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Photo byamefuri_yuichan

友達を振る

    友達を振った。

    大学生になりたての時に出会った人で、それなりに長い付き合いのある関係だった。

    道端で紫陽花が咲いているのを見たとき。
    あからさまに犬を怖がる大人を見かけたとき。

    そういう時に、ちょっとだけ思い出す。

    そして、そのたびに、その人が私にとって特別な存在だったことを知る。

    友達という関係性はむずかしい。

    会いたい時に会って、会いたくない時には会わなければいい。

    恋人のように会う頻度が多くても少なくても、なんら問題はない。

    それなのに、わたしはその人にとっての、なんらかの特別な存在になりたかった。

    ただの友達、ではない、なにか。

    あなたは親友だよ、と言われたいわけではない。

    毎日電話をしたいとか、そういうわけでもない。一緒に住まない?とか言われたら、たしかにちょっと嬉しいかもしれない。

    いや、どうだろう。同じアパートの別室くらいがいいかもしれない。一緒にご飯を食べたり、お酒を飲んだり、一緒に映画を見たり。「今日そっち行っていいー?」って聞いて、お互いの部屋を行き来したりする。そんなこと、してみたかった。

    会えなくて寂しい?なんて聞けば、耳の後ろあたりを触りながらだるそうな顔をするその人が目に浮かぶので、前言撤回。

    わたしは多分、どうにか、わかりあいたかった。

    でも、それは不可能だった。

    恋人であれば、そういうことをすり合わせることは必要になるのだろうけど、友人関係であればそれは問題にはならない。

    いつも出かけにいこうと誘ってくれるのは、連絡をくれるのは、その人のほうだった。月に一度は一緒に出かけたり、食事をしたりした。

    旅行に行くたびに、なんらかのお土産をくれた。なんの理由もなく、ただ行ってきたから、と渡されるそれを、わたしは大切に受け取った。いくつか買ううちのひとつ、なのだとしてもやっぱり嬉しかった。

    ただの友達。でも、それはほかの友人に対して思うものとは何かが違う気がした。

    これが恋だったら、終わりがあるからいいのにと何度も思った。今まで友人に抱いたことのない感情でありながら、それをどう表現したらいいものなのか、わからなかった。彼女と会うことは喜びでありながら、わたしを少しだけ苦しめもした。

    それで、とうとう彼女からの誘いを断ることにした。

    わたしには、わたしの、欲しいものがあったのだと思う。

    そして、あなたの表現するそれと、わたしが欲しいと思う「なにか」が交差していないことは明らかだった。

    それを受け入れるには、少しの時間と、物理的な距離が必要なのかもしれないと、思った。

    だから、そうなの。当分、会わないことにする。
    こっちが心配することもないんだろうけど。

    別れを告げるのもなんだか妙で、そのまま時間が経っていった。

    こんなふうに大切に思える人がいたこと、その事実だけは変わらずにずっとある。

    名前のないその存在を、こうやって時々思い出して、そして少しだけ悔やむのだろう。

     
     
    文筆家。とてつもなく個人的な話。

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