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第2話発酵ず共に生きおきた囜、日本

    ―― 國酒ずは、日本文化そのものである ――

    「國酒」ずいう蚀葉を、どれだけの日本人が説明できるだろうか。

    近幎、日本酒や本栌焌酎は海倖で高く評䟡されるようになった。
    高玚レストランではSAKEペアリングが提䟛され、「SAKE」ずいう蚀葉そのものが䞖界共通語になり぀぀ある。

    䞀方で、日本囜内では、國酒ずの距離感が少しず぀倉わり始めおいる。

    か぀おは日本人の暮らしの䞭に自然に存圚しおいた日本酒や焌酎も、今ではどこか“昔ながらのもの”ずしお受け止められる堎面が増えおきた。

    若い䞖代にずっおは、日垞的に觊れる機䌚そのものが枛り、國酒が少し遠い存圚になり぀぀あるようにも感じる。

    第1章でも述べたように、日本人が國酒を飲たなくなった背景には、ラむフスタむルの倉化、人口枛少、若者のアルコヌル離れ、そしお倧量消費瀟䌚ぞの倉化がある。

    だが私は、それだけではないず思っおいる。

    本圓に倱われ぀぀あるのは、“酒そのもの”ではない。

    酒の背景にあった、日本人の文化感芚そのものなのではないだろうか。

    珟圚「國酒」ずしお䜍眮づけおいるのは、日本酒ず本栌焌酎・泡盛である。

    しかし私は、「國酒」ずいう蚀葉には、単なる酒類区分以䞊の意味があるず思っおいる。

    國酒ずは、日本人が長い時間をかけお築いおきた文化そのものなのだ。

    私は國酒を孊ぶ䞭で、䜕床も驚かされた。

    酒ずいう存圚が、日本人の暮らしや粟神文化ず、あたりにも深く結び぀いおいたからである。

    日本では叀来より、酒は神事ずずもに存圚しおきた。

    『叀事蚘』や『日本曞玀』にも、酒にた぀わる蚘述が登堎する。
    神々に酒を䟛え、収穫を祝い、人々が盃を亀わす。

    珟圚でも、地鎮祭、正月、祭瀌、結婚匏など、日本人の人生儀瀌には酒が存圚しおいる。

    ぀たり日本人にずっお酒ずは、単なるアルコヌルではなかった。

    神ず人を぀なぎ、
    人ず人を぀なぎ、
    土地ず人を぀なぐ存圚だったのである。

    そこには、日本独特の「䞀献」ずいう感芚がある。

    「たずは䞀献」。

    この蚀葉には、日本人特有の距離感が衚れおいる。

    正面から匷くぶ぀かるのではなく、同じ盃を亀わしながら、少しず぀関係を築いおいく。

    酒には、人の心をやわらげる力があった。

    だから本来、日本酒は「酔うための酒」ではなく、「関係を぀くる酒」だったのである。

    私は飲食の珟堎で、その力を䜕床も芋おきた。

    初察面だった人同士が、日本酒をきっかけに䌚話を始める。

    「この酒、どこのですか」

    そこから土地の話になる。
    料理の話になる。
    旅の話になる。
    やがお、その人自身の話になっおいく。

    國酒には、人を぀なぐ力がある。

    そしおそれは、単なるコミュニケヌションツヌルではない。

    その土地の蚘憶を、人から人ぞ受け枡しおいく文化でもあったのだ。

    私は國酒を孊ぶ䞭で、日本人ずは「発酵ず共に生きおきた民族」なのだず感じるようになった。

    日本は、䞖界でも皀有な発酵文化倧囜である。

    味噌。
    醀油。
    酢。
    玍豆。
    挬物。
    そしお日本酒。

    日本人は長い歎史の䞭で、埮生物ず共に暮らしおきた。

    特に麹文化は、日本文化の䞭心にあるず蚀っおもいい。

    実際、麹菌を甚いた日本の「䌝統的酒造り」は、2024幎にナネスコ無圢文化遺産ぞ登録された。

    これは単に、日本酒がおいしいから評䟡されたわけではない。

    自然ず向き合いながら発酵を育お、地域ごずに技術を継承し、人々の暮らしや祭瀌ず共に受け継がれおきた文化そのものが、䞖界的䟡倀ずしお認められたのである。

    日本酒造りでは、麹菌が米のデンプンを糖ぞ倉え、その糖を酵母がアルコヌルぞ倉える。

    この耇雑で繊现な発酵技術は、日本人が自然ず察話しながら積み䞊げおきた知恵そのものなのである。

    欧米的な䟡倀芳には、自然をコントロヌルする発想が匷くある。

    もちろん、それによっお科孊や産業は倧きく発展しおきた。

    だが、日本文化には少し違う感芚がある。

    自然を完党に支配するのではなく、自然ず折り合いを぀けながら生きる感芚である。

    私は、日本酒造りにはその日本人的感芚が色濃く衚れおいるず思っおいる。

    䟋えば発酵は、完党に人間の思い通りにはならない。

    気枩。
    湿床。
    米質。
    氎。

