ちは分からんでもないが、間違っおもツバなんか吐き捚おるなよ

     憎々しげに蚀ったからか、拓海は身䜓を匵っお僕の行く手を阻んだ。
    「たさか。僕の歊噚は歌ずギタヌだぜ ♪぀たんねえ人生いたにツバを吐けヌ、぀たんねえ䞖界いたを終わらせろヌ  」

     本圓にツバを吐く代わりに、僕は譊察官に聞こえる声量で「オヌルドニュヌワヌルド」のサビを歌った。


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