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「かぐや2026」 脚本 〜かぐや姫は男だった?〜

    <かぐや姫は、男だった?>

    <千年ぶりに月から戻った彼女は、誰よりも男らしく、誰よりも不器用だった。そして、女々しかったひとりの男は、彼女を守るために声を上げる。

    人は、自分の中の逆側の性質に出会ったとき、本来の自分に戻る。

    これは、現代東京に降り立ったかぐや姫が、失った感情と“人間として生きる意味”を取り戻す物語>


    ◯東京タワー
    太陽が照りつける東京タワー。

    ◯公園
    色とりどりの紫陽花が咲いている。

    ◯銀座
    ビルが立ち並ぶ華やかな街。しかし、街の中は暑さで、アスファルトが蜃気楼のように揺れている。
    高層ビルの間を歩く人々が、次々と汗を拭う。

    ◯同・道路
    そんな中、ゴゴゴと地面から低い音がうねりだし、歩道に突然亀裂が走る。地鳴りと共に道路が大きく波打ち、自転車や歩行者が悲鳴を上げながら転倒する。
     ×   ×   ×
    亀裂からは、熱気混じりの蒸気がゆらゆらと吹き出している。

    ◯車の中
    高村タクミ(28)が車を運転している。ラジオから突然のニュースが流れてくる。
    (ニュースキャスターの声・ラジオ)
    「速報です」
    高村は釣られて、ラジオのボリュームを大きくする。
    「東京都心を中心に、全国各所で未確認の地殻変動が発生。温泉成分を含む高温の水蒸気が各地で噴き出しており……」
    高村「どういうこと……?」
    高村は、車を飛ばした。

    ◯芝神埠頭
    都心にある東京湾沿岸。

    ◯古びた低層ビル

    ◯同・扉
    扉の看板に「NPO法人 SIBAJIN」と書いてある。

    ◯同・内
    クラシカルでモダンな室内。応接用のミニソファーにコーヒーテーブル。
    仕切りの向こうには、席が6つの島を成している。
    室内にはいくつかのモニター用のテレビ画面が置かれてあり、その一つにニュースが流れている。小野寺美生(24)が食い入るようにしてニュースを見ている。
     ×   ×   ×
    (テレビ映像)
    九州の阿蘇山が火口から大きな噴煙を上げている。火山灰が一気に上空へ立ち昇り、周囲の空は真昼でも暗くなる。家屋の屋根には灰が積もり、人々はマスクを付けて右往左往している。
     ×   ×   ×
    そこへ高村が慌ててドアを開けて飛び込んでくる。
    高村「日本がやばい!」
    振り返る美生。
    美生「タクミさん!」
    高村「どうしたら……」
    焦る高村。

    ◯(テレビ映像)富士山
    空がグレーで、不穏な空気を醸し出している富士山。

    ◯(テレビ映像)静岡・富士山麓の小さな村
    地中から響く鈍い音が止まらない。
    地面はひび割れ、田畑はひどく乾き、稲は茶色く変色していた。
    村の古老が小さな祠の前で必死に祈っている。
    村の古老「(嗚咽交じり)どうか……どうかお鎮まりください……。龍神さま……」
     ×   ×   ×
    その背後で、祠の地面にまで細かい亀裂が走り、賽銭箱がカタカタと揺れる。

    ◯(テレビ映像)岩手県厳美渓
    荒れ狂う岩手の海。

    ◯(テレビ映像)岩手の海岸
    漁師たちは、漁に出た船を心配そうに見つめている。
    海の色は青から不気味な深緑へ変わり、ところどころ泡が立ち昇る。
    時折、魚の死骸が大量に浮かび上がり、波に押し戻されて浜に打ち上げられる。

    ◯「NPO法人 SIBAJIN」室内
    高村と美生は、固唾を呑みながら、コーヒーカップを片手にテレビ画面を見つめている。その画面を見ながら、高村の手が震えている。
    美生「タクミさん……」
    高村「あ(焦)、だ、大丈夫だよ。こんなこと、僕がここに来て初めてだから」
    高村は手の震えを止めようと、もう片方の手で押さえる。

    ◯東京(夜)
    夜になっても気温は下がらず、都市は赤く光っている。ビルの屋上ではクーリングタワーから蒸気が大量に吹き上がり、街はまるで大鍋の中のようだ。

    ◯東京の繁華街(夜)
    ビル群の谷間で、女子高生とその友人が足早に家路に向かう。女子高生が突然立ち止まる。目を閉じ、耳を澄ます。
    女子高生「(小声で)……鳴いてる。地面の下で……誰かが泣いてる……」
    その友人「え、なに? やめてよ、気味悪い」
    女子高生「もうすぐ、もっと大きな声で呻きだす……」
    女子高生の瞳にうっすら涙が浮かび、空を見上げる。
    夜空の月は異様に大きく、赤みがかって見えている。

    ◯月(夜)
    大きな赤みがかった月。

    ◯月面・内・神殿広間(夜)
    月の内側。ギリシャ神話に出てきそうな神殿の広間。
    白銀のロングヘアーに淡い金色の瞳をした、かぐや(かぐや姫)が巨大な地球投影ホログラムの前に男らしく立っている。
    日本列島だけが赤く脈動し、心臓のように波打って見える。
    (かぐや・心の声)
    「なんだ……。この胸の奥底のざわめきは……」
    かぐやの瞳から、ひと粒の涙が零れ落ちる。
    かぐや「なんなんだ。この涙は」
    その涙をサッと拭うかぐや。
     ×   ×   ×
    背後から陽気な口笛が響く。かぐやが振り返ると、龍が姿を現した。
    長い身体を軽くうねらせながら、神殿の柱に寄りかかっている。
    龍の鱗は透明で、月光を浴びると虹色に輝き、その瞳は知性の光を宿しながらも、どこか茶目っ気があった。
    龍「(ニヤリと笑い)おやおや、また随分とおセンチやん。千年ぶりに日本を思い出したん?」
    かぐや「なんだと!」
    龍は嬉しそうに尾ヒレを揺らす。
    かぐや「ん? 日本? 日本とは?」
    やばい!と思って龍は、慌てて口を塞いで、モゴモゴする。
    かぐや「ははーん。言わないつもりか?また封印するぞ?(ニヤリ)」
    龍「堪忍してえな!」
    急に真顔でホログラムを見つめるかぐや。日本を指差し、
    かぐや「あの、赤く鼓動している国。あそこに呼ばれている気がするんだ。わからないけれど。でも、どうしても行かなければいけない気がする」
    龍「また封印されたら、姫、解除してや」
    龍は目を瞑り、かぐやへテレパシーを送る素振りをする。
     ×   ×   ×
    かぐや姫の走馬灯映像。
     ×   ×   ×
    かぐや「(思い出したように)そうだったのか。私を救ってくれたお爺さんとお婆さん……。それから……」
    龍「それから?」
    かぐや「とても女の子だな、ボク」
    思い切り笑う龍。
    龍「いやいやいや! 姫ですやん!」