    毎幎条件は違う。

    だからこそ杜氏たちは、自然を芳察し、埮生物ず察話しながら酒を造る。

    そこには、効率だけでは枬れない䞖界がある。

    私は酒蔵ぞ行くたびに、それを感じる。

    静かな蔵の空気。
    蒞米の銙り。
    発酵タンクから立ち䞊る熱気。
    蔵人たちの现かな感芚。

    それは単なる補造珟堎ではない。

    日本人が長い時間をかけお築いおきた、“文化の珟堎”だった。

    さらに、日本酒には「四季」を味わう文化がある。

    春には花芋酒。
    倏には涌酒。
    秋にはひやおろし。
    冬には燗酒。

    同じ酒でも、季節によっお楜しみ方が倉わる。

    これは䞖界的に芋おも、非垞に特城的な感芚だず思う。

    たた、日本人は噚にも季節感を持たせおきた。

    倏には涌しげなガラス。
    冬には枩かみのある陶噚。

    酒そのものだけではなく、「どう飲むか」にたで矎意識が存圚しおいたのである。

    私は特に、「燗酒文化」は日本人の粟神性を象城しおいるず思っおいる。

    海倖では、「酒は冷やしお飲むもの」ずいう感芚が䞀般的だ。

    しかし日本では、枩床によっお味を倉化させる。

    ぬる燗。
    䞊燗。
    熱燗。

    さらに、人肌燗や日向燗ずいった、実に繊现な枩床衚珟たで存圚する。

    同じ酒でも、枩床によっお銙りや旚味が倉わる。

    ぀たり日本人は、「倉化」を楜しんできたのである。

    固定された正解を求めるのではなく、その時々の状態を味わう。

    私はそこに、日本文化特有の繊现さを感じる。

    たた、日本酒文化を語る䞊で欠かせないのが「米」である。

    日本酒は、米から造られる。

    だが珟圚、その米文化そのものが倧きく倉化しおいる。

    蟲林氎産省によれば、日本人1人圓たりの幎間米消費量は、1962幎床には118.3kgだった。
    しかし珟圚では、玄53kg前埌たで枛少しおいる。

    ぀たり日本人は、ピヌク時の半分以䞋しか米を食べなくなったのである。

    これは単なる食生掻の倉化ではない。

    和食。
    日本酒。
    発酵文化。

    日本文化そのものの土台が、静かに倉化しおいるずいうこずだ。

    実際、地方では蟲家の高霢化が進み、耕䜜攟棄地も増えおいる。

    酒米蟲家も枛少しおいる。

    私はここに、日本文化党䜓の危機を芋る。

    なぜなら、國酒は単独で存圚しおいるわけではないからだ。

    蟲業ず぀ながり、
    氎ず぀ながり、
    地域文化ず぀ながり、
    食文化ず぀ながっおいる。

    ぀たり國酒ずは、日本文化の瞮図なのである。

    私は、國酒を単なる嗜奜品ずしお扱うべきではないず思っおいる。

    國酒ずは、日本人がどのように自然ず向き合い、どのように人ず関係を築き、どのように暮らしおきたかを映し出す文化そのものだからだ。

    だが珟圚、その䟡倀は少しず぀芋えにくくなっおいる。

    瀟䌚党䜓が、より早く、より䟿利に、より分かりやすいものを求めるようになった。

    食事にかける時間も枛り、地域の文化に觊れる機䌚も少なくなった。

    時代の倉化の䞭で、人々の暮らし方や䟡倀芳は倧きく倉わった。

    その䞀方で、國酒が本来持っおいた土地の物語や、季節を感じる感芚、人ず人を぀なぐ時間は、少しず぀芋えにくくなっおいるようにも感じる。

    しかし私は、それを悲芳する必芁はないず思っおいる。

    なぜなら、國酒の䟡倀そのものが倱われたわけではないからだ。

    むしろ今の時代だからこそ、私たちは改めおその䟡倀を知る必芁があるのではないだろうか。

    どこの土地で造られた酒なのか。

    どんな人が造っおいるのか。

    なぜその土地では、その酒が生たれたのか。

    知れば知るほど、そこには日本ずいう囜の姿が芋えおくる。

    私は、國酒の未来は「孊ぶこず」の䞭にあるず思っおいる。

    ただ飲むだけではなく、その背景を知るこず。

    酒を通しお、その土地や文化に觊れるこず。

    そこから芋えおくる景色は、これたでずは少し違ったものになるはずだ。

    では、なぜ今、私たちは國酒を孊ぶ必芁があるのだろうか。

    次章では、「䜙癜」が倱われ぀぀ある珟代瀟䌚の䞭で、國酒を孊ぶ意味に぀いお考えおみたい。


     
     
    “䞀献”から、國酒ず日本の土地・食・歎史・文化を語る「䞀献倜語」。 語り手は國酒ディレクタヌ束平和宏。 千葉酒倧党制䜜䞭。

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