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【長編連載】アンダーワールド~冥王VS人間~ 第一部ー3ー

    八雲翔

    「悪霊退治にも申請書?」

    「俺はきっと妖怪と悪霊に殺されるんだ」

    「大丈夫だよ。
    俺たちはもう死人だから、
    悪霊にも妖怪にも殺されません」

    向井が牧野をなだめるように、
    肩をポンと叩いたところで、

    「おっとまずいな。
    事故の霊で付近の地縛霊が集まり始めた」

    向井は牧野の背後を見て言った。

    「えっ? 」

    牧野は振り返ると、
    黒く膨れ上がる霊の塊に慌てて、
    冥界札を取り出した。

    その横で向井が助け舟を出す。

    両手で円を大きく描くと、
    空間の動きを止めた。

    その場の街の時間が停止する。

    牧野は襲い来る黒い影を避けながら、
    冥界札に息を吹きかけ次々と投げつけた。

    札に取り込まれた悪霊は、
    一瞬で燃え上がり消滅されていく。

    「ふう~」

    空気が澄んでいく様子を見ながら、
    牧野がため息をついた。

    付近の悪霊が消えたのを確かめ、
    向井は両手を叩き空間を元に戻すと、
    街が動き出した。

    悪霊・地縛・妖怪関係は、
    基本除去課の担当だが、
    特例の数が少ないので、
    別の課がヘルプに入ることが多い為、
    嫌でも何でもできるようになる。

    「今夜はこれで終了~
    札が無くなった~」

    冥界札は除去課のスタッフのみ、
    死神課から配布される。

    「これって面倒なんだよな。
    書類書いて申請出してからじゃないと、
    もらえないんだもん」

    「えっ? そうなの? 」

    田所が聞いた。

    「札と鬼籍は繋がってて、
    札が消えると霊も消滅されるから、
    鬼籍の名前も消滅されるわけ。
    だから一体で一札? 
    しかもその数で給料が決まる歩合制よ。
    田所さんたちは固定給だからいいけどさ。
    俺たちは下界にいる時間も長いから、
    お金は必要なわけ。
    なのに経費は下りないしさ」

    牧野は銜えていた菓子パンを口に放り込んだ。

    「特例って、今十二人しかいないじゃん。
    こんだけ悪霊だらけなのにさ、
    除去課のスタッフは俺を入れてたった三人。
    しかも残りの二人は、北と西。
    これってブラックよ」

    それでも除去課は、
    最大スタッフ数になっている。

    田所の消去課も、
    スタッフがもう一人いるだけ。

    これも配達課から受け取った霊魂を、
    消去する事務仕事なので、
    スタッフが少なくても何とかなっている。

    なのに、派遣課に至っては向井のみ。

    派遣霊が増えているのに、
    中央から動けないのは、
    ここに理由がある。

    心残りの強い霊魂は、
    向井の霊的波動に引き寄せられて、
    自分から移動してくるものもいる。

    反対に順番待ちでサロンにいる間に、
    再生への道を選ぶものもいる。

    霊魂もそれぞれである。

    「そういや、
    焼却課は二人で焼いてるんだよね。
    あそこはシニアの部署だから、
    源じいと真紀子さんだっけ? 」

    田所が聞いた。

    源太郎さんは八十六歳で亡くなったのだが、
    残りの寿命が十年あるので、
    焼却課にいる。

    真紀子さんも五十八歳で死亡したが、
    残り寿命が二十年ある。

    「源じいは今が楽しいんだってさ。
    死んだ後の体は痛みも取ってもらえるし、
    食事もうまいって。いいよなぁ」

    「老人に悪霊に向かって走れって言えるか? 
    言えないだろ? 適材適所」

    田所が言った。

    「それにしても、牧野君はさすがですよ。
    あの素早さ。俺には無理です」

    向井の言葉に、

    「そ、そうかなぁ~」

    牧野が照れたように言う。

    「さあ、仕事が終わったんなら酒飲もう」

    田所が両手を上げて伸びをした。

    「あのふらついてる霊魂はどうするんだよ」

    「今ので危険な悪霊は大方いなくなったし、
    明日でいいでしょう。
    働きすぎは体に毒」

    向井は牧野の肩をたたいて、
    飲み屋に向かった。


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    初めまして八雲翔です。 人生を楽しもうと好きな物語を好きに書いています。 ファンタジー、ミステリーを中心に、新聞の連載小説のような感じで投稿中。 他サイトにも投稿しています。 web小説で人気の題材とは言えませんが、読んでいただけたら嬉しいです。

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