メインコンテンツへスキップ
見出し画像

AI印税市場のリアル【4/4】2026年の出版社に残された選択肢─超現場のリアル


    第1回では、noteのRSL参画が示す「権利の中心軸の移動」
    第2回では、すでに数百億円が動いている「AI印税市場の現実」
    第3回では、「日本に文章版JASRACは必要か?」

    最終回となる今回は、2026年の出版社と著者に残された選択肢や具体的な方法について「AI技術」と「ビジネス構造」の両面から考えます。

    ⏰ 時間:約20分(約10,000字)

    ✓ こんな方におすすめ

    • 著者・小説家・ライター・商業記事関係者

    • 出版社の経営層・編集者

    • 法律関係など/AI時代の著作権に関心がある方

    • AIサービスの開発者

    • AI技術者

    • コンテンツ業界の将来を考える方

    ⚠️ はじめにお伝えしたいこと

    この連載は、特定の企業や個人を批判するものではありません。9年以上noteを使い何百本と書いてきました。そして中央公論新社において新規事業開発でAI領域「嫉妬AI辞書プロジェクト」を行っています。ここから見えてきた「今起きている新しい出来事」を、皆さんと議論するためのたたき台として書きます。検索しても出てこないからです。なので批判や反論、代替案を歓迎します。重要なのは、著者、AI技術者、AI法律家、編集者、UXデザイナーなどが集まってこの問題について話し合いを始めることだと考えるからです。

    画像
    重要なのは、著者、AI技術者、AI法律家、編集者、UXデザイナーなどが集まってこの問題について話し合いを始めることではないでしょうか

    ※本記事は筆者個人の見解であり、所属組織の公式見解を代表するものではありません。

    池松潤/Jun Ikematsu
    コミュニケーションデザイン/事業計画/エクイティストーリー/エンタープライズ営業コンテンツ/マーケティング/コンテンツなど。慶応義塾大学卒/博報堂を経て、スタートアップCEOの壁打ち相手、婦人公論.jp 動画YouTube・新規事業開発担当。AI領域も新規事業開発している。ときどき婦人公論.jpにコラムも。 ⇒https://lit.link/junikematsu

    動画でサクッと見たい方はコチラをどうぞ



    柳平さんの問題提起から始まった疑問

    柳平さんnoteに書かれていた「スイスが悩む『AIスクレイピング窃盗』」という問題提起には強く共感しました。
    スイスが悩む「AIスクレイピング窃盗」――オプトインの誘惑とライセンスの現実 / AIと著作権雑感

    コンテンツが無断で学習されることへの違和感。オプトインが倫理的には正しいという感覚。それが制度として成立するのか?という現実的な悩み。どれも著者の側に立つなら自然な問いです。

    例えて言うなら、いまのAIは「鍵もかけずに入られるのはおかしい」それに「入るなら、まず許可を取れ」──これは正しい。著者として、まっとうな感覚です。

    画像

    しかし、この議論を読み進める中で、どうしても説明したい「もう一段深い層」があります。それは「法律」や「制度」の話ではなく、「AIが実際に文章をどう理解しているか?」という話です。

    画像

    その理解に立つと、「文章版JASRAC」という発想は、決して間違ってませんがしかし、安易に「音楽業界のJASRACをそのまま移植しよう」とすると、本質を見失うし、実際にワークしません。

    この点が著者(小説家・エッセイストなど)には重要なポイントなのですが、どんな専門家が書いている記事を見ても、この部分を解りやすく書いた記事がありません。だからいま書いてます。


    第1章:なぜ「従来型の文章版JASRAC」では不十分で機能しないのか?

    そもそも音楽のJASRACはなぜ成立したのか?

