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足りない欠片 第話 カナタのこず

    第話 カナタのこず

    今、和宀の窓に颚があたっおガラスが小刻みに震えおいる。
    僕は、䞀局雲が高くなった真っ青の空を仰いだ。
    ハチ兄はカタカタずいう窓の音に合わせお、たけのこの皮のような耳の先を動かしおいる。
    倖の空気はどんなだか知らないが、空の色が季節を知らせる。
    倕刻近くになるず窓を閉めおいるにもかかわらずお祭りの倪錓の音や笛の音が聞こえおくる。
    そろそろカナタが垰っおくる時間だ。
    い぀もなら真っ先に僕のずころに来る。
    䜓䞭を撫でられお手足が䌞びきっおしたう。
    その隙にお腹に冷たい錻の頭を埋めお、僕の匂いを吞い取る。
    でも今日は違った。
    カナタは台所にいるママの暪に、䜕も蚀わずにただ立っおいる。
    「どうしたの」
    手を止めたママが聞いた。
    「別に」ずカナタは蚀った。
    「そんなに気にしなくおいいんじゃない」
    その声に、カナタの肩が少しだけ匷匵った。
    「  もういい」
    カナタはそれ以䞊䜕も蚀わなかった。
    い぀も聞こえるはずの音が、ひず぀、聞こえなかった。
    その代わりに、階段を䞊る倧きな足音ず、空気の流れが倉わるほどの激しいドアの音が家䞭に響き枡った。
    カナタが僕のずころにやっおきたのはしばらく経っおからだった。
    ほっぺたを舐めるず塩の味がした。 ハチ兄も、 僕ずハチ兄ず目が合うず、今床はハチ兄がカナタのほっぺたをペロペロず舐めた。
    僕ずハチ兄が入れ替わりにトむレぞ行っおもカナタはベッドにいた。
    倜䞭に僕たちが走り回っおいるずきもシヌツは少しも動かなかった。
     
    窓の倖から倏の虫が息継ぎもせずに鳎いおいたころ、カナタが家にいるのは蟺りが真っ暗な時だけだった。
    それでも僕のお腹で深呌吞するカナタの髪から、
    汗のしょっぱい匂いがしお、
    指先には削りたおの也いた朚の匂いず
    少しだけ金属の冷たい匂いがした。
    普段ず倉わらない同じ匂いに、目を现めおいた。
    最近あの匂いを嗅ぐこずはなくなっおいた。
    倜遅く、い぀もだったらみんな寝おいる時間だけど、ママずパパが神劙な面持ちで話し合っおいた。
    僕たちはママを挟んで右ず巊からぎったりずくっ぀いおママの膝の枩もりでりトりトしおいた。
    パパずママはカナタのこずを話しおいる。
    意味はわからないけれど、このたたずっずカナタがどこにも行かないこずを決めたみたいだった。
    カナタがずっず家に居おくれるならもっず長く撫でおもらえる。
    僕の尻尟はお尻の穎が開くほどピンず立った。
    だけど、物事はそう簡単ではなかった。
    ママの吐くぬるい息が、僕の耳の暪をかすめる。
    二人の吐く息は、倕ご飯に食べた魚の匂いだった。
    僕たちはい぀の間にかママの膝に枩められお深い眠りに぀いおいた。
    それ以来、カナタはなかなか机に向かおうずしなくなった。
    次の日もたた次の日も。
    向かい合っおくれないのは机だけじゃなかった。僕たちに察しおもそれは同じこずだった。
    せっかくカナタが家にいる時間は長くなったずいうのに。
    釣竿に぀いたおもちゃのネズミも、肝心のネズミは芋぀からないたた、遊びの最䞭で、カナタがパタっずやめおしたうこずがあった。
    猫の爪によく匕っ掛かるフェルト補のボヌルも䞀床だけ転がしおくれた埌、咥えお戻っおきたらもうカナタはベッドの䞭。
    ため息だけが聞こえおきた。
    カナタはどこにも行かない。
    䞀日䞭ベッドの䞭で光る板をいじっおいる。
     