    ◯東京湾沖(夜)
    酷く荒れている東京湾。風も強い。

    ◯東京湾沿岸・陸地(夜)
    環境NPOのジャンパーを着た高村と美生が、強い風に抵抗しながら歩いている。
    細い高村は飛ばされそうだ。
    高村は手に双眼鏡を、美生はタブレットを落とさないように握り締めている。
    高村「大丈夫?」
    美生「タクミさんこそ、飛ばされないでくださいね」
    立ち止まる高村と美生。
    高村「このあたりの地盤って、アレの近くだよね」
    美生「はい。地下からものすごいエネルギー反応が出ています。こんな波動は初めてです」
    高村「一ヶ所からだけ?」
    美生「そうですね。他のところから反応はありません。ここだけが異常値を示しています」
    考え込む高村。

    ◯月面・内・神殿広間(夜)
    地球ホログラムを見つめている、かぐや。
    かぐや「(小声で)これは、放っておけない」
    アイコスを吸いながら、窓の外の宇宙を眺めている龍。
    龍「ワシは封印解かれたばっかりやから、ちょいと旅行に金星行きますねん」
    かぐや「金星?」
    龍「ヴィーナス拝みに行きたいねん!」
    嬉しそうな龍。
    かぐや「いやいや。働いて?」
    龍「ええ!嫌だ嫌だ」
    かぐや「しかし、なんであんなに赤く脈打っているのか……」
    龍「(真剣な口調で)アレは、地下に眠る龍脈やないかと」
    かぐや「龍脈?随分と昔に封印したはずだが?」
    龍「蓄積された人間の意識の歪みなんかな?」
    かぐや「時代が人を変えるのか?人が時代を変えるのか?」
    龍「また!始まった!哲学美学ええと……」
    スリッパで龍をこづく、かぐや。
    かぐや「決めた!行くよ」
    龍「ええええ〜!ヴィーナス様がぁ」
    龍を見て、嬉しそうな、かぐや。
     ×   ×   ×
    その時、ホログラムから低い声が発せられる。
    ホログラム「お前たち。月の掟はわかっておるのか」
    かぐや「わからんけど、あとで龍に聞いておく」
    ホログラム「月の掟を破ったものは、命と引き換えになるぞ」
    かぐや「それでも……それでも、私は行かなければならない」
    ホログラム「もうここへは帰って来れぬかもしれんぞ」
    かぐや「……」
    龍「姫……」
    ホログラム「わかっ……」
    言葉の途中で、ピー、ヒャララ、ピーと画面が落ちてしまう。
     ×   ×   ×
    かぐやと龍は、強い眼差しで見つめ合う。
    神殿の床が静かに開き、純白の光が吹き上がる。その中央にかぐやと龍が並び立つ。
    龍「姫、ほんなら、行くで!」
    光が強く瞬き、二人の身体を包み込む。龍は最後に片目をウインクさせてから、かぐやと共に日本へ向けて飛び立つ。

    ◯宇宙空間
    青く輝く地球が眼前に迫る。大きな龍は風を切るように自在に身体を揺らしながら進み、かぐやは龍の首元に手を置き、背中に乗っている。その顔には決意があらわれている。
    かぐや「(心の声)日本を守る」
    地球の大気圏に突入した二人。
    炎を纏いながら夜空を疾走する。

    ◯東京都内
    地面は所々にヒビが入り、熱気が未だ続く。街にはパトカーが走り回り、異常事態の注意喚起のアナウンスをしている。
    スーツ姿のビジネスマンは忙しく行き交う。
    (街を日没まで早送り)

    ◯東京上空(夜)
    雲がかかって月が見えない空。
    嵐の前触れのように、ひっそりとして静かである。突如、上空に炎を纏いながら疾走する、巨大な流星のようなものが横切る。

    ◯東京湾が見える広場(夜)
    ホテルや商業施設が立ち並ぶエリア。
    オープンテラスを片付けているスタッフ2〜3名。
    その時、東京湾へ大きな流れ星のようなものがよぎり、瞬間、夜空が明るくなる。
    スタッフ1「何あれ……流れ星?」
    スタッフ2「いや……落ちてくるぞ!」

    ◯東京湾沖(夜)
    暗闇に轟音が響く。海面が大きく盛り上がり、白い柱のような水飛沫が立ち上がる。

    ◯同・水面(夜)
    水煙の中から、かぐやと龍が姿を現す。
    龍は水を吐きながらゲホゲホしている。
    龍「ぷはっ!日本の海は、しょっぱいなぁ」
    それを笑いながら見ている、かぐや。
    かぐや「このままの姿じゃまずいな」
    龍「ほんまや。姫もその髪色は……」
    かぐや「だな!」
    かぐや・龍「ドロン!」

    ◯高台(夜)
    光の煙に包まれるかぐやと龍。
    煙が消えると、かぐやは黒髪の白い洋服に、龍は小さな翼の生えたスマートな青年の姿に。
    童顔なフェイスに、瞳はどこか底知れない神威を感じさせる。
    かぐや「わ!とても女性になってしまった」
    龍「姫、かわいいやん」
    かぐや「うるさい!敵を欺くにはこれくらいがちょうどいい。お前、小さい翼がまだ残っているぞ」
    龍「これでも、頑張ってん(笑)」

    ◯首相官邸・地下特別対策会議室(夜)
    首相、防衛庁幹部、内閣官房、科学技術庁、宇宙開発機構の面々が集まっている。室長の結城なな(34)もいる。
    スクリーンには、東京湾沖に墜落した“炎の発光体”の映像と、その周辺で観測された異常なエネルギー波形。
    防衛庁幹部「これは隕石でも気象現象でもありません。明確な軌道を持ち、減速して着水しています。つまり、意思がある飛来体です」
    科学技術庁「波動の周波数が、過去に観測された“月面構造体”と一致しています。おそらく、月由来の存在……」
    首相「異星生命体、ということか?」
    内閣官房「テレビ関連は報道規制下に置いていますが、SNSではそれができないため、情報がすでに先走っています。“月の姫”と呼ばれ始めたようです」
    なな「(心の声)月の姫……」
    防衛庁幹部「我々としては、状況によっては排除措置も視野に入れ……」
    首相「待て。“敵”と断ずるにはまだ早い。まずは情報を集めろ。接触の手段は?」
    宇宙機構「今のところ、地上での痕跡から追跡するしかありません。結城、ドローンを使って追ってくれ」
    なな「はい!」
    モニターに映る、かぐやと龍の姿を、訝しげに見つめている。