    ◆音楽・JASRACは、なぜ機能したのか?
    それは「どの曲が、どこで、何回流れたか?」が把握できたから。

    ・テレビやラジオ局の放送記録
    ・カラオケの使用ログ
    ・商業施設での再生回数

    これらはすべて使用の追跡が可能でした。
    だから、
    ①全曲を管理する
    ②使用回数に応じて徴収する
    ③アーティストに分配する
    が可能だったし、仕組みが有効だったのです。
    では、文章(記事)の世界と何が違うのか?

    ◆文章は音楽とは条件が決定的に異なります。

    AIは、文章を「そのまま使わない」

    ・バラし、混ぜ、要約し
    ・どの文章が使われたか記録に残さない
    ・「生成された文章」から、模倣(学習)した「元ネタ」を逆算できない

    つまり、「どの文章が、どこで使われたか」を後から追えない仕組みになっているのです。

    AIがこの構造のままでは、従来型のJASRACモデルともいえる「全文章管理」、「使用回数ベースの徴収」は現実的に成立しない。
    肝心な技術的・本質的な理解をしていないと、この議論は前に進まないのです。

    画像

    「文章版JASRACは無理だ」と言う人は上記の点を理解しているなら正しい。でも、だからといって諦めるのも違う

    ここで重要なのは「AIは何も参照せずに文章を作っているわけではない」という事実だ。AIは必ず「何か」を参照している。さらに加えると「AI(RAG)」は文章を平等に扱っている(読んでる)わけではないのだ。AIは、意味を説明するとき、必ず「よりどころ(参照点)」になる文章を、勝手に当てをつけて、平均的な答えを出している。
    2章でその詳細をご説明したいと思います。

    画像


    第2章:AIは全文を平等に扱っていない
    ─「嫉妬AI辞書プロジェクト」が教えてくれたこと

    私が直面した現実

    私は現在、感情をテーマにしたAI辞書を、実際に連載・著者と一緒に作った。連載「嫉妬マニア」斉藤ナミ著を題材に、記事のエピソードから、嫉妬の感情構造を体系化して「嫉妬AI辞書」を作った。

    そこで言語処理学会第32回年次大会(NLP2026)に論文を出した。現在審査中なので詳細は書かないが、そこには生々しい現場のリアルがある。

    ・どの「文」を「参考」にするか?
    ・どの「エピソード」を「例文」にするか?
    ・どの言い回しを「基準」にするか?
    これは著者と共同作業しないと難しいし、従来のアナログ編集者では構造化の知識がないので難しい。

    しかし、どんな情報をAIに読ませると「AIの答えが変わる」のか?判明した。情報の与え方次第で、AIの理解は決まるからだ。

    具体例で示すと
    たとえば、「嫉妬とは何か?」をAIに説明させるときこうなる。

    パターンA:ただ文章を(大量に)与えた場合
    → AIは抽象的で教科書的な説明をする

    パターンB:斉藤ナミ氏の嫉妬に関する具体的なエピソードと分析を与えた場合
    → AIは「羨望と嫉妬のちがい」「比較による劣等感」という、より構造的な説明をする

    人間の直感的な感覚では「何十年分の知見や、豊富なデータ」をAIに食わせた方が「良い結果(正確な)のが出る」と思いがちである。

    しかし、実際はぜんぜん違う。良質なデータを与えなければ、答えは平均的なものが出てきてしまう。これを論文のために実験して証明した。

    つまり、AIは、全文章を読んで理解しているのではない。「この概念はこういうものだ」と説明するための基準文を読んでいる(見ている)のだ。

    AIの中身は数式で出来ており、目があるわけじゃない。この肝心な技術的な本質を理解している出版関係者が殆ど居ない。

    画像

    これが意味することは▼
    この現象(出力)を見ると「全文章」(書籍4話分入ってます)とか(30年分雑誌を読み込んでます)のという発想が、いかに的外れだという事が解るはずだ。

    これを柳平さんのnoteで書かれた問題に例えるなら「家に入った回数(記事を読み込んだ回数)を数えることではないし、そこで読んだコンテンツのデータ量でもない」のである。

