
高校野球怪談、毎週ショートショートnote、410字
甲子園には魔物がいる
アナウンサーがよくそう言った。
平凡な内野フライなのに、なぜか三人の野手が譲り合って落とした。高野連が聞き取り調査をすると「俺が捕る」と別の選手の声が聞こえたという。声の主は言っていない。
打球が加速してスタンドに入った。物理学的に言って打球は加速するはずはなかった。
明らかに甲子園には魔物が住んでいた。
だから、高野連は、甲子園のお祓いをしてもらった。
念入りに、注意深く丁寧に。
それから試合がつまらなくなった。エラーなし、番狂せなし、強豪校が順当に勝ち続ける。
観客が言う。
「甲子園、なんかつまらなくない?」
高野連は、消えた魔物を探した。
ようやく見つけた魔物は、地方球場にいた。
「戻ってきてください」
「嫌や。祓われて傷ついた」
「甲子園がつまらなくなったんです」
魔物はしばらく黙っていた。
「ほな、決勝の日だけ行ったるわ」