    ◯東京の夜景が見える高台(夜)
    東京の様子を伺っている、かぐやと龍。
    龍「姫がいた頃とは随分と変わってしまった。竹林みたいな高層ビルに、それに比べて人間は小さくて忙しそうや」
    かぐや「そうだな……。時代の力は恐ろしい。未来に向かうのは仕方ないけれど、一体どうなっているんだ?……」
     ×   ×   ×
    風が吹き抜ける。
    街の灯りが一瞬揺らめき、地面から鈍い低音が伝わってくる。
    かぐや「ああ、龍脈の唸りだ。時間が近づいているかもしれない」
    龍「このままやったら、数日以内。東京はやばいな……」
    かぐや「だから僕たちが来たんだ」
     ×   ×   ×
    ビル街の向こうからサイレンの音が連続して聞こえる。
    パトカーや救急車が次々に通り過ぎ、空には報道ヘリが旋回していた。
    遠くからでも見える大きな街頭ビジョンには「地下水脈の異常噴出」「地盤沈下区域拡大」といったニューステロップが流れている。
    ×   ×   ×
    龍「人間は便利になったくせに、相変わらず災害には弱いな」
    かぐや「自然災害は人の意識と繋がっておる」
    龍「そうや、人間に会うのは千年ぶりやろ? 緊張したらあかんで」
    かぐやの背中を叩く龍。
    かぐや「痛っ!」
     ×   ×   ×
    ふいに下の道から人影が現れる。環境NPOのジャンパーを着た高村が、双眼鏡を手にヨロヨロと歩いてきた。
    かぐや「あいつ、ヨロヨロじゃねえか……」
    ドキン。
    急にかぐやの心臓が高まる。
    胸を押さえる、かぐや。
    龍「どうしたん?」
    かぐや「(胸を押さえながら)痛いぞ……」
     ×   ×   ×
    その時、足元の地面が揺れる。高村が転げ落ちそうになる。
    それを上から見ていた、かぐやと龍。
    かぐや「危ない!」

    ◯東京湾沿岸・陸地(夜)
    かぐやが、一瞬の光の速さで、転倒しそうな高村の腕を引っ張り上げる。
    高村「うわっ! すみません」
    目の前に現れた、かぐやに驚く。
    ドキン。
    また、かぐやの心が波打つ。
    我に返ったかのように、かぐやの腕をほどいて立ち上がる高村。
    高村「ありがとうございます」
     ×   ×   ×
    かぐやの後ろから、ひょこっ、と顔を出す龍。
    龍「危なかったな!」
    突然現れたタメ口の龍に、唖然とする高村。
    高村「今、この辺りはとても危険ですので、早く避難してください」
    かぐや「僕たちは、ここを救いにやって来たんだ」
    高村「救いに?」
    (心の声)高村「何を言ってるんだろう?」
    龍はニカッと笑い、
    龍「あっ!今、おいらたちのこと、何言うとんねん?とか思った?」
    咄嗟に目を逸らす高村。
    龍「ってか、おまえさんこそ何やってるんや?避難せなあかんやん」
    高村「僕はこの辺りの地盤を調べる仕事をしているんです」
    かぐや「地盤?」
    龍「ちょうどええやん。それやったら現場を案内してくれへん?」
    高村「現場を?な、何故ですか?」
    かぐや「僕たちは、今、日本に来たばかりで右も左もわからない。ぜひ、お願いしたい」
    高村「僕たち?来たばかり???」
    龍「とりあえず、腹ごしらえさせて! お腹減ったわ」
    高村「えええぇ(汗)」
    高村と龍を見て笑う、かぐや。

    ◯東京・都内(夜)
    夜の東京。非常線はより厳重になり、パトカーが忙しなく街角を走る。

    ◯同・居酒屋(夜)
    人もまばらな店内。
    高村とかぐやと龍がテーブル席に座っている。
    テーブルの上には、焼き鳥やサラダ、おにぎり、ビール、おつまみなどが並ぶ。
    高村「適当に頼みました。何がお好きかわからないので」
    かぐや、ビールを手に取り、
    かぐや「この泡泡した黄金色のやつはなんだ?」
    高村「あ、それはビールと言いまして、アルコールです。イケる口ですか?」
    龍「ようわからんけど、美味しそうやから飲んでみよう」
    グビグビとビールを飲む龍。
    それを驚いた顔で見る、かぐやと高村。
    プハーッと、一気に飲み干す龍。
    龍「姫!これうまいでっせ!こんなん飲んだことないわ。金星より日本にしてよかったかも」
    高村「(小声で)乾杯がまだなのに」
    かぐや「そうか!じゃ、僕も」
    グビグビとビールを飲む、かぐや。
    その隣で、食べ物をバクバク食べる龍。
    高村「よっぽどお腹空いていたんですね」
    ちびちびビールを飲みながら、焼き鳥をちびちびか弱く食べている高村。
    (心の声)高村「姫とか金星とかよくわからないけど、楽しい人たちだな」
    プハーッと飲み干す、かぐや。
    かぐや「おおっ。こんなものは飲んだ…こと……ない……」
    その瞬間、かぐやはドーンと席から転げ落ち、意識を失った。
    高村「えっ!」
    龍「姫!大丈夫か!」
    真っ赤な顔をして気を失っている、かぐや。

    ◯芝神埠頭
    穏やかでお天気の東京湾。

    ◯古びた低層ビル

    ◯同・「NPO法人 SIBAJIN」・内
    ソファーで眠っている、かぐや。
    コーヒーテーブルの下の床に転がって眠っている龍。
    コーヒーを淹れている高村。
     ×   ×   ×
    パッと目を開けるかぐや。
     ×   ×   ×
    かぐやの目に映る天井。
     ×   ×   ×
    飛び起きる、かぐや。
    かぐや「わ!ここはいったいどこだ?」
     ×   ×   ×
    高村が振り返る。
    高村「あ、起きましたか?」
    高村がカップにコーヒーを注ぎ、テーブルに持って行く。
     ×   ×   ×
    テーブルの足元に寝転がっている龍につまずく。
    龍「痛いっ!」
    高村「わわっ、こんなところに」
    バランスを崩しながらも、コーヒーをとりあえずテーブルに置いた。
    龍「何しますのや」
    起きたかぐやに気づいた龍は、かぐやにハグをする。
    龍「ああ……姫!ご無事で何より!」
    かぐや「やめろ!気持ち悪い」
    龍「あんな顔の赤い姫は、初めて見たから心配で心配で」
    かぐや「顔が赤い?」
    高村「覚えてませんか?」
    かぐや「ああ」
    高村「昨日、ビールを一気飲みして、一瞬で倒れました(笑)」
    かぐや「ビール?」
    龍「でも、あれはうまかったな〜。姫はビールが合わんのやな」
    かぐや「黄金色の泡泡な!」
    高村「黄金色の泡泡(笑)」
    龍「日本の料理もなかなかのもんやったわ。食べ損なったな」
    かぐや「くそ!」
    高村「また行きましょ(笑)」

