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ぬいぐるみ達には地下鉄がある

     とある冬の日、母・姉・私のグループLINEにて――

    母:今日は大寒
    私:(ちいかわのシーサーの絵文字)沖縄の海が恋しいでーす
    私:↑お母さんと二人のLINEのテンションで返してしまった。なんかはずい。
    姉:そうなの?笑

     特に意外性はなかったらしい。

     と言うのも私は昔から、こういうことを普通にしてきたから。

     実家には、主ぬしみたいなぬいぐるみがいる。子供の頃から一緒だ。

     ハムスターの「はむ」
     らっこの「ふぃーふぃー」
     くまの「くまた」
     くまたのお嫁さんの「くまよちゃん」等。

     はむは、くまたに頼んで、ぬいぐるみたちの部屋を用意してもらった。人間がいない間は、そこで自由時間を過ごしている。
     はむは主なので一人部屋。
     ふぃーふぃーは憩いの場「ふぃーカフェ」を営んでいる。
     くまよちゃんや、ムーミンママが、率先して家事を担当している。週末には息抜きにおでんの屋台を引いている。実は夏だけ浴衣を着ている。

     はむは無断で、母の車も改造させている。だから、姿は見えないけれど、ドライブ中に話ができる。

     ぬいぐるみ達は地下鉄で好きに移動できる。
     あらゆる場所に専用通路がある。

     だから子供の頃、おでかけすると「絶対、はむ達もどこかにいるね」と家族でくすっとしていた。「絶対、あの辺にいるよね」とか。

     人間の前で動いたり、ご飯を食べたりは禁止。扉の向こう側にある、ぬいぐるみ世界では可能。特殊な力で監視されているため、ズルは出来ない。人間からも強要してはいけない。

     ぬいぐるみの世界でついた汚れは、ぬいぐるみの世界で絶対きれいになる。
     人間界でついた汚れは、人間界でしか落とせないため、注意が必要。

     これ全部私が一人で考えた設定。妙に細かい。
     小さい頃から創作をしていた。なりきって動かしたり、お話させたりもしていた。
     だから、いきなり可愛いキャラクターになりきって返信しても、姉は「いつもの未々さんだなー」としか思わない。笑

     ぬいぐるみが大大大好きすぎて、幼い頃からおでかけに連れて行き、失敗した過去もある。こういう設定で「別々に出かけているだけで、実は一緒なんだ」と思うに留めてきた。

     今も凹んだ時に「はむ、私を元気づけて!」とLINEでお願いしたりする。それぞれの絵文字も決まっている。

    ↓ これはほんの一例だ。
    はむ:🐹
    ふぃーふぃー:🦦
    くまた:🔧
    くまよ:🍁

     家族が外出先ではむを思い出すこともあった。怖かったけど、心の中で、ふっと、はむが話しかけてきて、笑けたことがあったとか。

     はむを中心に生まれた物語は、まだ続いている。

     実家に帰ると、だいたい「どうしよう、喉が痛い。風邪もらったかな?」と焦る。
     勘違いだ。ぬいぐるみ達が私に憑依するので、慣れない声を出して、喉が疲れただけ。
     このモードに切り替わるのは実家限定。

     言いにくいことも、はむが仲介してくれていると言えたりした。

     家族も「ねぇ、はむ? 未々は明日何時に出かけるか知ってる?」と聞いたりする。

     昔から母は、ぬいぐるみたちを動かすのが、めちゃくちゃうまい。才能giftedだと思う。

     はむは、だいぶ、くたびれている。ゆえに、側近・後継者として、新しめのパンダの「ぱん」を置いている。
     やむなくヒゲを切ったり、
     手が揃えられるボタンを外したり、
     何度か洗ったりした。

     だけど、まだ現役。ぬいぐるみってすごいなあ。

     3歳の姪も「はむ」が一番のお気に入りだ。そうやって可愛がって来たことを、感じ取っているのだろうか。

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