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Photo byhiiro_archive153

【長編連載】アンダーワールド~冥王VS人間~ 第一部ー7ー

    「冥王も死ぬ?」

    「冥王室の出入りって、
    死神以外では派遣課と再生課しか、
    いかないだろう? 
    何か聞いてないの? 」

    牧野が聞いた。

    「みんなが知っていること以外は、
    聞いたことはないけど、
    今の冥王も任務について二百年くらいだし」

    「えっ? 冥王って変わるの? 」

    三人が驚いて声を揃えた。

    「ああ。
    いきなり辞令がきて冥王になるらしい。
    前任者が亡くなって就任したそうだよ」

    「冥王も死ぬの? 」

    牧野がビックリした顔をした。

    「らしいですね。
    俺もよく知らないけど、
    人間より長く生きているのは確かです。
    昔のこともよく知ってるし、
    源じいとは楽しそうに話してますよ。
    考えたら冥王も可哀想です。
    冥界をうろつくくらいしか楽しみがないからね」

    「そうなの? 私任命されたときに、
    ちらっと見ただけだから、
    冥王がどんな姿してるかよくわかんない」

    「俺も知らない」

    早紀と牧野は顔を見合わせた。

    「角があるのをのぞけばイケオジ? なんじゃないの」

    「ええ~見たい」

    「俺も見たい~」

    二人が言った。

    「冥界にいれば会えると思うけどね。
    ちょこちょこ顔を出してますよ」

    「ほんとかよ」

    牧野は怪訝そうな顔をした。

    「そういえば再生課の新田君て、
    有名な人気俳優じゃない。
    人間界をうろついてて大丈夫なの? 」


    今から二年前。

    二十七歳の人気俳優が亡くなった事件は、
    それはもう大騒ぎだった。

    熱狂的ファンが警備をすり抜け新田に抱きつき、
    それに続いたファンがドミノ倒しのようになり、
    結果新田は下敷きになり死亡。

    「あの事件は冥界でも話題だったでしょ。
    まさか、彼が特例になるとは思わなかったけど」

    「俺達は知人に会ったとしても、
    分からないようにシールドが付いてるけど、
    熱狂的なファンだと、
    そのシールドを突き破ることがあるんですよ。
    だから人間界にいる時間の少ない再生課に、
    新田君は配属されているわけ」

    再生課は消去課から運ばれた霊魂を、
    再生させるために壺へと封印し、
    冥王に届けるのが仕事だ。

    消去も霊魂の上書き回数により、
    再生の仕分けが必要になり、
    新しいもの、年代物で分けられる。

    なので再生課は他の特例のヘルプ以外では、
    あまり下界には降りてこない。

    「人気者は大変だな」

    牧野が片肘をついて言った。

    「誰が人気者だって? 」

    「えっ? 」

    四人が振り返った。

    「おやおや、噂をすれば男前の新田君じゃないか」

    田所は椅子を引くと、
    座りなよという合図をした。

    「いつ見ても目の保養~
    冥界では一に新田、
    二に向井っていわれてるのよね」

    「俺は? 」

    牧野が自分を指さす。

    「あんた自分の顔、鏡で見たことあるの? 」

    「ちぇっ」

    「それより、珍しいよね。
    新田君がこんなところに顔を出すなんて」

    「向井さんのせいですよ。
    雑誌が読みたくて、
    冥王は寝ないで待ってますよ。
    あと特別室のお偉いさんが向井はどうしたって、
    そりゃもう、
    えらい剣幕で死神に怒鳴り散らしたみたいで、
    ピリピリしてます」

    「ハハハ。年取ると我慢できなくなるんですよね。
    これ飲んだら帰りますから。
    新田君もここまで来たんだから飲んでいきなよ」

    「当然でしょ。
    久しぶりの下界なんだから飲んでいきますよ」

    新田はチューハイを注文した。

    「十二人しかいない特例がここに五人も揃ってるなんてね」

    「五人じゃないよ。六人」

    「えっ? 」

    五人が声の方を振り返ると、
    小柄な目つきの鋭い若者が立っていた。

    少年にしか見えない彼は姿を消して、
    すんなり居酒屋に入ってきた。

    「おや、安達君。
    君も仕事帰りかい? 」

    田所が聞くと、
    安達は隣の席から椅子を持ってきて、
    向井と牧野の間に割り込んだ。

    ここで一番年が近いからか、
    牧野にはよく突っかかっている。

    「俺は安達より先輩ですからね。
    こんなことで目くじら立てたりしませんよ」

    牧野は挑発するように言った。

    「………」

    安達は無言で店員が運んできたチューハイを飲んだ。

    飲めないお酒を飲むくらいに、
    牧野に対抗意識があるようだ。

    飲んで顔をゆがめる安達に、
    向井達は笑った。

    新田は仕方なさそうに再度オーダーした。

    十六歳で亡くなった安達は特例の中では一番年若く、
    容姿は少年にしか見えない少し異質な存在だ。

    頭には、
    人には見ることのできない、
    孫悟空の緊箍児きんこじのような輪が嵌められている。

    向井は安達に声をかけた。

    「今日は朝から随分と霊の補導をしてくれたみたいで助かったよ」

    「……うん」

    「もう。
    感謝されたら有難うでしょ」

    早紀が安達の頭をボンッと強く叩いた。

    「…………」

    安達は何も言わずに頭を触った。


    補導課は自分が死んだことも分からずに、
    うろついている霊を補導するのが仕事だ。

    思いの強いものは派遣課に回されるので、
    それ以外の霊は悪霊などの餌食になることが多い。

    その為、
    光の渦に乗らなかった霊魂は見つけ次第、
    冥界へと連れていく。


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    初めまして八雲翔です。 人生を楽しもうと好きな物語を好きに書いています。 ファンタジー、ミステリーを中心に、新聞の連載小説のような感じで投稿中。 他サイトにも投稿しています。 web小説で人気の題材とは言えませんが、読んでいただけたら嬉しいです。

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