    ◯東京湾が見える広場
    ファミリーやカップルが楽しんでいる姿。

    ◯「NPO法人 SIBAJIN」・内
    窓際に立ち、外を見ているかぐや。
    テーブルの上を片付けている高村。
    ストレッチしている龍。
    かぐや「今日は比較的落ち着いているな」
    窓際に来る高村。
    ストレッチをやめて窓際に来る龍。
    高村「ええ。本来なら、こんなにもここは美しいのです」
    龍「ほんまやな」
    かぐや「このやけに静かなのが、反対に気になるが……」
    高村「あの。昨日、ここを救いに来たって言っていましたよね?」
    龍「おう!」
    と言って、背中の小さな翼を見せる。
    高村は驚きながらも、それに触る。
    高村「改めましてなのですが。ぼ、僕は、高村タクミです。あなたたちは?」
    かぐや「私はかぐやだ」
    龍「俺は龍。そのまんま」
    高村「かぐやに、龍……。まるでかぐや姫みたいですね」
    龍「ビンゴ!」
    高村「え?」
    まさか、という顔をする高村。
    ガハハと笑う、かぐや。
     ×   ×   ×
    その時、バタンと音がして美生が入って来る。
    美生「タクミさ……ん?」
    かぐやと龍を見て、誰?というような顔をしている。
     ×   ×   ×
    高村「美生さん、紹介するね。昨日、僕を助けてくれた、かぐやさんと龍くん」
    かぐや「うす」
    龍「ちわ」
    美生「助けられた?」
    龍「反対にワシらも助けられたんやけどな」
    美生「???」
    高村「まあ、そのうち……話しますから」
    かぐや「今は悠長なこと話している暇はない」
    高村「あ、そうだね(汗。かぐやと龍に向かって)僕は普段、ここを拠点にして、地質データの解析や災害対応の調査を行っています。で」
    続きを話して、と美生に振る高村。
    美生「数日前から地下水の異常や地熱の突発的上昇があり……」
    龍「こうしてはいられん。はよ、見に行かな」
    かぐや「そうだな。おそらくこれは物理的な問題じゃない……」
    高村「物理的ではない!?」
    龍「そやな」
    高村「とりあえず美生さんはここで待機していて」
    美生「はい……」

    ◯東京都内・道
    あたりを見まわしながら、ゆっくりと歩くかぐやと高村と龍。
    かぐや「結構被害が出ているな」
    高村「ここら辺は昨日より被害が進行しているかもしれません」
    キョロキョロしながら辺りを見回す龍。
     ×   ×   ×
    その時、頭上を軍用ドローンが低空で旋回し、機関音が地面を震わせる。
    かぐやと高村と龍の頭上を光学スキャナが走り抜け、かぐやの姿を捉えると、赤い警告サインが瞬いた。
    (無線・機械音声)
    「ターゲットハッケン。ゲツメンセイメイタイハンノウカクニン。シレイホンブヘホウコク」
    ドローンを見上げる、かぐやと高村と龍。

    ◯首相官邸・地下特別対策会議室別室
    モニターが並んだ室内。一番大きなスクリーンに、かぐやと高村と龍の三人がドローンによって映し出されている。
    それを、ななが見つめている。
    なな「何、この細っこいの。背中に羽があるんだけど?仮装かよ」
    スクリーンを映し出しているドローンから、機械音で「ウチマスカ?ウチマスカ?」
    なな「ダメ。生かして捕獲。追跡せよ!」
    (ドローン)
    「カシコマリマシタ」
    なな「出動準備!私たちも追うわよ」

    ◯東京・都内・道
    ドローンの登場に焦る、かぐやと高村と龍。
    その時、高村が思い出したように、
    高村「もしかして、東京湾に落ちたのって、あなたたちですか?」
    かぐや「です」
    龍「です。です」
    高村「あれは、政府の軍用ドローンのようです。まさか?」
    龍「月から来たんや。ビンゴって、さっき言うたやん」
    驚愕する高村。
    近づいてくるドローン。
    高村「走って!こっちです!」
    ダッシュする、かぐやと高村と龍。

    ◯東京タワーの足元
    そびえ立つ東京タワー。

    ◯同・地下・内
    高村とかぐやと龍が、転がるようにして駆け込んでくる。
    息が上がっている。
    そこへ座り込む。
     ×   ×   ×
    高村「東京タワーの下なら、手出しはできないはずです」
    龍「女っぽいけど、頭はええな」
    かぐや「ったく、なんだ?ありゃ?文明の力はすごいな」

    ◯東京タワー・地上
    軍用ドローンが旋回している。

    ◯同・地下・内
    かぐやと高村と龍が座っている。
    息は落ち着いている。
    高村「そういえば、さっきのかぐや姫の話ですけど……」
    かぐや「なんだ?」
    高村「昔、おばあちゃんがよくする話がありまして。そのお話が僕は大好きで……」
    龍「短めにな」
    その言葉に笑う、かぐや。
    高村「かぐや姫に出てくる翁と媼は、ご先祖様なんだって、おばあちゃんがよく自慢していて」
     ×   ×   ×
    ドキン。
    この時、またもやかぐやの胸が波打つ。
    胸を押さえる。
    高村「大丈夫ですか?気分悪いですか?」
    かぐや「この胸のサインは、そういうこと?」
    龍「まさかやん!」
    高村「???」
    かぐや「キミの祖先の翁と媼に、僕は命を救われたみたいだ」
    困惑する高村。
    高村に龍は、まあまあ聞いて?という仕草をする。
     ×   ×   ×
    かぐやは、高村の手を両手で包み込む。
    高村の頭に光が流れ込む。

    ◯(回想)竹林(夜)

    ◯満月(夜)
    かぐや(かぐや姫)が竹から生まれてきたこと。翁と媼に育ててもらったこと。
     ×   ×   ×
    翁と媼とかぐや姫(かぐや)が、涙しながら別れを惜しんでいる。
     ×   ×   ×
    そして、かぐや姫が月へと光の舟で向かう。

