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木魚感想文、毎週ショートショートnote、410字

    氷堂出雲


    「木魚の感想文を書いてください」
    唐突にそう言って、目の前の和服姿の人物は、にこやかに筆と紙を差し出してきた。

    なぜ木魚の感想文なのか。訝しく思って尋ねると、相手は妙に真剣な顔で答えた。
    「人が木魚をどう感じるかを知りたいんです」

    しかたなく筆を取る。
    木魚の音で不思議と心が落ち着く。そう書き進めていたときだった。
    「落ち着く? 私は恐怖しか感じない」

    ふと顔を上げ、手元の木魚を叩いてみる。
    相手の顔が歪み、姿が揺らいでいた。背筋に寒気。ようやく気づく。これは人ではない。成仏できない霊だ。

    「だから、確かめたかった。みんなは本当にあの音で安心するのか」

    相手の声は震えていた。
    僕は決心して、机の上の木魚をリズミカルに叩いた。

    ポク、ポク、ポク。
    単調なリズムが空気を満たす。霊の輪郭はどんどん薄れ、歪んだ顔はやわらかな笑みに変わり消えていった。

    残ったのは、木魚と感想文の紙。そこに書き加えた。
    「木魚の音は、恐怖すらも浄化する。そう思った」

     
     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

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