
花火の効能
大きな花火大会は、残念ながらほぼ行ったことがない。
みんなが浴衣を着て出かけていく...あの夏の風物詩に、どうにも縁がないまま生きてきた。
そんな私にも、とある花火の記憶がある。
大学3年生の夏である。
心理学系の学部だったので、ゼミのテーマごとに分科会があった。どのチームも、なんとも小難しいことばかりディスカッションしていたものだ。
そして「ぜひ夏合宿も企画するように」と教授からお達しがあり、6人くらいだったか、近隣のセミナーハウスみたいなところに泊まりに行った。
ところが。
ゼミ以外ではほとんど交流がなく、よく知らない人たちばかり。
おまけに議論白熱で、お互いに結構反論しあったりで、全然前に進まない。
1日やってたら、スッカリ雰囲気も気まずくなってきた。
夕食後のことである。
誰からともなく「花火をやろう」という話になった。セミナーハウスに"ご自由にどうぞ"と置いてあったらしい。
庭に出て、みんなで線香花火に火をつける。
すると。
あんなに難しい顔をしていた人たちが一斉に笑顔になっていく。
玉がぽとりと落ちる瞬間には、もう大ハシャギである。
気がつくとといつの間にか、あの"ピリピリ"が"ホッコリ"に変わっているじゃないか。
翌日の議論は、かなり和やかに前向きに進んだのである。
きっと花火の効能にちがいない。
大きかろうが小さかろうが、花火というのは私たちの心にスッと入り込んできて、思い出を作ってくれるものらしい。