    ◯(回想終わり)元の東京タワー・地下・内
    高村が震えながら、かぐやと龍を見つめている。
    高村「これって……?」
    かぐや「僕がかつて日本にいた時の記録。そしてキミの家系の記憶」
    高村「本当にかぐや姫なのですか!?」
    かぐや「ああ」
    かぐやをじっと見つめる高村。
    かぐや「なんなんだ……(汗)」
    高村「今は、随分とイメージが(笑)」
    龍「アンちゃん!言うこと言うやん(笑)」
    かぐや「僕は月に帰り、記憶と感情がなくなった。気がつけば、こうだ」
    龍「一応、姫やねんで、コレでも(笑)」
    かぐやは、手から光線を出して、龍の口を封じる。
    高村「いやあ、僕も外見は男に見えますが、中身は女々しくて……」
    龍「ぷはぁ(口を自分で解除)男にしたろか?(笑)」
    またもや、かぐやは手から光線を出して、龍の口を封じる。
    ジタバタしている龍。
    その龍を見て、笑うかぐやと高村。
    高村「日本はどうして、こんなことになってしまったのでしょう?」
    龍「ワシらは、民の意識とふんどる」
    高村「意識?」
    かぐや「人間の滑稽な欲望が陰となり、増大した。その意識がエネルギーとなり……。封印されたはずの黒い龍を蘇らせてしまった」
    龍「日本だけじゃなく、世界中でこうなっとる。自分の欲ばっかり得ようとするからこうなる」
    高村「そんなこと……。オカルトの世界の話だとばかり思っていました」
    かぐや「大切なことは目に見えない。全ては陰陽で繋がっている」
     ×   ×   ×
    いきなりグランと建物が揺れる。
    バランスを崩す、かぐやと高村と龍。
    高村「地下がまた動き出しました!」
    龍「ついに本格的になってきたか!」
    かぐや「とにかく急いで龍脈の根源を探そう」
    高村「政府のドローンに見つかる可能性があるので、車を呼びます。現地まではその方が早いです」
    龍「アンちゃん、やるやん」
    動き出す、高村とかぐやと龍。

    ◯東京タワー・地上・道(夕)
    上空のはるかには、数機の軍用ドローンがいる。
    走っている高村とかぐやと龍。
    ワゴン車が急に停まり、中から美生が叫ぶ。
    美生「タクミさん!みなさん!早く乗って!」
     ×   ×   ×
    ワゴン車に乗り込む、かぐやと高村と龍。
    美生「しっかりと捕まってください!飛ばしますよ!」
     ×   ×   ×
    急発進する勢いにバランスを崩す、高村とかぐやと龍。
    ガンガンに車を飛ばす美生。
    龍「イカす〜」
    背後からの追跡を気にする高村。
     ×   ×   ×
    その時、軍用ドローンがワゴン車にギリギリまで近づいてきた。
    美生「きゃあ!何これ!」
    かぐや「構わず、走れ!」
    オロオロしている高村。
     ×   ×   ×
    軍用ドローンが数機、背後や横にベタ付きになる。光学スキャナが、かぐやの姿を捉えると、赤い警告サインが瞬く。
    (無線・機械音声)
    「ターゲットハッケン。ターゲットハッケン。ゲツメンセイメイタイハンノウカクニン。シレイホンブヘホウコク」
     ×   ×   ×
    ドローンがワゴン車を小突き出した。
    美生「ひー!」
    かぐや「大丈夫!行け!」
    高村「ついに、見つかってしまいました」
    龍「龍脈を見つけるには、どのみち隠れても無駄や」

    ◯東京湾コンテナヤード(夜)
    月光が、濁った海面を照らす。
     ×   ×   ×
    無数のコンテナの間を、かぐやと高村と龍と美生が息を切らせて走る。
    かぐやの顔は青ざめ、脚が何度ももつれそうになる。
    かぐや「(苦しそうに)悪い。どうも体が思うように動かない」
    高村「もう少しで船着場です。そこに行けば下に潜れる場所があります!」
    何度もよろける、かぐやを抱き抱える高村。
    かぐやは、その高村の胸に何故か安堵感を抱く。
    龍「姫は、言うても月の人……」
     ×   ×   ×
    コンテナの上で、数個の赤い光点がまたたく。
    政府の追跡軍用ドローンに次いで装甲車両が現れ、その後部から黒服の部隊が展開する。指揮を執るのは、ゴーグル越しに目を光らせた、ななだった。
     ×   ×   ×
    ななは、無線で、
    なな「全班、目標を包囲せよ。発砲許可は私が下す」
     ×   ×   ×
    高村は、かぐやを庇いながら後ずさる。
    高村「大丈夫ですか?」
    かぐや「すまない」
    龍「やれやれ、随分なお出迎えやん」
    黒い部隊の一人が、龍を射程範囲に入れ、銃を構えて狙っている。
     ×   ×   ×
    なな「ひ弱な龍神もどきめ」
    龍「イケメンのわしに対して、たいそうな口ぶりやん。腐っても龍神。怒らせると怖いでぇ」
    その時、銃声が鳴り響く。
     ×   ×   ×
    構えていた部隊の一人が誤射した。
    その光線がコンテナに当たり、金属音が響いた。
     ×   ×   ×
    龍の目が青く光り、息を吐く。
    青白い炎が波のように地面を走り、装甲車の脇が燃える。
    龍「あえて、見た目はひ弱にしたんだっちゅうの」
    かぐや「龍、あいつらは僕たちの相手じゃない」
    しょんぼりする龍。
     ×   ×   ×
    龍の青い炎に驚く、なな。
    なな「発砲は控えろ、暴走するな!」
    部隊は混乱しつつも、再び銃口を高村、かぐや、龍、美生らへ向ける。
     ×   ×   ×
    高村は拳を握り、ななへ向かって叫んだ。
    高村「やめてください。あなたたちが狙っているのは、月からの侵入者なんかじゃない! 今、日本を助けられるのはこの人たちしかいません!」
    大声を張り上げて叫ぶ高村を、驚いて見ている美生とかぐやと龍。
    龍「やっぱり、やるやん」
     ×   ×   ×
    なな「何を言っているのだ。意味がわからない!」
     ×   ×   ×
    高村「(躊躇いながらも)この人たちは……、この国を何千年も前から陰で守ってきた“かぐや姫”なんです!」
     ×   ×   ×
    なな「かぐや姫……!?」
    必死に首を縦に振る高村。
    なな「(心の声)何を言っているんだ、このおかまみたいなのは」
    ななは、銃を強く握り締める。
    額に浮かぶ汗。
     ×   ×   ×
    部隊は緊張し、いつでも発砲できる体勢を取っている。
     ×   ×   ×
    高村「この事態が収まらなければ、僕は罰でも何でも受ける。だから、今は見逃してください。あなたもこの国を守る政府の一員なら」
     ×   ×   ×
    なな「そんなこと信じられるか」
     ×   ×   ×
    その瞬間、かぐやの目が光る。同時に髪の毛が銀色に、衣服は白い着物へと、みるみるうちに変化して、月に向かって体を宙に浮かせた。本来の姿を見せる、かぐや。
    かぐや「これでも信じられないか?」