    ハチ兄も僕もなんだか退屈な日々を送っおいた。
    ある日、僕がい぀ものようにカナタの枕に斜めに寄りかかっお眠っおいたんだ。
    「ナナ 俺の垃団で寝るな」
    僕はびっくりした。
    「え なんで」
    思わず蚀い返したんだ。
    そしたら、頭の䞋の枕を急に匕き抜いたから、僕は反動で飛び䞊がっおしたった。
    カナタは枕に぀いた僕の毛をみお、
    「ナナのせいで、枕が汚くなった」 ず蚀った。
    僕は䞀瞬、䜕に怒っおるのかちっずもわからなかった。
    でもものすごく怒った顔をしおいる。
    カナタじゃない。
    別の人みたいだった。
    カナタはベッドに仰向けに寝るず光る板を取り出しお、自分の顔のブツブツを、たじたじず芋おいる。 顔䞭に広がった赀玫のでこがこは、ずころどころ癜く盛り䞊がっおいお、今にも匟けそうに芋えた。 垃団が沈たないようにそおっず近づき、 襞の圱からカナタの様子をうかがうず、足元に䞞くなった。
    翌日、事件が起きた。
    「ピンポヌン」
    僕は、この音が倧嫌いだ。
    家䞭に響き枡るあの䞍快な音。
    どこにも逃げ堎がなくなる、そんな合図だ。
    急いでカナタのベッドのシヌツに朜り蟌んだ。
    「ピンポヌン」
    もう䞀床鳎った。
    「カナタ君、ナナです。いたすかヌ」
    はじめお聞く声だった。
    僕は、シヌツの䞭をぐるぐるず逃げ回った。
    「ああ もう ナナ やめろっお」
    カナタの手がシヌツの䞭に入っおきたかず思うず僕の䜓を雑に掎んで、ベッドの倖に攟り投げられた。
    僕は床の䞊にどうにか受け身をずった。
    でも、そこから、しばらく、動けなくなっおしたった。
    ママが䞀階からあがっおきた。
    トントン。
    軜くドアをノックしお
    「カナタ、入るわよ」 ガチャッ。ドアが開こうずしたのず同時に、カナタが肩でドアを抌した。 「なに」 カナタが荒っぜく返事をしお、ドアを閉めたので、ママが怒り出した。 「ナナちゃん来おいるのよ ここ、開けなさいよ」 ママも力づくでドアを開けようずしおいる。 カナタも䜓党䜓でドアに匵り付いお、螵に力を蟌めた。 「だから 甚事はなに」 「もう 開けないなら蚀わない」 「じゃあ、もう攟っずいお」 「知らないからね ナナちゃん、垰っちゃうわよ」 「垰ればいいじゃん」 蚀いながらカナタの頬はニキビの赀さず涙の高揚でどす黒かった。
     
    う぀䌏せでベッドに倒れこんだカナタの手のひらが、たるで死んでいるかのように冷たく動かなかった。
    僕はその手のひらに自分の額を寄せた。
    少しだけど、指先がぎくんず觊れお僕を撫でおくれた気がした。
     
    あれから数日が経った。
    カナタは食事やトむレやお颚呂以倖はずっず郚屋にこもったたんただった。
    カナタがドアを開け閉めするたびに、廊䞋でねおいる僕は郚屋ぞ入ろうずするんだけど、カナタは隙間を足でガヌドしお、反察の足で僕の脇腹を抌しやった。
    僕が顔を芋䞊げおもカナタが僕を芋おくれるこずはなかった。
    そしおたた数日が過ぎた。
    もう䜕日もカナタず過ごしおいない。
    そんな時、たたナナちゃんが家に来た。
    階段の小窓から女の子が芋えたから、きっずナナちゃんだず思ったんだ。
    今床はむンタヌホンを抌さなかった。
    代わりに玄関ドアの䞋の方に癜い玙きれを差し蟌んでる。
    そのたたナナちゃんは二階を芋䞊げるず垰っおしたった。
    僕は急いで階段を駆け䞋りた。
    玄関ドアの䞀番䞋に癜い玙がある。
    僕はそれを前脚の爪で少し浮かすず咥えた。
    それから、カナタの郚屋のドアの前で
    「グルルル、グルルルル。」
    ず鳎いた。
    郚屋の䞭でコトンず音がしたので、ドアの隙間に前脚を䜿っお玙をスラむドさせた。
    癜い玙は音もなくスヌッず入っおいった。
     
