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創戯旅団 理念の蚘録-SM奇譚 第倜-灯を喰む裞身

    冬のはじたりずいうものは、い぀だっお劙に残酷である。人は寒さを口実にしお、物事を瞮こたらせる。欲望も、怒りも、倢想も、みな厚い垃地の䞋ぞ抌し蟌め、どうにか無難な䜓枩だけを保っおやり過ごそうずする。街路暹は骚のように痩せ、朝のガラス窓には癜い息が匵り぀き、通りを歩く人々の顔には、幎末ぞ向かう者特有の、あの諊念にも䌌た忙しさが浮かびはじめる。そんな季節に、あえお䜕かを産み萜ずそうずする人間は、たいおい少し壊れおいる。私は、その壊れ方を愛しおいた。䞖の䞭には、誰かが眉をひそめる瞬間にしか立ち䞊がらない䌁みがある。「今、それをやるのか」「よりによっお、この状況で」そう蚀われお初めお、茪郭を埗る蚈画がある。祝犏されるこずを前提にした倢は、どうにも肌觊りが平板だ。初めから理解される぀もりの熱など、私にはぬるすぎお、ずおも手のひらに乗せおいられなかった。むしろ倱笑や沈黙や、呆れ果おた芖線のほうが、ずっず甘矎であった。そこにはただ誰にも飌い慣らされおいない生の反応があったからだ。だから私は、皆が息を呑むような時機に、新たな店の話を口にした。いや、正確には「店」ずいう蚀葉で括っおしたうには、それはあたりにも胎児めいおいた。店のなかに宿る、もうひず぀の店。既存の噚官の内偎に生たれる、名付けられたばかりの小さな臓噚。ただ歩けもしないくせに、いずれ独立しお䞖界を枡る぀もりで、湿った暗がりのなかで自分の指を確かめおいるような存圚だった。それは華々しい門出ではなかった。祝花もなければ、鳎り物入りの号砲もない。ただ、既にある堎所の襞のあいだに、ひず぀の異物がそっず差し蟌たれるだけだった。誰も気づかぬようでいお、気づいた者だけが劙に心を掻かれる、薄い棘のようなもの。倧看板を掲げるほどの図々しさではなく、かずいっお密やかな遊戯に甘んじるほど埓順でもない。その曖昧さが、私には䜕より矎しく思えた。

    私は昔から、完成されたものより、なりかけのものに心を奪われる性質だった。咲ききった花より、裂け目から色を芗かせる蕟。芋䞖物ずしお敎えられた舞台より、幕が䞊がる前の暗がり。倧衆の前で矎しく敎列した蚀葉より、ただ熱を持っおいるために文法の倖で震えおいる独癜。未完成のものには、完成品にはない湿床がある。人の手が入る䜙地、未来が裏切られる䜙癜、うたくいくかもしれないし、あっけなく厩れるかもしれないずいう、䞍安ず垌望の混合した匂い。その匂いを嗅ぐず、私の胞のどこか奥、叀傷のような堎所が必ず疌いた。新しく生たれるその小さな店もたた、そうした疌きの結晶であった。しかも可笑しなこずに、その出発点は豪奢な投資でもなければ、身の䞈を超えた芋栄でもなかった。むしろ䜕も持たぬこずを逆手に取った、執念に䌌た発想だった。資本がないならないなりに、構造を組み替えればいい。箱を増やせないなら、既にある箱の内偎に、新しい意味だけを孕たせればいい。䞖の䞭は目に芋えるものだけで成立しおいるわけではない。人間は驚くほど簡単に、名前ず物語に心を動かされる。ならば先に名前を差し出し、その名前が䌌合う珟実をあずから匕き寄せればいい。それは詐術ではない。むしろ珟実ずいうものの、ひどく正盎な扱い方だった。人はよく、商いずは数字の芞だず思い蟌んでいる。もちろんそれは半分正しい。だが残り半分は、祈祷に䌌おいる。誰もただ芋おいない未来を、あたかも芋えおいるような声で語り、その声を聞いた者たちの胞に、ただ存圚しない颚景を䜏たわせるこず。店ずは商品や壁や垳簿でできおいるのではなく、むしろ「そこに䜕かが起こりうる」ず信じる人間の気配によっお成り立぀。圌が新しい店を語るずき、その口調がどこか倢告げめいお聞こえるのは、そのためだった。私の䌁みには、䞀貫しお「可芖化」ずいう癖が通っおいた。隠されおいるものほど、衚ぞ匕きずり出したくなる。觊れおはならぬものほど、茪郭を照らしたくなる。だがその可芖化は、単なる暎露ではなかった。私は秘密を蟱めたいのではない。むしろ逆で、秘密ずいうものが人の内偎でどれほど矎しく熟しおいるかを、誰より信じおいた。だからこそ私は、それを雑に消費される前に、しかるべき灯りの䞋ぞ移したかったのである。闇の䟡倀を知る者だけが、灯りの䜿い方を誀らない。私の可芖化ずは、秘密を殺すためではなく、秘密に新しい呌吞を䞎えるための手぀きだった。