    画像
    かぐや2026


     ×   ×   ×
    その美しさに息をのむ高村。
    高村「これが本当の姿?……」
    なな「……(汗)」
    かぐやの姿に圧倒される、美生となな。
    自慢げな顔をしている龍。
    ななは、迷いながらも大きくため息をつき、悔しそうに銃を下ろした。
    なな「全隊、狙いを下げなさい」
     ×   ×   ×
    隊員たちは銃を下げる。
     ×   ×   ×
    元の黒髪と洋服の姿に戻り、地上に降りる、かぐや。
    なな「国のために、これが正しいか、間違っているかは、私も分からない。でも……、あなたの姿を見て、信じて賭けてみる」
    高村「ありがとう」
    龍「口は悪りぃが、根は良えやつやんか」
    なな「もし、日本を救えなかったら、その時は覚悟しておきなさい」
    かぐや「ああ」
    政府の追跡ドローンや装甲車両、黒服の部隊が退散していく。

    ◯東京湾・船着場(夜)
    やけに静かな東京湾。水面も怖いくらいに静かである。
    高村とかぐやが、防波堤に腰を下ろしながら月を眺めている。
    かぐや「他のみんなは?」
    高村「地下に入れるかどうか、確認しに行っています。体調はどうですか?」
    かぐや「随分とマシになってきた。地球と月は重力が違うから、重いったらない」
    高村「さっきの姿、驚きました」
    かぐや「ああ。あれな」
    高村「いや、本当にかぐや姫なんだって……」
    かぐや「だな」
    見つめ合う高村とかぐや。
    ドキッとする高村。
    高村「な、何が何でもコレを止めたい。それが僕たちの同じ思いだから」
    女々しいはずの高村の瞳は、いつしか強いものに変わる。
    かぐや「こうしてキミに出会えたのも、おじいさんとおばあさんが結びつけてくれたのかな」
    心の高鳴りを振り払うように、目を逸らす、かぐや。
    高村「まるで夢のようですが」
    かぐや「これが終わったら、僕は月に帰る」
    高村「そうなのですね……」
    かぐや「……」
    高村「……」
    かぐや「掟だから」
    高村「掟?」
    かぐや「ああ。そして、月に帰るということは、また記憶と感情がなくなってしまう」
    高村「僕のこと……忘れてしまうってこと……?」
    かぐや「どうだろ?」
    月を見上げる、かぐや。
    その美しい横顔を見つめる高村。
    高村「月が綺麗ですね」
     ×   ×   ×
    向こうから龍と美生が息を切らして走ってくる。
    高村「どうでしたか? アレは」
    美生「間違いなかった。いつもの地下道のアレです」
    龍「(息を切らしながら)美生ちゃん、ほんま走るの、早い」
    かぐや「龍は何か感じた?」
    龍「おお、多分ソコや」

    ◯同・地下古い神殿跡・道(夜)
    かぐやと高村と龍と美生が、岩で囲まれた洞窟内をゆっくりと歩いて行く。
    美生は手にタブレットを持ちながら、さらなる反応を調べている。
    その洞窟内の壁には、古代の文様を連想させる文字のようなものがびっしりと刻まれている。
    咄嗟にタブレットから警告音が鳴る。
    美生「タクミさん!あの奥の扉の向こう側からものすごいエネルギーが!」
    美生の元へ駆け寄る龍。
    龍「これも文明の力か。すごいな」
    奥の石の扉を見つめる、高村とかぐやと龍と美生。
    高村「あの石の扉、開くんでしょうか?」
    龍「あれやで? 開くわけないやん」
    高村とかぐやと美生の冷たい視線が、龍に刺さる。
    その時、洞窟内が大きく揺れる。
    体勢を崩す、高村とかぐやと龍と美生。
    タブレットからの警告音が、さらに大きくなる。
    美生「かなり危険な状態です。これじゃあ、地上が心配だ」
    石の扉を睨む、高村とかぐやと龍。

    ◯同・石の扉の前(夜)
    石の扉を手で触るかぐや。
    それを不安げな目で見つめている高村。
    かぐや「これは……到底無理だな」
    扉からは、光と熱が断続的に漏れ、呻き声のような低音が響く。
    かぐや「この呻き声……」
    龍「間違いないやん、黒龍やん」
    高村「く、黒龍(驚)!」
    龍が石の扉から少し離れて、前に立つ。
    龍「姫、みんな!ワシの後ろに!」
     ×   ×   ×
    龍の後ろにいる、高村とかぐやと美生。
    龍の目が青く光り、口を大きく開ける。
    青白い光線を扉めがけて発射。
    龍「ワシに任せとき!ちょちょいの、ちょいっと。ゴォーーー」
     ×   ×   ×
    ドーーーーーン!
    その光線は、石の扉を粉々にした。
     ×   ×   ×
    高村「本当に龍神なのですね」
    龍「ほんまや、っちゅうねん」

    ◯同・洞窟内(夜)
    粉々になった石の扉を避けながら、ゆっくり奥に入って行く、かぐやと高村と龍と美生。
    洞窟内は、うっすらと黒いモヤがかかっている。
    一番奥に、黒龍が彫られた石碑が立っている。その石碑から、電気がビリビリと発信されている。
    それを見つめて、息をのむ四人。
     ×   ×   ×
    かぐや「これが、暴走しきった龍脈の根源。千年も前に築いた封印は、もう限界のようだな」
    高村「封印が解けるなんて」
    かぐや「日本人はもう目覚めないといけない」
    高村「目覚め?」
    龍「覚醒っちゅうことやな」
    美生「そんな能力あるわけない」
    かぐや「気づいていないだけで、日本人のDNAにはきちんとそれが組み込まれているのだ」
    龍「地球の中でも、日本は日の出づる国やから」
    かぐや「これから、徐々に日本人が目覚めさせられる状態になっていかなければならない」
    高村「どうすれば?」
    かぐや「一人ひとりが、惑わされず、自分が正しいと思う意思を、素直に持つこと」
    龍「そやな。みんなSNSとか地位とかお金に流されすぎやな」
     ×   ×   ×
    一番奥にある石碑から、さらなる怪しい光が発光しだし、地面が割れて、呻きのような轟音が次第に大きくなってくる。
    バランスを崩す、かぐやと高村と龍と美生。
     ×   ×   ×
    かぐや「うわぁ!」
    龍「そろそろやばい」
    高村「とりあえず、外に避難しましょう!」
    出口に向かって走り出す、かぐやと高村と龍と美生。
    かぐや「龍!止めるぞ」
    龍「ガッテン!」
    走っている、かぐやを見る高村。
    その視線に気づく、かぐや。
    見つめ合う、かぐやと高村。
    かぐや「僕は、これを鎮めるために来た」
    高村「それって、あなたが犠牲になるって意味ですか?」
    かぐや「封印の術式は、月の血脈のもの」
    高村「僕は、普通に、人間として、あなたと出会いたかった」
     ×   ×   ×
    石碑から発せられる電磁波と光で、洞窟内がいっぱいになっている。
    鼓動を打つように、激しく石碑がガタガタと動き出した。
     ×   ×   ×
    石碑が打ち破られる。
    中から巨大な黒龍が這いずりながら出てきた。
     ×   ×   ×
    黒龍は、洞窟の壁を砕く。
    轟音と共に、黒龍が空へと向かって飛び出す。

