
【はじまりの日】 W杯サッカー日本代表応援小説
ワールドカップの開幕が近づいてきましたね!
日々、SNSの代表の投稿を眺めては
ワクワクしています✨
サッカーが好きすぎて
日本代表を題材にした小説を
書いてみました!
最後まで見て頂けたら嬉しいです☺️
「はじまりの日」
あの日、日本はまだ「優勝候補」ではなかった。
世界は、いくつかの名前で回っていた。
前回王者、強豪国、黄金世代。
そのどれにも、日本は含まれていなかった。
期待は、あった。
親善試合とはいえ、ブラジル・イングランドから
史上初の勝利をもぎとったのだ。
決して奇跡の勝利ではなく
これまで日本代表が積み重ねてきたものが
実を結んだ結果だ。
でもそれは、あくまで親善試合
“可能性はある”という言葉に優しく包まれた、
少し遠い期待だった。
ベスト8に届くかどうか。
組み合わせ次第では、もしかしたら——
そんなふうに語られる位置に、日本はいた。
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ピッチに立つ前、彼はいつも同じことを考えていた。
「音が、多いな」
スタジアムのざわめき。
選手の自分たちを鼓舞する声。
ベンチから飛ぶ声。
ボールのタッチ音。
スパイクが芝を削る、わずかな摩擦音。
全部が、同じ強さで耳に入ってくる。
必要な音だけを拾えたら、どれだけ楽だろう。
そう思いながらも、彼はその“全部”の中に立ち続けていた。
⸻
背番号は、10。
けれど、誰もが認めるエースではなかった。
派手なゴールも、観客を沸かせるドリブルもない。
ただ、
誰よりも早く気づく。
ほんの一瞬のズレ。
味方の視線。
相手の重心。
そして、まだ誰も見ていない“次の景色”。
⸻
「お前のパス、ちょっと怖いんだよな」
代表合宿のとき、そう言われたことがある。
「なんでそこに出せるのか、分かんない」
褒め言葉なのかどうかも、彼にはよく分からなかった。
ただひとつ分かっていたのは、
自分の見ている世界は、少しだけ他の人と違う、ということ。
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試合開始のホイッスルが鳴る。
彼は一度だけ、深く息を吸った。
情報が流れ込んでくる。
芝の長さ、空気の湿度、選手の距離感。
そのすべてを、無理に整理しようとはしなかった。
ただ、受け取る。
その中から、ひとつだけ選ぶ。
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「いける」
誰にも聞こえない声で、彼はそう言った。
その一歩が、
まだ誰も知らない“優勝までの道”の、
最初の一歩だった。