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その男、凶暎に぀き埌線


    ​小䞀時間するず、たささんは垰っおきた。

    顔䞭に「倧満足」ず曞いおあるような、ものすごく幞せそうな顔。

    ヒマラダの山奥の囜境の町で、本圓にピンクのネオンを制芇しおきたのだ。

    我々モブの民もやはり奜奇心には勝おず、その歊勇䌝にひずしきり盛り䞊がり、「さあいいかげん明日に備えお寝たしょうか」ず各自ベッドに入った。


    ​それが、嵐の前の静けさだずも知らずに。


    ​――ドンッ


    ​盛倧な音を立おお、郚屋のドアが乱暎に開き、同時に、容赊のない癜い蛍光灯の光がパチパチず音を立おお点けられる。


    ​「」


    ​眩しさに寝がけたなこを無理やりこじ開けられた。

    芖界が焊点を結ぶに぀れ、䞀気に党身の血の気が匕いおいくのが分かった。


    ​郚屋の入り口に立っおいたのは、嚁圧的な緑の制服を身にたずった䞭囜の公安譊察が3人。


    冷培な芖線が、ベッドに暪たわる我々を鋭く射すくめおいる。

    ​䜕事なのか、党く想像が぀かない。


    蚀葉が通じない恐怖ず、もしかしたらこのたたどこかぞ連行されるんじゃないかずいう最悪の想像が頭をよぎる。

    ​重苊しい沈黙の䞭、公安の男が冷たい声で、しかし拒絶を蚱さないトヌンで短く蚀い攟った。


    ​「パスポヌト」


    ​我々は誰もが完党に困惑し、震える手で荷物からパスポヌトを探し出すしかなかった。郚屋の䞭には重苊しい空気が支配しおいる。

    ​たさか、あの男が数時間前にやらかした「ピンクの床屋」の件が、囜家暩力の逆鱗に觊れたのか  

    ​

    しかし圌らの話す英語の単語を拟い聞いおみるず、我々は枉倖の宿に泊たったようなのだ。


    枉倖ずは倖囜人が宿泊できないホテルで、基本的にはガむドブックなどには曞かれないので我々もそういうずころに泊たろうず最初から遞択しない。

    もし知らずに入ったずしおも普通はフロントで断られるはず。


    普通は。

    しかし亀枉したのはたささんだ。普通ではない。


    きっず宿の人も困惑しながらたささんの勢いに呑たれお郚屋に案内せざるを埗なかったのではないだろうか?

    さらにはこんな小さな村のような町だ。そもそも最初の宿以倖倖囜人が泊たれるずころなどなかったのではないだろうか


    その3人は荷物をたずめおここから出ろ。ずいうようなこずを居䞈高に蚀っおくる。

    䞭囜の公安は日本の譊察ずは違い、垂民の安党や暩利の保護よりも、共産党の䞀党支配ず䜓制維持を最優先にする組織であり、小さなルヌルに逞脱した者にも非垞に匷暩的で嚁匵りくさる錻持ちならない連䞭だ。


    しかし目を぀けられるのは困る。明日はもうこの囜を出おネパヌルに入囜するのだ。このたたパスポヌトを取り䞊げられでもしたらず考えた我々はそそくさず荷物をたずめ始めたその時、


    「トゥヌレむトあずオンリヌフュヌアワヌズ」


    咆哮である。

    さすがにたささんも公安には䞋手に出るかず思いきや


    「ノヌ・ムヌビング りィヌ・アヌ・スリヌピング ナり ナむト ツヌ・オクロック

    トゥモロヌ・モヌニング・ゎヌ・トゥ・ネパヌル フィニッシュオヌケヌ」


    ドン匕きである。どうなる我々の運呜は


    ​しかし芋るず、さっきたで傲慢に胞を匵っおいた公安の3人が、オドオドず互いの顔を芋合わせおいる。たさか、䞀介のパッカヌに逆襲されるずは思わなかったのだろう。鬌神のごずく目を剥き、しかも空気が震えるような倧声だ。
    や぀らの顔には、明らかな『匕き』の色が浮かんでいた。

    負けじず口を開こうずするが怒涛のごずくたくしたおる名叀屋匁ゞャパングリッシュで圌らの蚀葉はかき消される。

    そしおたささんの怒号を手で制し、パスポヌトを突き぀けお圌らは出おいった。


    捻じ䌏せたのだ。それも䞭囜の公安を。あの気迫で


    「  フン、人隒がせな奎らだお。おい、寝るぞ」

    そう蚀っお、たささんは䜕事もなかったかのようにベッドに入り、すぐにむビキをかき始めた。

    我々モブの民人はもう寝るどころではなかった。暗闇の䞭でただ倩井を芋぀め、「あの人、マゞで䜕者なんだ  」ず、畏怖の念ずずもに朝を埅぀しかなかった。


    ​翌朝、私たちはネパヌルずの囜境である友奜橋ぞず向かう。

    昚倜の公安の件があるため、パスポヌトを出しお出囜審査を通る瞬間たで生きた心地がしなかったが、手続きは䜕のトラブルもなくスムヌズに進んだ。

    ​橋を枡れば、そこはもうネパヌル。囜境の町のコダリだ。

    ゲヌトをくぐり、぀いにネパヌル入囜を果たした瞬間、私たちは䞀斉に倧きく息を吐き出した。

    ​

    ​旅の途䞭で偶然䞀緒になっただけの、匷烈すぎる名叀屋の倧男。

    西掋人パッカヌをねじ䌏せ、ヒマラダの山奥のピンクの床屋ぞ消え、深倜には囜家暩力すら远い返した。文字通りの怪物。


    ​だが、カトマンズでハシシを手にした圌が、怪物から怪獣ぞずさらなる進化を遂げるなど、この時の私は知る由もなかった。

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    旅ずか本ずか映画ずか音楜ずか。

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