    ◯東京湾沖(夜)
    巨大な黒龍が飛び出してくる。

    ◯首相官邸・地下特別対策会議室(夜)
    首相、防衛庁幹部、科学技術庁、宇宙開発機構の面々がスクリーンを食い入るように見つめている。
    スクリーンには、東京湾沖に現れた大きな黒龍が映し出されている。スクリーン周りのコンピュータからは、異常なエネルギー波形を観測。
    首相「何だ、これは!」
    防衛庁幹部「さっきの奴らの一味なのか」
    宇宙開発機構「いや、波形が違います。結城と繋げます」

    ◯東京湾(夜)
    巨大な黒龍の周りに、数個の追跡ドローン。

    ◯同・沿岸(夜)
    装甲車両の中のななが、目の前の黒龍の光景を見て愕然としている。
    なな「何なんだ、これは」
    無線機から、宇宙開発機構の声がする。
    「結城、結城、応答せよ」

    ◯首相官邸・地下特別対策会議室(夜)
    首相、防衛庁幹部、科学技術庁、宇宙開発機構の面々。スクリーンには、ななの顔が映し出されている。
    宇宙開発機構「これは一体なんだ!」
     ×   ×   ×
    スクリーンの中のななが話す。
    なな「まだ私にもわかりません。さっきの四人は、この龍を倒しに来た模様」
     ×   ×   ×
    首相「どういうことだ?」
     ×   ×   ×
    なな「この目で確認しました。彼女は、かぐや姫です」

    ◯東京湾・沿岸(夜)
    高村、かぐや、龍、美生が走ってやってくる。東京湾沖で暴れている黒い龍を見て驚く。
    高村「あれは!」
    美生「きゃあ!」
    龍「とうとう、封印を解いて出てきたやん!」
    かぐや「……」
     ×   ×   ×
    黒龍「グォォォォォオオ!!」
    鋭い唸り声を上げながら、かぐやに近づいてくる黒龍。
    男らしく向かおうとする、かぐや。
     ×   ×   ×
    その時、高村はかぐやより前に出た。
    高村を見つめる、かぐや。
    高村「それ以上、近づくな!」
    龍もかぐやの前に出る。
    龍「姫、下がっとき。こいつはワシが!」
     ×   ×   ×
    龍は、人間の体から元の龍の姿に戻る。
     ×   ×   ×
    黒龍と互角の大きさになった龍。
    その、龍本来の姿を目の当たりにして、圧倒される高村と美生。
    美生「あれが本当の姿……」
     ×   ×   ×
    黒龍対龍が東京湾沖に現れ、荒れる東京湾沖。響く轟音。
    黒龍「お前ごときに、ワタシは倒せん!」
    龍「へっ、笑わせるわ!」
    黒龍と龍の戦いが始まる。
    龍は大きく息を吸いこむと、黒龍めがけて青白い大きな炎を口から吐き出す。
    火柱は、黒龍の首筋に命中、その鱗を焼き裂く。
     ×   ×   ×
    苦痛に「グァアアア!」と咆哮する黒龍。
     ×   ×   ×
    黒龍も黒い炎を、龍めがけて吐き出す。
     ×   ×   ×
    黒い炎にやられる龍。
     ×   ×   ×
    次の瞬間、黒龍は逆鱗を露わにしながら、龍にタックルして、その身体に爪を突き立てた。
    岩のように硬い龍の鱗が砕け、血が飛び散る。
     ×   ×   ×
    「ぐ……、はぁはぁ……」と歯を食いしばり、苦痛に震えている龍。
     ×   ×   ×
    かぐやが思わず叫んだ。
    かぐや「龍!!」

    ◯東京湾・沿岸(夜)
    装甲車両の中から、黒龍と龍の戦いを、ななが祈るようにして見つめる。

    ◯首相官邸・地下特別対策会議室(夜)
    首相、防衛庁幹部、科学技術庁、宇宙開発機構の面々。スクリーンに映る黒龍と龍の戦いを、呆然とした表情で見る。
    科学技術庁「かぐや姫は本当だったのか!」
    宇宙開発機構「何か援護はできないのか!」
    防衛庁幹部「下手に手を出すと龍に当たってしまう可能性が」
    首相「……」

    ◯東京湾・沿岸(夜)
    高村、かぐや、美生が東京湾沖の黒龍と龍の戦いを見守っている。
    龍は不利な状態。血を吐きながらも、かぐやを見つめた。
    龍「へへ……、姫……、ワシはまだまだ修行が足りひんみたいや……。あかんな……」
     ×   ×   ×
    黒龍は怒り狂って、さらに大きな爪を深く突き立て、龍の体を地面へ押し潰した。
    龍は、短く息を詰まらせ、その体から力が抜けていく。
     ×   ×   ×
    高村「(歯を食いしばり)やめろ! クソっ!」
    美生「(泣きながら)龍さん……」
     ×   ×   ×
    龍は最後にかぐやへ、優しく視線を送り、かすかに笑う。
    龍「あ……りが……とう……、姫。幸せに……なるんやで……」
    次の瞬間、黒龍が牙を深く突き立てる。龍は息絶え、その巨体が崩れ落ちた。
     ×   ×   ×
    かぐやは目を見開き、声にならない悲鳴を上げる。
    かぐや「龍……龍ぅぅぅっ!!」

    ◯東京湾沖(夜)
    かぐやは、怒りとともに、シルバーヘアのかぐや姫に戻り、宙に浮いた。
    周囲の空気が急激に冷え込み、青白い光が彼女の体から嵐のように噴き出す。
    その光は夜の東京湾全てを包み込み、瞬く間に黒龍に絡みついた。
    黒龍「(苦痛に咆哮)グォ……オ……ッ!」

    ◯東京湾・沿岸(夜)
    高村がそれをつらそうに見つめている。
    高村「あれは……」
    美生はタブレットを見ながら震えている。
    美生「これが、真の封印術……」
    高村「封印術……」

