
「この本で救われたよ」ママ友がすすめてくれた一冊
何度も読み返した本、と言われて思い浮かぶのは『親業』である。
トマス・ゴードンというアメリカの心理学者が書いた、子育ての本だ。
手に取ったのは、息子が大学生の頃だった。
体調を崩してしまい、半年間の休学をすることになった時期である。
何に悩んでいるのか。
思春期がまだ続いているかのごとく、とにかく何も話してくれない。
私も、悩んでいた。
そんなとき、中学高校が一緒だったママ友と話す機会があった。
彼女の息子さん——息子の友達ではなくお兄ちゃんのほうも、同じような経験があったのだという。
「この本で救われたよ」
そう言って、すすめてくれたのが『親業』だった。
そこに書かれていたのは、親としての考え方。子どもを一人の人として尊重すること、認めること。
たとえば
「受容のメッセージは干渉しないことによって示せる」
「親子の対立は、親自身が態度を変えることでも防げる」
「親も全能ではない。自分の素直な感情に嘘をつくな。」
今こうして書いてみると、どこか、アドラー心理学でいう「課題の分離」にも通じるようにも思える。
けれど当時の私は、そんなことをまったく知らなかったから、ある意味衝撃だった。
そして、書かれていたことを実際にやってみた。
口を出したくなる。何があったのか聞きたくなる。どうにかしてやりたくなる。
でも、そのたびに、本に書かれていたことを思い出した。
何度も読み返したのは、そういうわけである。一度読んだくらいでは、親というのはすぐに元の自分に戻ってしまうのだ。
そうしているうちに、私自身のなかにも変化があって「とにかく見守ること」に徹した。
その後だんだんと回復していった息子。
あの本が全部を解決してくれたわけではない。時間が助けてくれた部分も、あるかもしれない。
それでもこの一冊のおかげで救われたのだ。
そして、すすめてくれたママ友にも、心から感謝している。