メインコンテンツへスキップ
見出し画像

高校野球怪談、毎週ショートショートnote、410字

    氷堂出雲



    甲子園には魔物がいる
    アナウンサーがよくそう言った。

    平凡な内野フライなのに、なぜか三人の野手が譲り合って落とした。高野連が聞き取り調査をすると「俺が捕る」と別の選手の声が聞こえたという。声の主は言っていない。
    打球が加速してスタンドに入った。物理学的に言って打球は加速するはずはなかった。

    明らかに甲子園には魔物が住んでいた。
    だから、高野連は、甲子園のお祓いをしてもらった。
    念入りに、注意深く丁寧に。

    それから試合がつまらなくなった。エラーなし、番狂せなし、強豪校が順当に勝ち続ける。

    観客が言う。
    「甲子園、なんかつまらなくない?」

    高野連は、消えた魔物を探した。
    ようやく見つけた魔物は、地方球場にいた。
    「戻ってきてください」
    「嫌や。祓われて傷ついた」
    「甲子園がつまらなくなったんです」

    魔物はしばらく黙っていた。
    「ほな、決勝の日だけ行ったるわ」

     
     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

    あなたへのおすすめ