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湘南江の島駅|空に浮かぶモノレールで、大船までの短い非日常を楽しむ

     江ノ電の江ノ島駅から歩いて、ほんの一分もかからない。

     すぐそこに、湘南江の島駅がある。

     距離は近い。
     それなのに、空気はまったく違う。

     目の前にあるのは、駅というよりもビルだ。
     駅ビルのようでもあり、そうでもない。

     少し曖昧な存在。

     中に入って、エスカレーターに乗る。
     上へ、上へと運ばれていく。

     改札にたどり着いたとき、ようやく駅らしい形になる。
     自動改札、案内表示、ホームへの導線。

     ただ、その先が少し違う。

     ホームに出ると、視界が開ける。
     地面から離れた場所に、線路がある。

     どこか、観覧車の乗り場のような感覚に近い。
     乗り物に乗るというより、少しだけ“浮く”ための場所。

     やがて、モノレールがやってくる。

     湘南モノレールの車両は、ピンクリボンのデザインだった。
     やわらかい色が、この場所によく合っている。

     少しだけ、ワクワクする。

     ドアが開き、乗り込む。

     中は思っていたよりも電車に近い。
     座席の配置も、つり革も、特別変わっているわけではない。

     それでも、何かが違う。

     視線の高さだ。

     窓の外に見える景色が、少し上からの角度になっている。
     住宅の屋根や、ベランダの内側が目に入る。

     人の生活が、少しだけ別の角度から見える。

     この高さで暮らすことはないのに、
     その一部を覗いているような感覚になる。

     モノレールは、軽やかに進む。

     揺れも少なく、速度も速すぎない。
     浮いたまま、滑るように進んでいく。

     アナウンスが流れる。

     聞きなれない駅名が続く。
     ひとつひとつ覚える前に、次へ進んでいく。

     時間の流れも、どこか軽い。

     あっという間に、景色が変わる。

     この非日常は、長く続かない。

     だからこそ、ちょうどいいのかもしれない。

     やがて、大船駅に到着する。

     ホームに降りると、足元の感覚が戻ってくる。
     地面に接しているという、ごく普通の状態。

     さっきまでの浮遊感が、少しだけ遠ざかる。

     改札の方へ歩きながら、ふと思う。

     あとで、コーヒーを飲みたくなった。

     理由はよく分からない。

     ただ、あの短い時間のあとには、
     何かひとつ、現実に戻るためのきっかけが必要なのかもしれない。

     そのくらいが、ちょうどいい余韻だった。

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    大船観音寺


     
     
    首都圏の駅を起点に、 まちを歩き、喫茶店に入り、 コーヒーを飲む。 少し立ち止まる。 散歩の途中で浮かんだことを、 短編小説として書いています。 静かな午後の話が多めです。 コーヒーはブラックが多いが、 時々ミルクも入れます。

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