-Hold You-20話
『未来へ』
「ふぅ…」
ずっと抜けない癖。
なにかをやる前に息を吐き出す事。
洗いざらい吐き出してそれから次のモーションに移る。
"癖"
知らずにやって来た。
気付いても変わらない。
都会にやって来て1週間。
事務所内での下働きが始まった。
設営。他のバンドさん、ライブハウスの人達とのコミュニケーション。
大切な関わり。
必死な音。
こんなに輝いてる音。
諦めない。
認めてもらう。
メジャーデビューを果たす。
大きくなっていきたい。
その中には壊音人も居る。
近くにいると頭が割れそうになる。
―今日も音が溢れる
自分のやるべきことは、
相手に伝え続けること。
壊れそうな音を支える。
それ以外は考えていない。
辛い事は山程ある。
覚えることが多いこと。
5年間の社会生活が無駄に思える、冷たい言葉。
でもそこには期待が見える。
俺は頑張っていいんだなと思えた。
好き勝手歌うわけじゃない。
思いを乗せるのに武器も必要。
痛切に思う。
「まだまだ…ガキだな…俺」
『Don't stop the sound. Keep singing. Put your heart into it. Send it to you. My soul.
(音を止めるな。歌い続けろ。思いを込めて。あなたに届けて。俺の魂。)
俺があなたの変わりに歌うから。変わらないなんて、1人だなんて、壊れてしまう、気持ちを吐き出させるから。
だから俺の歌を聞いてくれ。
Don't give up on living. You're always trying your best. I'll find that version of you.
(生きるのを辞めるな。お前はいつも頑張ってる。そんなあなたを見つけるから。)
いつまでも
いつまでも
俺の心は変わらない。
前だけを見つめて共に歩こう』
今日も誰かの歌を歌えた。
都会に来ると、誰の歌だか分からない歌が流れる。
それを屋上に登り。
遠くへ響かせる。
それが日課になりつつあった。
支えてくれたのは相棒だった。
色んな事を積み重ねてきたが
俺の人生これから。
絶対に諦めねぇ。
たとえ届かない相手がいたとしても俺は歌を届けていく。
涙してくれた人達がいた。
1人でも届く人がいるなら。
届ける。
たとえ1人だとしても。
"心が動く"
その瞬間を夢見て
【終】
作成(彩笑和)