
#001 静か、と書いてしずか、
静か、とかいて しずか、
らあ…らら
らららら ♪ (かすれる声で)
歌うだけ嘘だもん
水温計が26度
つま先からゆるりと体を寄せる
静か、はバスタブに体をしずめた
魚を飼うのに最適な水温
どこかでそう聞きかじる
静か、と書いて、しずか、
静か、の日常は
ほぼほぼこの水のなかだ
目覚めてすぐ
ちょうど沸いたポットのお湯と
ダージリンの紅茶の茶葉と
角砂糖8個ほど
そして
古本屋で見つけた
ポルトガルの絵本
脱衣所から
キッチンの冷蔵庫あたりまで
タオルを引き詰め
日にち別
12時間ほどラインナップした
気分のアルバムセレクト
地震や爆弾が来た時には
バスルームがよいよ
なんてことを
小耳にはさんだのが
事の始まり
もともと静か、には
寝静まった夜の街
まだ誰も目覚めていない朝の色
そんなものにしか興味がなくて
聞きかじった戯言で
世の中と付き合っている
