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分析が「数秒」になった先で、何が問われるのか ──メルカリ・Socratesが示す、AI時代のPdMの本質

    こんにちは、株式会社ラクスでプロダクト部 部長をしている稲垣です。

    この記事は、pmconfの動画や資料をもとに、学びのポイント・自分の環境との共通点や違い・どう活かせるかを自分なりに整理するシリーズの第二弾です。


    はじめに

    第二弾は、
     「データ分析AIが拓く、プロダクトマネジメントの未来像」
    登壇者:
    ・小林 健太郎さん (メルカリ プロダクトマネジメント マネージャー)
    ・石本 翔真 さん(メルカリ プロダクトマネージャー)
    ・山田 直史 さん(メルカリ アナリティクスエンジニア)

    テーマの中心にあるのは、AIによって「SQLを書く、集計を依頼する、結果を待つ」という分析のボトルネックが小さくなることで、PdMが本来向き合うべき「課題の質の向上」や「意思決定」に、より多くの時間を振り向けられるようになる、という変化です。


    「分析待ち」という制約が、何を隠していたか

    Socratesが何を変えたかを一言で言えば、「データへのアクセスコストを大きく下げた」ことだと私は受け取りました。

    これまでPdMがデータ分析を行おうとすると、自分でSQLを書くか、アナリストに依頼して数日待つか、どちらかになりがちでした。このリードタイムは、一見すると単なる不便さにも見えますが、実は別の側面もあると思います。それは、制約がPdMの問いの粗さを見えにくくしていた、という側面です。

    SQLが書けない、分析依頼に時間がかかる、データが出るまで待つ──。こうした制約がある間は、「分析できなかったから仮説が浅くても仕方がない」と考えやすい余地がありました。

    一方で、自然言語で問いかければ数秒でグラフが返ってくる世界では、その余地は小さくなります。良い問いを持つPdMは速く深く前進できる一方で、問いの解像度が低いと、AIを使っても得られる示唆は限定的になりやすい。
    AIは便利なツールであると同時に、PdMの問いの質をより明確に映し出す存在でもある。これが、このセッションで最初に感じた核心でした。


    特に印象に残ったのは、SocratesをN1分析のパートナーとして使う視点

    このセッションで特に印象に残ったのは、Socratesを単なる集計ツールとしてではなく、ユーザー行動のログを掘り下げるN1分析のパートナーとして活用している、という話でした。

    AI活用と聞くと、どうしても大量データを集計してダッシュボードを作るイメージを持ちがちです。もちろんそれも重要ですが、実際に価値が立ち上がるのは、数字の先にいるユーザーの行動や文脈に触れたときだと感じます。
    特定の行動をとったユーザーを抽出し、その背後にある仮説を掘り下げる。ここで初めて、データは「報告のための数値」から「意思決定の材料」に変わっていきます。

    Socratesは、この接続を滑らかにしているように見えました。「あの施策を使ったユーザーに絞ると、リテンションはどう変わるか」といった問いを自然言語で投げ、返ってきた結果を見ながら次の問いを立てる。この往復を高速に回せるようになることが、PdMの思考プロセスそのものを変えていくのだと思います。

    重要なのは、数字を出す速さそのものよりも、問いと答えを往復する速さなのだと感じました。そこに、このアプローチの本質があるように思います。


    このアプローチの強さと、正直な限界

    Socratesのアプローチの強さは、分析の民主化にあると感じました。これまで分析スキルのある一部の人だけが深くデータにアクセスできていた構造が、自然言語UIによって変わり始めている。PdMが「欲しいデータを待つ人」から、「問いを立てて、すぐに確かめる人」へ近づいていける環境が整いつつあります。一方で、正直に言うと限界もあります。

    このアプローチ自体が、問いの質を担保してくれるわけではありません。自然言語で分析できても、そもそも何を問うべきかが整理できていなければ、得られるのは表層的な答えにとどまる可能性があります。分析の民主化は、同時に「問いの質が組織の課題として浮かび上がる」変化でもあるのだと思います。

    また、Socratesのような取り組みは、質の高いデータ基盤やガバナンスがあってこそ成立しやすい面もあるはずです。データ品質や定義、利用ルールが整っていない状態でAIエージェントを活用すると、誤った意思決定を速めてしまうリスクもあります。

    セッションで「まずは現場の特定課題を解く小さなユースケースから始められる」というメッセージがあったのは、とても重要だと感じました。ただし、その前提として「信頼できるデータがあること」は忘れずにいたいポイントです。


    私が持ち帰った問いと、ラクスへの示唆

    このセッションから私が持ち帰った問いは、次のものです。

    「私たちは今、誰が・どのように・どの問いを立てているのか。その問いは、どれだけ顧客課題に接続されているのか。」

    ラクスのプロダクト部でも、メンバーから「一次情報にもっと直接触れたい」「リリース後の効果検証をしたい」といった声が上がることがあります。これは単に「分析を速くしたい」という要望ではなく、「分析が意思決定に十分つながっていないことへのもどかしさ」でもあるのではないかと感じています。

    ラクスでは現在、AI活用を通じてお客様への提供価値を広げていくことを重視しています。ですが、ここで問い直すべきなのは、AI機能の数そのものではなく、その機能が本当に解くべき課題に向かっているかを、素早く確かめられる仕組みがあるかどうかなのだと思います。

    分析AIを導入すること自体が目的ではありません。お客様の業務課題をより早く、より確かに捉え、価値ある機能提供につなげるための手段として、どう位置づけるかが重要です。

    メルカリのSocratesが示していたのは、ツール導入の話だけではなかったように思います。AIが得た材料を、判断の仕組みにきちんと接続するという設計思想の話でもありました。データを「見える」ようにする前に、そのデータで「何を決めるのか」を明確にする。誰が問いを立てて、誰が判断し、決めた理由をどこに残すのか。ここが設計されて初めて、分析AIは「速さ」以上の価値を生み出せるのではないでしょうか。

    ラクスで分析AI活用を考えるときも、ツールそのものより先に、この接続設計から考えていくことが大切だと改めて感じました。もちろん、他社事例をそのまま適用できるとは限りませんが、だからこそ自社の顧客や業務文脈に照らしながら、丁寧に取り入れていく姿勢が必要だと思っています。


    まとめ

    AI時代に求められるPdMのスキルは、分析スキルが不要になることではないと思います。むしろ、問いを立てる力、顧客課題に接続する力、定量と定性を往復する力が、以前にも増して問われるようになるのではないでしょうか。

    AIが強くなるほど、人間のPdMには「Whyを深く持つこと」が求められる。今回のセッションが描いていたのは、「AIがPdMを代替する未来」ではなく、「AIによってPdMがよりPdMらしくなる未来」だったのだと感じています。

    以上、シリーズ2本目でした。今後もこのような形で、不定期に学びを共有していければと思います。

    記事を読んでラクスに興味を持ってくださった方は、以下もぜひご覧ください。

     
     
    株式会社ラクス 開発本部 第一開発統括部 プロダクト部 部長 エンジニアバックボーンで幅広く「マネジメント」が付く役割を経験 今はPM・デザイン両組織のマネージャー 詳細はこちら https://youtrust.jp/users/ingktks

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