    その新店で私が扱おうずしおいたものも、たさにそうした呌吞だった。ただ肉を売るのではない。ただ刺激を䞊べるのでもない。人ず人ずが向き合うずきに生たれる、矞恥ず誇りのねじれ、芋たいずいう欲望ず芋られたくないずいう恐れのせめぎ合い、呜什ず服埓の仮面の䞋で、実は互いが互いに䟝存しあっおいるずいうあのひどく人間的な倒錯。そうしたものを、私は䞀぀䞀぀「遊戯」ずいう名の噚に移し替えようずしおいた。光を济びる遊戯がある。そこでは、隠すこずが蚱されない。衣服はただの垃ではなく、蚀い蚳であるこずが暎かれる。人は裞になるずき、皮膚だけを露出するのではない。自分が自分であるためにどれほど倚くの芆いを必芁ずしおいたか、その貧しさたで晒しおしたう。照明の䞋に立たされた身䜓は、卑しさず神々しさの境目をひどく曖昧にしながら、震える。肩の線、喉元の圱、䌏せられた目の䞋に差すわずかな青み。そういう些现な陰翳が、時にどんな技巧よりも人を惑わせるこずを、私はよく知っおいた。矎ずは完璧な造圢ではない。逃げ堎を倱ったずき、なおそこに残るもののこずだ。闇に沈む遊戯もある。そこでは芖線が奪われ、その代わりに耳や指先や呌吞が、過剰なほど冎えおくる。芋えないものは、消えるのではない。むしろ茪郭を倱うこずで、かえっお想像のなかで増殖する。暗がりのなかで人は盞手の身䜓そのものより、自分の内郚に巣くう飢えず向き合わされる。どんな声に心が軋むのか、どんな沈黙に恐れを感じるのか、どこたで芋えないたたでいたいのか。闇は隠すための幕ではなく、人間の内奥を逆照射する鏡であった。私は、その鏡の冷たい艶を愛した。さらに私が執着しおいたのは、あらかじめ内容を決め切らない遊戯だった。分数ず察䟡だけを先に眮き、その内偎で䜕が育぀かは、その日、その瞬間、そこに立ち䌚った二人だけが決める。無謀だず人は笑うだろう。責任の所圚が曖昧だず眉をひそめる者もいるだろう。だが私には、それこそが最も莅沢な圢匏に思えた。人は完成された筋曞きに安心する。けれど本圓に深く蚘憶に残る倜ずは、たいおい予定倖の匂いをしおいるものだ。䌚っおから決たるずいうこずは、その堎にいる互いの存圚を、どんな決定事項よりも優先するずいうこずでもある。信頌のない堎所では成立しない。だからこそ、その危うさの䞊にだけ咲く花がある。私はその花に、劙に執着しおいた。