    本当の分かれ目は
    「この家(記事・著作物)を説明するとき、どこを見たことにするか?(参照点)」を「誰が決めるか?」なのだ。

    「この文章・この作家・この作品の概念を説明するとき、どの文章を基準にするか?」RAGパイプラインの設定が、AIの理解を決めているからである。

    画像

    こんなニッチで超ディープなのはなかなか理解できない。なぜなら、AI技術と文章(文学)の両方の視点が必要だからだ。だからググって検索しても、こんな解説は出てこない。だから今書いている。


    第3章:つまり「要点」は2つある


    画像

    外側の要点:誰が権利管理するか?

    「なにを言ってんだ?」状態かもしれないが、すでに世界では「AI印税市場」が動いているからである。

    ・ハーパーコリンズと著者はは既刊書の一部につき1タイトル・約5,000ドル(約70万円)をマイクロソフトから受け取っています
    ・ ニューズ・コーポレーションは5年間で約375億円以上を受け取りました
    ・Redditは年間約195億円をGoogleとOpenAIから得ています

    画像

    これは「実験」ではなくすでに動いている「ビジネス」である。
    しかし、この取引で何が売買されているのか?
    それは、「文学的価値」や「読者数(フォロワー数)」ではない。

    大事なのは「AIが学習に使いやすいデータセット」という計算資源の価値なのである。

    画像

    「AIが賢くなるには大量のデータが必要だ」と言われてきた。
    でも本当は「量」よりも「質」もかなり大事。
    だから
    「AIにとって一番うれしいのは、“そのまま試験勉強に使えるノート”があること」なのだ。
    このように「AIを読者として考える」視点が必要になっている。


    内側の要点:では「AIの理解の「参照点」を誰が握るか?」

    そして、ここからが重要で、今回のnoteの核心である。
    Redditが年間195億円を得ている理由は、「大量の文章があるから」だけではない。

    画像

    Redditのデータは、
    ・構造化されている(誰が、いつ、何について書いたか、メタデータが揃っている)
    ・AIが取得しやすい(API経由で一括取得できる)
    ・権利が明確(プラットフォームが一元管理している)

    しかしもう一つ、見落とされている価値がある。

    それは、Redditの投稿が、AIにとって「この概念はこういうものだ」と理解する際の「参照点」になっているということだ。

    たとえば、「Redditユーザーはこの話題についてどう考えているか」をAIが説明するとき、AIはRedditの投稿を「定義の基準」として使う。

    つまり、Redditは、
    ・外側の要点:データ資産として対価を得ている
    ・内側の要点:AIの理解の参照点(基準点と言ったほうがいい)の両方を握っている

    この2つが具体的にシステム化されている。これがコンテンツビジネスにおける問題の核心だ。

    画像


    出版社が直面している現実
    一方、日本の出版社は、どちらの要点も準備できていない。理解さえしていない。

    外側の要点で不利な理由(データ資産を持ってない)
    ・文章データが散在している(紙、PDF、電子書籍、Webサイト)
    ・メタデータが弱い(どの作品にどんなテーマが含まれているか構造化されていない)
    ・権利関係が複雑(著者、翻訳者、イラストレーター、出版社の間で権利が分散)

    内側の要点で不利な理由(AIを読者として勉強してない)
    ・AIが「人間とは何か」とか「感情とは何か」とか説明するとき、出版社の文章は基準点になっていない。Wikipediaや、ブログやプラットフォームの情報が基準になっている
    ・つまり、AI時代のコンテンツ市場で「意味の定義権を失いつつある」

    これを例えるなら、ウクライナ戦争で、ドローンやAIが戦争のやり方や、概念そのものが変化してしまったのと似ている。コンテンツ産業で似た状況は、音楽業界がIphoneとストリーミングで激変したのと同じだと思ってもいい。


