
まだ間に合うだろうか
── お姉ちゃん、サラダ作って!
なぜかいつもサラダ担当は私だ。
レタスやトマト、
チーズやサーモンもある。
...なんでいつもわたし?
内心ブチブチこぼしながら、
乾杯したばかりのグラスを横目にキッチンへ行く。
目の前のサーモンを
薔薇の形に整え始めると
楽しくなってくるから不思議だ。
ついでに刺身の盛り付けもわたし担当。

── ああ、やっぱり
お姉ちゃんがやるとキレイ♪
いつもどこか母の言葉に
乗せられているような気がする。
母は、嫁ぐ前に料理学校へ通っていたらしい。
だからなのか、
我が家のお正月は、“おせち”よりも
グラタンやエビフライが並んでいた。

ホワイトソースから手づくりのグラタン。
鉄のフライパンにバターを溶かすところから
手伝っていた子どもの頃。
写真が残っていないのが非常に残念。
そして、母特製の“お煮しめ”。
子ども頃は、この味がわからず
「もっと美味しいものが食べたい」と思っていた。
それでも母は、毎年暮れになると
素材ごとに出汁を変えてつくる。

これだけのものを用意するのに
どれだけの手間暇がかかっているのか。
大人になって、
自分も母となって、
はじめて知った。
そしてだんだんと、
歳を取るにつれて
手づくりグラタンが無くなり、
エビフライも作らなくなった。
それはそれで少し寂しいけれど、
あの“お煮しめ”だけは毎年登場する。
この歳になって
ようやくわかったこの美味しさ。
わたしにこの味を再現できるだろうか。
というか、
まだ間に合うだろうか。
今度、母に聞いてみよう。
#創作大賞2026 #エッセイ部門