    私自身がたた、そういう人間だった。きちんずした説明だけでは息が詰たる。蚈画曞に収たりきる未来では、どうしおも胞が躍らない。䜕かを始めるたび、私は自分でも呆れるほど、少しず぀予定の倖ぞ倖れおいった。もっず急に。もっず遠くぞ。もっず、人に理解されない圢ぞ。たるで人生そのものを速床超過で走り抜けるこずでしか、自分の茪郭を保おないようなずころがあった。もちろん、その性質は私を䜕床も滑皜にした。真顔で荒唐無皜なこずを蚀う男は、だいたい信甚されない。しかも私は、その荒唐無皜さを恥じるどころか、どこか嬉しそうに育おおしたう節がある。呚囲の者が「冗談だろう」ず思うぎりぎりの線で、私はい぀も本気だった。本気であるこずず、垞識からはみ出すこずが、私のなかではほずんど同矩だった。誰にでも理解される本気など、どこかで既に消費されおいる。理解䞍胜の霧のなかぞ螏み蟌んで、それでもなお自分の熱だけを信じるこず。私にずっおの誠実ずは、そういう危なっかしい䞀点にしか宿らなかった。新店の話をしおいるずきも、私の胞䞭には奇劙な静けさがあった。成功するか倱敗するか、その二択に察する執着が薄いのである。無論、砎綻を望んでいるわけではない。だが結果以䞊に、今この瞬間、自分の内郚で鳎っおいる鐘の音に埓えおいるかどうかのほうが、私には重倧だった。人からどう思われるかずいう尺床は、い぀だっお埌景ぞ退いおいた。非難も評䟡も、私の耳には遠い波の音に過ぎない。それよりも、胞のなかに棲んでいる獣が、今どちらを向いおいるか。その錻先が、どんな匂いを远っおいるか。そのほうがずっず切実で、恐ろしく、そしお矎しかった。私は知っおいた。商売ずいうものが、結局は人の寂しさを扱う営みであるこずを。華やかな看板の䞋で人が買っおいるのは、商品だけではない。そこぞ行けば䜕かが倉わるかもしれないずいう予感、今日より少し違う自分になれるかもしれないずいう淡い期埅、その堎にしかない物語に觊れたいずいう飢え。そうした、蚀葉になりきらない寂しさのかけらを、人は金に換えお差し出しおいる。ならば応える偎もたた、単なる提䟛者では足りない。堎所を売るのではなく、倉容の気配を売らねばならない。私の新しい店は、その意味で、ひどく正盎だった。それは「ここに来れば、あなたの内偎の䜕かが少しずれる」ず告げる店だった。しかも私は、そのずれを、客だけでなく自分自身にも求めおいた。同じこずの繰り返しに耐えられない。昚日ず同じ枩床で息をするくらいなら、少しばかり軋んでも、新しい仕掛けの方ぞ手を䌞ばしたい。そうやっお私は、店のなかにたた店を孕たせる。ひず぀の名が定着しかけるず、その内偎に次の名を滑り蟌たせる。安定ずいう母胎のなかで、次の䞍穏を育おる。たるで平穏そのものが、私にずっおは長く留たるには枅朔すぎる堎所であるかのように。

    けれど、そんな私にも、ずきおり倜の底で蚪れる静かな䞍安はあった。ほんずうに誰か来るのか。この名前は、ただの劄執ではないのか。自分の思い぀きに、自分だけが酔っおいるのではないか。そういう問いは、冬の明け方のように容赊なく、透明な顔をしおやっお来る。私はそのたびに、窓の倖を芋る。ただ誰も歩いおいない通り。癜んだ空。電線にずたった鳥の圱。その無関心な䞖界を前にするず、䞍思議ず救われるのだった。䞖の䞭は、私の䌁おなど知らない。知らないたた朝になり、知らないたた誰かが出勀し、知らないたた別の誰かが恋に砎れる。その圧倒的な無関心のなかでなお、自分だけはこの蚈画を手攟せない。ならば、それは少なくずも本物なのだろうず、私は思う。本物ずは、倚数決で決たるものではない。䞖界が振り向かなくおもなお胞に残る疌きのこずを、人は本物ず呌ぶのではないか。私にずっお新店ずは、たさにそういう疌きだった。金勘定だけでは説明の぀かない、けれど決しお倢想だけでもない、珟実ず劄執のあいだに吊るされた现い橋。その橋を枡るたび、私は少し恐ろしく、少し愉快だった。足を螏み倖せば暗がりぞ萜ちる。だが向こう岞に䜕があるか芋えないからこそ、橋は橋ずしお意味を持぀。やがお私は、その小さな店に名を䞎えた。名を䞎えるずいうこずは、存圚をこの䞖ぞ匕きずり出すこずだ。ただ実䜓の薄いものに茪郭を䞎え、呌び声の届く堎所ぞ眮くこずだ。名は祈りであるず同時に、呪いでもある。䞀床呌んでしたえば、もはや無かったこずにはできない。私はそのこずを知りながら、あえお名を口にした。するず、その瞬間、ただの発想だったものが急に生き物じみおきた。呌ばれた獣が、暗がりの奥でそっず目を開けるように。そのずき私は、自分が店を䜜っおいるのではなく、倜に巣を䜜っおいるのかもしれないず思った。昌の理屈では枬れないものが、倜にはたしかに棲み぀く。理性の顔をした人間の胞の裏偎で、もっず濁った、もっず柔らかなものが身じろぎする。その気配を迎え入れる巣。矞恥も、誇りも、欲望も、孀独も、少しだけ眮いおいける堎所。あるいは逆に、眮いおいったはずのものを、もっず濃い色にしお持ち垰っおしたう堎所。店ずは、そういう倉質のための巣であっおもいい。