    ◯東京湾沖(夜)
    かぐや姫(かぐや)の目からは涙が溢れ出ている。震えながらも、
    かぐや姫(かぐや)「龍を殺したこいつを……僕は絶対に許さない……!!」

    ◯首相官邸・地下特別対策会議室(夜)
    首相、防衛庁幹部、科学技術庁、宇宙開発機構の面々。スクリーンに映る、かぐや姫(かぐや)と黒龍との戦いを祈りながら見守る。

    ◯東京湾沖(夜)
    かぐや姫(かぐや)と黒龍の戦い。
    かぐや姫は、最後の力を振り絞り、黒龍へ向かって歩を進める。
    光の触手が無数に伸び、黒龍の巨体を束縛し、締め上げていく。
     ×   ×   ×
    ますますもがき苦しむ黒龍は、断末魔の声で、
    黒龍「グォォ……グガァ……アアア!!!」
    その瞬間、大きな轟音と共に黒龍は光の中で砕けた。
     ×   ×   ×
    東京湾沖に黒い霧が漂う。そして、海の中に吸い込まれた。
    その瞬間、東京湾全体が真っ白に輝き、その後、長い沈黙が訪れた。

    ◯東京湾・沿岸(夜)
    白い光が沿岸にゆっくりと落ちてくる。
    高村と美生が駆け寄る。
    そこには、人間の姿に戻った、かぐやが静かに眠っていた。
    呼吸はかすかにあるが、意識はない。
    高村はかぐやを抱き上げ、震える声で、
    高村「かぐや……。目を開けてください……」
     ×   ×   ×
    そこへ、なながやってきた。
    なな「かぐや姫!」
    ななのインカムに首相官邸から連絡が入る。
    「結城、応答せよ!」
    舌打ちを鳴らしながら、インカムに対応する。
    なな「こちら結城です」

    ◯首相官邸・地下特別対策会議室(夜)
    首相、防衛庁幹部、科学技術庁、宇宙開発機構の面々。スクリーンに、ななの顔。
    宇宙開発機構「どうなったんだ」
    スクリーン内のななが話す。
    なな「黒龍は無事封印されました。しかし、かぐや姫の意識がありません」
    防衛庁幹部「なぜ、あんな黒龍なんかが飛び出てきたのだ」
    スクリーンの画面は、かぐやを抱えながら、強く訴えている高村へと切り替わる。インカムを高村の耳に入れる、なな。
    高村「黒龍は人間が生み出した邪悪な意識の集合体です。世の中を正しい方向に導くのが政治じゃないのか!国民をなんだと思ってやがる!」
     ×   ×   ×
    科学技術庁「誰に向かって話しているのか、わかっているのか!」
    首相が科学技術庁の言葉を遮るポーズ。
    高村「かぐやと龍の命を無駄にするな!」
    首相「わかった。約束しよう。日本が明るい未来へ向かうことを」
    なな「どうなるかわかりませんが、息はあるようなので、かぐやを保護します」

    ◯東京湾・沿岸(夜)
    かぐやを抱き抱えている高村。それを心配そうに見つめる美生となな。
    なな「今は……ただ、かぐや姫が目を覚ましてくれることを祈りましょう」
    高村「……」
    眠る、かぐや。

    ◯東京都内(朝)
    T・三ヶ月後

    ◯同・街中(朝)
    街も復興し、慌ただしく人々が歩く普段の街並み。

    ◯同・商店街(朝)
    商店街にも活気や笑顔が戻り、子供たちが元気に登校する姿。

    ◯芝神埠頭
    陽の光が海面を美しく照らしている。

    ◯古びた低層ビル

    ◯古びた低層ビルの一室・かぐやの部屋
    「NPO法人 SIBAJIN」の隣の部屋。
    薄いカーテン越しに、柔らかな日差しが差し込んでいる。簡素な木のテーブルには花瓶が置かれ、淡い色のガーベラが揺れている。
     ×   ×   ×
    キッチンで美生がコーヒーを淹れている。
     ×   ×   ×
    仕切られた奥の部屋のベッドで、かぐやが眠っている。
     ×   ×   ×
    かぐやの指が少し動く。
     ×   ×   ×
    かぐやが、目を覚ます。
    かぐやはゆっくりと起き上がり、キョロキョロと辺りを見渡している。
    かぐや「ここは……?この香りは……」
     ×   ×   ×
    かぐやに気づいた美生が駆けてくる。
    美生「か、かぐやさん!」
    涙目の美生。美生は部屋を飛び出し、隣の部屋にいる高村を呼びに行った。

    ◯同・「NPO法人 SIBAJIN」・室内
    高村がモニターを見ながら、ぶつぶつ呟いている。そこへ美生が慌てて入って来る。
    美生「タクミさん!」
    高村「まさか!」

    ◯かぐやの部屋
    ベッドの上に起き上がり、コーヒーを飲んでいる、かぐや。
    そこへ、高村と美生が駆け込んでくる。
    高村「かぐやさん……」
    高村は駆け寄り、ベッドの縁に膝をつく。
    そしてそっと、かぐやの手を握った。
    かぐや「タクミさん……」
    高村「(涙を浮かべ、笑う)ずっと心配していました。もう、二度と目を開けないんじゃないかって……」
    目に涙を浮かべる、かぐや。
    かぐや「こうしてまた、キミの声を聞けて嬉しい……」
    高村「僕のこと、わかりますか?」
    頷く、かぐや。
    美生「かぐやさん、月の反応がないんです」
    高村「本当なの!?」
    かぐや「人間の体って重たいな(笑)。それに、なんだかくすぐったい」
    美生「かぐやさん、なんだか女っぽいです」
    高村を見るかぐや。
    かぐや「キミも、少し男らしくなったな」
    高村「かぐやさんは、少し女らしくなりましたね」
    かぐや「そう?……悪くないな」
    高村とかぐや、目を合わせて笑う。

    ◯東京湾沿岸
    東京湾が見渡せる場所。ベンチに腰をかけて、海を眺めている高村とかぐや。
    静かに風がそよいでいる。
    かぐや「龍……。あなたが守ってくれたこの街で……、これから、人間として生きてみようかな」
    高村「龍さんなら、どこかで笑って見ているはずです」
    かぐや「ちょっと、楽しみ。キミと一緒なら、どんなことがあっても怖くない……」
    空を見上げて笑顔になった後、見つめ合う二人。空には、龍雲が浮かんでいた。

                                      (完)


    #創作大賞2026

     
     
    小説や脚本書いてます。 心に少しの雫を落とせます様に https://note.com/sayo_o5 こちらはsayocoという名で書いてます。 「365日で強運をつくる」他、 潜在意識×西洋占星術「MooReadings」は世界初の星占い。今のあなたを知る問いをおいてます。

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