【私小説】カチッと合わないボクと彼女
ボクが△で、君は☆だったりする。カチッと合わないイビツさを笑うことができていたら、ボクたちは今も一緒にいられたかもしれない。
夏の終わり、ボクと彼女はディズニーに行くはずだった。
初めて彼女と会った日、ボクは瞬く間に沼にハマってしまった。連絡の頻度、言葉選びのセンス、会話のテンポ、どれもがボクと同じように思えた。世の中に凸と凹みたいに自分とカチッと合う人がいるのなら、きっとそれは彼女だと思った。
フラれてもフラれても、フラれても、彼女以外に合う人はいないと思えて、ボクは忘れられなかった。
1年越しの夏、何気ないことをきっかけにボクは彼女と過ごせていた。ボクの生活の中心は彼女になっていて、可能な限りボクの時間を彼女に捧げていた。だって、ボクと彼女はカチッと合っているはずだから。
8月の終わり、ちゃんと夏らしくぎらぎらと暑い日、ボクと彼女はエアコンの効いた部屋にいた。少し寒いくらいに思える部屋で、彼女は薄着でアイスを食べていた。「少し冷えたからあっためて」と彼女が言う。ボクは彼女の後ろに座って包んだ。ボクの熱がひんやりとした皮膚に移っていった。
夏はエアコンの効いた部屋でまったりしたい彼女。太陽の下では日傘が必須な彼女。圧倒的に夜型な彼女。本当は繊細で、から元気に見えてしまった彼女のポジティブさ。
夏は外に出たいボク。何なら真っ黒になるくらい日差しを浴びたいボク。朝型なボク。ただ鈍感なゆえのボクのポジティブさ。
彼女はきっと、ボクよりも先に気がついていたのだと思う。彼女が言った離れる理由にそれは入っていなかったけれど、そこに至るまでのどこかでそれは加味されていたのかもしれない。
「ごめん、ディズニーには行けない」
結局、ボクらはまたエアコンがよく効いた部屋にいた。ディズニー映画を観ていた。彼女は「ディズニーにいるみたいだね」と言った。ボクは「そうだね」としか言えなかった。
真夏、寒いくらいに涼しい部屋で大切な人と寝そべりながら映画を観る。時々、アイスを食べたり、お互いの肌を重ねたりもする。これ以上にない幸せなのかもしれない。「こんな日も幸せだね」と彼女は言った。ボクはまた「そうだね」と言った。
カチッと合わないイビツさをボクたちは笑えていただろうか。多分きっと、夏の熱でボクらはたまたま溶けて、形が刹那的にハマっていただけかもしれない。
ドアを開けると、もわんと夏の暑さが容赦なく入り込んでくる。1日ぶりの夏を感じられた気がした。彼女は分かりやすく嫌そうな顔をした。「ありがとうね。涼しくなったらディズニーに行こうね!ハロウィンとかいいなー!」と彼女は揚々として言った。ボクは「仮装とかしてみるのもいいかもね」と、そう言った。
彼女の家から遠ざかる。誰かがボクの元にいた、その幸せを確かに感じていた。それでもボクはあの夏、彼女とディズニーに行きたかった。