    倖では冬が深たっおいった。街は盞倉わらず忙しなく、誰も私の内偎で始たった産声など知らない。だが私には、それでよかった。本圓に倧きなものは、最初はたいおい誰にも聞こえない。それでも確かに鳎っおいる。胎内で脈打぀血のように。耳を柄たせた者だけが気づく、小さく、けれど執拗な錓動ずしお。私は笑った。その笑みには勝利も敗北もなく、ただ劙に静かな艶だけがあった。誰かに理解されるためではない。自分のなかの獣を、今日も芋倱わなかったずいう、それだけの確認。もし䞖界が銖を傟げるなら、それもたたよい。眉をひそめられるたびに、自分がただありきたりの道ぞ屈しおいないず知れる。笑われるたびに、この䌁みがただ生きおいるのだずわかる。そうしお私は、店のなかにたたひず぀店を宿し、倜のなかにたたひず぀灯りを差し蟌む。灯りずいっおも、街路を照らすほどのものではない。ただ、迷っおいる者の胞の奥で、ひそかに䜕かを疌かせる皋床の明るさ。けれど人はずきに、そのかすかな明かりひず぀のためだけに、長い倜を歩いお来る。倧仰な救枈ではなく、名前も぀かぬ衝動を肯定しおくれる気配。そこにしかない空気。そこにしかない枩床。そこにしかない、少しだけ危うく、少しだけ優雅な狂気。冬はなお深たり、朝は盞倉わらず癜々しく蚪れる。それでも私の倜だけは、ただ終わらない。むしろ今、ようやく始たろうずしおいた。既にある堎所の奥、芋慣れた看板の内偎、蚀葉の襞のさらに暗いずころで、新しい名を䞎えられた小さな店が、胎児のように静かに身をよじる。産声はただ现い。だが现いたた、執拗に、確かに、この䞖界のどこかの寂しさぞ向かっお䌞びおいく。そしお私は知っおいる。人が本圓に抗えないのは、敎えられた正しさではない。少しばかり危険で、少しばかり理解䞍胜で、それでいお劙に矎しいものだ。倜の胎内に灯る店ずは、たぶんそういうものなのだ。誰にも祝犏されぬたた生たれ、誰にも説明しきれぬたた育ち、それでもふず気づけば、誰かの人生の片隅に、消えない圱のように棲み぀いおいる。私はその圱を愛した。圱のなかでしか育たぬ花を愛した。正気の顔をしながら、内偎では静かに狂っおいる人間たちの、蚀葉にならない枇きを愛した。だからこそ、私はたた次の倜にも名を䞎えるだろう。たた次の暗がりにも、別の灯をずもすだろう。䞖界が呆れようず、笑おうず、あるいは芋向きもしなかろうず、そんなこずにはもう頓着しない。私に必芁なのは、ただひず぀。この胞の奥で鳎り続ける、速床超過ぎみの錓動に、今日も背を向けなかったずいう事実だけだった。そしおその錓動は、冬の底でなお、矎しく、淫らに、途切れるこずなく続いおいた。



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    欲望ず珟実の亀差。垌望ず珟実の亀錯。混沌ず悲劇ず悊楜が乱雑に織りなす人間暡様。 SMクラブ経営者が綎る倜物語。 著者がSM哲孊、颚俗文化、心理構造を孊ぶ䞭で、 自分の描いた䞖界芳に匕き摺り蟌たれおいく狂気の人間ドラマ。 颚俗教育プログラム🏫暪浜颚俗倧孊開蚭

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