    2つの要点(戦う場所)は別物ではない

    重要なのは、この2つの要点は「連動している」ということだ。

    内側の要点(データ資産)で基準点を握れば、外側の要点(AIが読者)での交渉力も上がる。

    なぜなら、AI企業にとって、
    ・「ありふれたデータ」なら合成データで代替できる
    ・しかし「この概念の標準的な説明」は、信頼できる出典が必要
    となるからだ。

    だからこそ、AP通信は「9〜12カ月かけて数千万点のコンテンツをAIリーダブルに変換した」のだ。
    ※AP makes its archive AI-ready to tap the enterprise RAG boom
    ※報道機関から「情報インフラ」へ  AI 時代に AP通信 が築く新たな収益モデル

    今まで私が書いた文脈で、AP通信とマイクロソフトの契約の記事を読み解か無いと理解dできない。

    すでに「エコノミスト(The Economist)」や「フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)」は、RAG需要がもたらす収益機会を捉えコンテンツアーカイブのライセンス提供を進めている。

    ダウ・ジョーンズ(Dow Jones)の「ファクティバ(Factiva)」部門は、3万社の出版社ネットワークを企業向けAIライセンス付きコンテンツマーケットプレイスを運営している。これは単なるデータ整備ではない。「APが定義する標準点」をAIに組み込ませるための準備だったのだ。

    これらの動きを「理解」して「解説」できる人に、この情報をシェアしたい。だからこのnoteを書いている。


    第4章:3つの視点の統合
    ─なぜこの問題は難しいのか?

    AI著作権がとても難しく、ややこしいのは、
    「視点を統合しなければワークしない」点にある。

    視点1:AI技術の現実

    AIは、文章を平等に扱わない。
    ・定義文、代表例、整理された説明を参照起点(標準点)として使う
    ・トランスフォーマーモデル(GPT、Claude等)は、文体そのものを統計的パターンとして学習する
    ・「どの文章が使われたか」を後から追跡することは、技術的に極めて困難
    つまり、JASRACのような従来型の「使用回数ベース」の管理は成立しない。

    視点2:小説家・著作者の感覚

    作家が恐れているのは、「作品が読まれなくなること」ではない。
    「文体だけが利用(模倣)される」
    「自分の個性がAIに吸収される」ことだ。

    そして、この恐怖は的を得ている
    なぜなら、AIは
    作品の構造、語彙の癖、比喩のパターン、文体のリズム
    つまり「作家の個性そのもの」を学習しているからだ

    しかも、検索とAIは一体化している(と言っていい。反論は知ってる)
    読者に届けるパイプは巨大プラットフォーマーに握られているのだ。
    しかし、ここで重要な視点がある。
    「文体の学習」と、「定義の学習」は、別物である

    ・文体:村上春樹風、夏目漱石風に、AIは書くことができる
    ・定義:「この感情はこういうものだ」という説明の基準をAIは持っている

    前者(文体)は多くの作家が危惧しがちな問題だ。
    後者(基準点)は、まだ十分に認識されていない。

    視点3:法律の限界と可能性

    日本の著作権法30条の4(情報解析規定)により、AI学習のためのデータ利用は原則として自由である。

    しかし、ここに誤解が生じやすい。
    「学習が自由」≠「無償で提供しなければならない」

    比較してみよう。
    あなたが撮った写真を、誰かがインターネットで閲覧することは自由である。しかし、それを商業広告に使用したい場合は、許諾と対価が必要になる。

    同様に、AI企業が文章を「学習」すること自体は法的に認められているが、その学習データを「商業利用」する際に対価を求めることは、契約の範囲で可能である。

    実際、
    ・EUではAI法により「機械可読な権利留保(オプトアウト)」を尊重する義務が課された
    ・アメリカでは訴訟を通じて対価を求める動きが活発化している
    ・日本でも新聞各社がパープレキシティを提訴している

    異なる視点を統合して考えねばならない。つまり、法律の限界を理解しつつ、契約ベースでの権利管理の仕組みを構築することが現実的なアプローチなのだ。ここを説明するのは超難しい。

    画像



    第5章:AI時代の文章版JASRACは無理筋か?