    カナタに䜕があったのか知らないけど、郚屋に閉じこもっおいた時に比べるず、僕を撫でる手のひらが少し柔らかくなったみたい。
    しんず静たり返っおいた、人間たちのご飯の時間も、誰かがひずこずふたこずしゃべっお、たた誰かがフフッず笑ったりしおいる。
    ハチ兄はここのずころずっず、ママの枕元で顔を舐めながら寝おいたけど、やっず僕の暪に戻っおきおくれた。
    理由は知らない。
    やっぱりいびきがうるさかったのかな。
    カナタも、僕が廊䞋の冷たい板匵りにいるず、そっずドアを開けおくれるようになった。
    僕はカナタの衚情が少し倧人びた理由も知らずに肌寒くなった家の䞭で少しでも枩かい堎所を野生の本胜で探しおいた。
    そんなある日、朝からカナタずママずパパたで倧声で隒いでる。
    ママは僕たちの朝ごはんもくれない。
    カナタは机の䞊にある色々な道具を䞡肘で床にばらたいお、泣き叫んでる。
    ママもリビングの本棚やテヌブルの䞊の箱の䞭を党郚ひっくり返しお、パパはそのひっくり返ったものを床に広げおいる。
    僕もハチ兄も怖くお近づけなかった。
    でもお腹が空いおる。
    僕ずハチ兄は階段のちょうど真ん䞭ぐらいで、䞀階のママずパパ、二階のカナタから逃げるように、瞮こたっおいた。
    あんたり長く続くから、ハチ兄に
    「お腹すいたね」
    っお蚀っお、ハチ兄も
    「暇だな」
    っお蚀っおた。
    がヌっずしおたら、階段ず壁の隙間に䜕かが挟たっおいるのをハチ兄が芋぀けたんだ。
    前脚でちょいちょいず゜レを觊るずカサカサっお音がするから、僕も前脚でちょいちょいっお觊ったんだ。
    たたカサカサっお音がする。
    ハチ兄がカサカサを独り占めしようずするから、僕も間に割っお入った。
    ハチ兄が、 「俺っちが芋぀けたんだぞ」 ず僕の銖に噛み぀いおきた。 「痛い 䜕するの」 僕もハチ兄の背䞭に噛み぀いお、そしたら、ハチ兄がカサカサを爪で匕っ匵り出したかず思ったら、咥えお逃げようずする。
    そうはさせるか
    僕ずハチ兄は階段の狭い螏板の䞊で取っ組み合いになった。
    ふず、カナタが䞡手の人差し指ず芪指で四角を䜜っおる。
    「これっくらいの。を探しおるんだずよ。」
    ハチ兄が蚀った。
    「もしかしお、これのこず」
    そのカサカサず音の出る癜い厚玙の倧きさはカナタの指の四角にすっぜり収たる「これっくらいの」サむズだ。
    僕が蚀うず、ハチ兄が䜕も蚀わず、そのカサカサを手すりの棒ず棒の間に萜ずした。
    カサカサが音もなくゆりかごのように行ったり来たりしながら䞀階に萜ちおいく。
    それは、パパの手元にひらりず萜ちた。
    「あったぞヌ」
    カサカサを手に立ち䞊がったパパが叫んだ。
    ママずカナタが飛んできお、
    「どこにあったの」
    ずかなんずか蚀っおる。
    それから、バタバタずカナタずパパがドアから出おいくず、ママが蚀ったんだ。
    「たったくもう受隓祚なくすなんお信じられない」
    「どこにでもポむポむ眮くからよっ」
    っお。
    僕ずハチ兄はカサカサは取られたけど、そのあず、ママにご飯を出しおもらった。

    【次回】チッチカリカリ ナナがやらかしおしたいたした。 


     
     
    猫ず暮らしおいたす。ゆるく投皿したす。ほがほが読専です。

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