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Photo byhiiro_archive153

【長編連載】アンダーワールド~冥王VS人間~ 第一部ー13ー

    「死神のお仕事」

    「呼んだ? 」

    彼女は向井に言った。

    「急ですいませんね」

    「ん? おっ、虎獅狼。久しぶり~」

    「二人はお知り合いですか? 」

    向井が聞くと、

    「まあね。山川とは長いからね~
    虎獅狼とも二十年来の付き合いだね」

    「えっ? ちょっと待って、
    山川さんは死んでから、
    二十年以上経っているんですか? 」

    驚く向井に、

    「そうなるわね。
    私もかれこれ二十年。
    彼女に憑依されてるってことかぁ~」

    向井は頭を抱えてしゃがみこんだ。

    「ええええええ~!! 
    二十年も成仏しない派遣霊っているのか!? 」

    「なぁに、二十年なんて昨日みたいなもんだろ」

    「虎獅狼にはそうかもね。
    でも死んでるとはいえ人間の寿命は短いからさ」

    「なるほど。不憫よの~」

    「で、山川は今どこ? 」

    「えっ? その辺に……」

    向井はまだ頭が働かずに慌ててタブレットを動かした。

    見るとトリアは山川専属になっている。

    どういう事だ? 

    向井がそのことを尋ねると、

    「ああ、仕方がないのよ。
    私の体が山川仕様になっちゃって、
    他の派遣霊が居心地悪いって嫌がるから」

    「ああ、そういうこと。
    山川さんとの相性がいいんですね」

    「相性もなにも、
    ああいう古い霊を扱える死神が少ないだけ。
    今いる死神は現冥王の使役だから……
    あっ、もしかして前冥王からの使役って私だけかも? 」

    「お前も死神というくらいだから神なのか? 」

    「なわけないでしょ。神がこんな仕事する? 」

    「しないのか? 」

    「しないわよ。言っておくけど、
    死神がどうやって作られてるかあんたら知ってる? 」

    彼女の文句に、
    向井と虎獅狼が同時に首を横に振った。

    「冥王の一部で出来てるの。
    あ~もう!! そういうだけでも気持ち悪い~」

    彼女は両腕で体を包み身震いした。

    「大抵は髪の毛や髭に息を吹きかけて、
    死神が出来上がるわけなんだけど、
    私の核は前冥王なの。
    ガラの悪い汚ならしいジジイだったわけ。
    現冥王みたいないい男なら私も我慢できるんだけど、
    あれよあれ~」

    両手で頭を抱える彼女を、
    向井がボ~ッと見ているので、

    「あんた前冥王見たことないの? 」

    「いやぁ、この仕事二年目ですから」

    「冥王室出入りしてるんでしょ。
    写真があるでしょ。気取ったポーズの写真が」

    そういえば、壁に写真が飾られていたような……

    向井は思い出すようにあごに手を当てた。

    「冥王が変わる時に前冥王の写真だけ、
    冥王室に飾られるのが習わしなんだって。
    死神だって寿命があるから、
    核が弱ればお役御免なんだけど、
    私の核がこれまた強いのよ。
    もう二百十年よ。
    医務室に行って調べてもらったら、
    まあ、丈夫。くたばる気配がないって言われた」

    彼女は言いたいことだけ言うとふぅ~と息を吐いた。

    すると遠くの方から葵が駆けだしてきた。

    「トリア~久しぶり~」

    「山川、いい加減にこれで成仏してよ」

    「トリアとあたしの仲じゃん」

    「とりあえず憑依できるようメンテしてきたから、
    さっさと入って仕事するよ」

    派遣霊は思いが強いばかりに、
    憑依後に体の不法占拠を企てるものもいる。

    死神の体だ。

    当然、
    肉体を乗っ取ることは不可能なので悪霊扱いにされ、
    核からの光の渦に飲み込まれ、
    そのまま消えてしまう。

    派遣霊でそのような企てをするものはまずいないが、
    過去に数回だがそんな派遣霊がいた前例がある。

    その為に派遣課の調査員が入り万全に備えている。

    「とりあえず、急ぎだそうなので、
    一時間後に松田さんの仕事場に伺います」

    向井が言うと葵が、

    「じゃあ、久しぶりにトリアの中へ……」

    憑依する瞬間を虎獅狼もじっと見ていた。

    「おっ、いい感じ~」

    葵はトリアの体を馴染ませるように動かした。

    「連泊グッズは一通り、
    トリアさんに持ってきてもらっているので、
    そのまま出かけられますね」

    「オッケ~」

    「葵のその姿、俺も久々に見たな」

    「どお? 似合ってるでしょ」

    虎獅狼と葵の姿に、

    この二人をずっと一緒にしていて大丈夫なのか?  
    なんかちょっと心配になってきたぞ。

    「なんだ。お前は心配性だな。
    高田は平気だったがな」

    虎獅狼があきれ顔で笑った。

    なぜかこの虎獅狼には、
    心の中を見透かされているようで落ち着かない。

    「まあ、お前とは生きている時間が違うからな。
    そんなに気にするな」

    虎獅狼はそういうと、

    「ほら、行くんだろ? 」

    と、二人の前を歩き出した。


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    初めまして八雲翔です。 人生を楽しもうと好きな物語を好きに書いています。 ファンタジー、ミステリーを中心に、新聞の連載小説のような感じで投稿中。 他サイトにも投稿しています。 web小説で人気の題材とは言えませんが、読んでいただけたら嬉しいです。

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