    従来型:全部集める文章版JASRAC → 無理

    すべての文章を管理し、使用回数を追跡し、課金する──これは技術的に不可能。

    AI時代型:説明の基準点を押さえる文章版JASRAC → 現実的

    AIが何かを説明するとき、「この理解はどこから来ているか」を決める文章を押さえること。
    これが、AI時代の文章版JASRACが果たすべき役割だ。


    では具体的には、何をするのか?

    段階1:定義文・代表例のデータベース構築
    ・出版社が持つ「信頼できる定義」「代表的な説明」を構造化する
    ・どの感情、どの概念について、どの文章が基準になるかを整理する
    ・これは「AIの辞書」に相当する
    ※これは文系が実際のコードを見ても解らないので、噛み砕いて説明が必要になる。

    段階2:AI企業への基準点提供
    「◯◯について説明するなら、この定義を使ってください」
    「◯◯について説明するなら、この代表例を参照してください」
    という形で、「AIの理解の参照点」を提供する
    ※まさに私が取り組んでいる「嫉妬AI辞書プロジェクト」がこれにあたる

    段階3:基準点使用に対する対価徴収
    ・AIが基準点を参照するたびに課金するのではなく
    ・基準点データベースへのアクセス権に対して対価を得る
    ・これはAPI利用料に近い

    画像

    なぜこれが現実的なのか

    ①技術的に追跡可能
    ・どの基準点が参照されたかは、ログで確認できる
    ・全文使用を追うより、はるかに現実的

    ②AI企業にとっても価値がある
    ・信頼できる定義・説明は、AI の品質を高める
    ・無断でスクレイピングするより、公式データの方が安定している
    ・著者にとっても納得感がある
    ・ 「文体が盗まれる」のではなく「自分の著作が、この概念の標準的説明として認められる」という価値が可視化される

    つまり
    「嫉妬といえば斉藤ナミさんの嫉妬学が有名だが・・・・」という直接引用ではなく
    「あなたの嫉妬は、斎藤ナミさんの嫉妬学における他人との比較で生まれるもので」という構造引用になる。つまりAIの教科書(AIの先生)として利用されるようになる。


    まとめ:AI時代における出版社の役割の再定義

    おわりとして、根本的な問いに立ち返りたい。

    AI時代における出版社の役割とは何か?

    読者と著者の狭間に立つのが出版社の立ち位置である。

    画像

    読者へ届けるルートは紙からネットへ移行して細っている
    ゼロクリック問題も進行中だ

    著者の信頼関係はどうだろうか?
    長年の信頼関係はどう変化していくのか
    AIが新種の読者としてAI印税という新しい仕組みが登場しつつある

    つまり、出版社の役割は、紙でもデジタルでもない。
    「人間の言葉を、社会が使える形に編集し、価値として配分すること」
    なのである
    作家や専門家が書いた言葉を
    👉 わかりやすく整理する
    本・記事・データとして
    👉 みんなが使える形にする
    その言葉が
    👉 正しく評価され、対価が返る仕組みを作る
    という仕事だ。

    たとえ話で言うと
    人間の言葉は、原石みたいなものだ。
    出版社(編集者)はそれを
    磨いて(データ整理もする)
    形をそろえて(使える形に整える)
    値段をつけて(対価が返るようにする)
    必要な人に届ける(届ける努力をする)
    つまり「言葉の精製工場」のような存在なのだ。

