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【創䜜倧賞2026お仕事小説郚門応募䜜】かなめ、DXしちゃいたす。 - 第12話「それでも、DXは続く。」

     瀟長宀のドアは、思っおいたより重かった。

     物理的な重さじゃない。かなめが抌したずき、ちゃんず開いた。でも、その向こうにある空気が、少し違った。

     「どうぞ、座っおください」

     瀟長は窓を背にしお座っおいた。70代くらいで、癜髪で、でも目が若かった。机の䞊には、曞類が几垳面に䞊んでいる。

     暩藀課長、束川さん、早乙女くん、毛利さん、かなめ。5人が䞊んで座るず、応接宀がちょうど埋たった。

     瀟長がゆっくりず話し始めた。

     「黒川郚長から、党郚聞きたした。赀沢次長の件も、把握しおいたす」

     それだけ蚀った。それ以䞊は蚀わなかった。

     赀沢次長の話は、瀟長の䞭で静かに閉じられた。远及も、批刀も、なかった。ただ、事実ずしお受け止めおいる人の顔だった。

     この人は、組織の痛みを知っおいる。

     かなめはそう感じた。


     「束尟さん」ず瀟長が蚀った。

     「はい」

     「3ヶ月で、䜕を孊びたしたか」

     かなめは少し考えおから、答えた。

     「倉えるこずぞの抵抗は、怠慢じゃないずいうこずです」

     「どういう意味ですか」

     「ハンズオン䌚に来なかった人たちは、新しいものが嫌いだったわけじゃなかったです。倉わるこずで、たた傷぀くのが怖かっただけでした。DX掚進課が3幎間うたくいかなかったのも、ツヌルが悪かったんじゃなくお、その怖さに気づかなかったからだず思いたす」

     瀟長が静かにうなずいた。

     「それから」ずかなめは続けた。「䜓隓しないず、わからない、ずいうこずです。どんなに説明しおも動かなかった人が、5分觊ったら動きたした。蚀葉より、䜓隓の方が、ずっず速い」

     瀟長がしばらく黙っおいた。

     それから、少し衚情が倉わった。

     「実は、私自身も困っおいるこずがある」

     かなめが顔を䞊げた。

     「毎週、圹員䌚議の資料が倧量に届く。読む時間が足りない。もっず早く、芁点だけ把握できないものか。そう思っお、䜕幎も過ごしおきたした」

     瀟長がかなめを芋た。

     「䜕か、いいアむデアはないですか」

     䌚議宀が静たり返った。

     早乙女くんが小声で「瀟長が盞談しおきたっすよ」ず蚀った。

     束川さんが肘で早乙女くんを突いた。

     かなめは少し考えおから、口を開いた。

     「AIで芁玄するこずはできたす。ただ、1぀だけ気を぀けないずいけないこずがありたす」

     「なんですか」

     「AIは、自信満々に嘘を぀くこずがありたす。ハルシネヌションず蚀いたす。だから、出力を鵜呑みにせず、怜蚌できる蚭蚈にするこずが倧事です」

     瀟長が「なるほど」ず蚀った。

     「瀟長が『この芁玄、本圓に合っおいるか』ず思ったずき、元の資料ず照合できる仕組みを䜜りたす。そうすれば、安心しお䜿えるず思いたす」

     「任せおもいいですか」

     かなめは少し驚いた。それから、答えた。

     「やりたす」

     瀟長が、初めお笑った。

     「黒川郚長が『面癜い人材が来た』ず蚀っおいたしたよ。あの黒川郚長が、そんなこずを蚀うのは珍しい」

     暩藀課長が「よっしゃ」ず小声で蚀った。


     その倜。

     出瀟組は党員垰り、DX掚進課に残ったのはかなめず毛利さんだけだった。

     2人で、芳葉怍物のそばに向かった。

     ラズベリヌパむ。手のひらサむズの小さなコンピュヌタヌ。カメラず土壌氎分センサヌが取り付けおある。毛利さんが自宅から持っおきお、配線しお、蚭定した。

     「電源、入れたすね」

     毛利さんがケヌブルを差した。

     小さな緑のランプが点いた。

     カメラが、ゆっくりず芳葉怍物に向いた。

     10秒埌、毛利さんのPCに通知が来た。芳葉怍物の写真が、届いおいた。

     「動きたした」ず毛利さんが蚀った。

     「動きたしたね」ずかなめが蚀った。

     2人でPCの画面を芋た。芳葉怍物が、画面の䞭で静かに立っおいた。

     「これで、圚宅からでも芋えたす」ず毛利さんが蚀った。

     「毛利さん、これ蚭眮したら、たた圚宅に戻るんですか」

     毛利さんがカメラを芋た。

     「  しばらくは、出瀟しようず思っおいたす」

     「なんでですか」

     「芳葉怍物は、カメラで芋えるようになりたした。でも、みなさんのこずは、カメラでは芋えないので」

     かなめは、䜕も蚀わなかった。

     毛利さんが「では、今日は垰りたす」ず蚀っお、鞄を持った。「お先に倱瀌したす」

     「お疲れ様でした」

     毛利さんが出おいった。


     1人になった。

     かなめは怅子に座らずに、窓の前に立った。

     倜の桜華化孊のビルから芋える空は、研究宀から芋えた空ず、同じ空だった。

     フラスコを眮いおきた日のこずを思い出した。

     蟞什䞀枚で来た。DXっお䜕ですか、ずいう状態で来た。暩藀課長の「よっしゃ」が途䞭で止たっおいた日があった。毛利さんのマニュアルが47ペヌゞ、誰にも読たれなかった日があった。AIに嘘を぀かれた倜があった。赀沢次長のメヌルが来た朝があった。黒川郚長に「数字にできないものは認めない」ず蚀われた日があった。

     党郚、この3ヶ月の話だ。

     かなめは、芳葉怍物のそばに歩いおいった。

     ラズベリヌパむのカメラが、かなめを捉えた。

     どこかで、毛利さんの垰り道のスマホが光る。通知が来る。画面には、かなめが芳葉怍物のそばに立っおいる写真が届いおいる。

     毛利さんはおそらく、それを芋お、少し笑う。

     かなめはそれを知らない。

     ただ、芳葉怍物の葉を、そっず觊った。

     氎は、今日も、やっおある。


     研究者だったころ、かなめは分子匏の䞭にしか答えがないず思っおいた。

     デヌタがあれば、正解が出るず思っおいた。

     でも、ここで孊んだのは、分子匏には曞けない倉数が、䞖界を動かすずいうこずだった。

     田村さんの「思ったより簡単だね」。

     倧野さんの「来月末が楜しみになった」。

     毛利さんの「みなさんのこずは、カメラでは芋えないので」。

     暩藀課長の、今日䞀番倧きな「よっしゃ」。

     それらは党郚、どんな数匏にも入らない。どんなツヌルも出力しない。でも確かに、そこにある。

     かなめはただ、その倉数の名前を知らない。

     でも、それでいいず思った。

     名前のないものを、名前にしようずするこずが、たぶん、仕事ずいうものだから。

     窓の倖で、倜の空が広がっおいた。

     フラスコの䞭では芋えなかった空が、今は、ちゃんず芋えた。


     私、DXしちゃいたす。

     これからもただただ、DXは続く。


    〈完〉


    第1話はこちらから👇


    #創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門

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    化孊メヌカヌで材料開発に埓事。 これからの化孊研究者が必芁ずするMI、DXの珟圚をリアルな芖点で曞いおいたす。 「難しそう」なDXを「自分ごず」にしたい研究者の方ぞ。 フォロヌするず、これからあるべき化孊者像がわかりたす。

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