    AI時代に、その役割は消滅するどころか、むしろ拡大している。

    なぜなら、AIが大量の文章を生成する時代だからこそ、「本当に価値のある文章」を見極め、編集し、届ける役割が重要になるからだ。

    そして「価値として配分すること」には、新しい意味が加わった。

    従来:
    読者に届け、書籍として販売し、印税を著作者に配分する
    追加:
    AIに学習される際の対価を得て著者に配分する

    さらに追加すると
    「この概念の標準的説明」として、著作者の文章が基準点になることの価値を確保する。必要がある。

    AIは、質問をされるたびにゼロから考えているわけではありません。
    AIは、答えを作るときに
    「この言葉・この考え方は、どれを基準に説明するのが正しいか」
    という基準点(ものさしみたいなもの)を必ず参照しています。

    たとえ話で言うと

    学校でテスト勉強をするとき
    ・教科書に書いてある説明
    ・クラスの誰かの感想文
    どちらを「正解の基準」にしますか?

    当然、教科書ですよね。
    AIにとっても同じなのです。
    AIはたくさんの文章の中から、
    「この概念を説明するときは、この文章を基準にする」
    という「AIの教科書役」を決めているのです。
    この最後の点が、まだ十分に認識されていないのです。

    しかし、このポイントを押さえないまま、AIの制度だけを整えても、気づいたときには、
    ・誰かが決めた定義
    ・誰かが書いた代表例
    が、AIの標準点として固定されてしまうのです。
    それが、いま起きていることです。


    まとめ
    最後は─意志が必要である

    冒頭で、柳平さんの問題提起に共感すると書きました。

    オプトインが倫理的に正しいという感覚も、制度として成立するのかという悩みも、すべて理解できます。しかし、その議論の前に、戦場が2つあることを認識する必要があります。

    ・外側の要点:誰が権利管理するか?
    ・内側の要点:AIの理解の基準点を誰が握るか?
    そして、この2つは連動しているのです。

    AI著作権が、難しく、ややこしいのは、
    「AI技術と、小説家と、権利処理の具体的な方法と、それらを法律的に見る視点と、視点を統合して分かりやすく解説しなければワークしない」点にある。

    そこに取り組むには、「意志が必要」だと感じてます。
    すべては意志からはじまる。
    意志がなければ、何もおこりません。
    ただ流されていくだけです。
    ここで、サラリーマン経営者で官僚タイプの人は、先送りする悪い癖があります。それを「不作為による無責任」と呼びたい。
    その意味は「法的な責任は問われない」けど、「構造的・歴史的責任は免れない」ということ。

    画像



    未来の人=若者のために、責務を果たさねばならない。

    著作者、編集者、経営者、技術者、法律家
    ──それぞれの立場で見える景色は違います。
    しかしこの構造変化は、すべての立場に影響を及ぼすのは間違いない。
    だから対話や連携が必要。

    音楽業界のJASRACだって、最初から完璧だったわけではない。運用しながら改善してきた。文章の世界も同じだ。これからは「AI向けの教科書や辞書をつくる」という、新しい状況を見据えた仕組みを産み出していかねばならない。

    約1万字と長くりましたが、このきっかけを頂いた柳平大樹さんに感謝します。



    このnoteは「対話の始まり」です

    この記事が「唯一の正解」だとは思っていません。むしろ、批判や反論、代替案を歓迎します。重要なのは、著者、AI技術者、AI法律家、編集者、UXデザイナーなどが集まって、AI著作権・印税市場という現実を前に議論を始めることです。
    一緒に考えましょう。

    画像
    イメージ【AI著作権サミット】重要なのは世界の著者、AI技術者、AI法律家、編集者、UXデザイナーなどが集まってこの問題について話し合いを始めることではないでしょうか



    池松潤
    https://lit.link/junikematsu

    ※本記事は筆者個人の見解であり、所属組織の公式見解を代表するものではありません。

    動画でサクッと見たい方はコチラをどうぞ


    #AI印税市場のリアル
    #AI印税
    #生成AI
    #著作権
    #コンテンツビジネス
    #AI時代
    #データ資本主義
    #知的財産
    #AIライセンス

    あなたへのおすすめ