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シャボン玉、シロクマ文芸部、336文字

    氷堂出雲


     シャボン玉が、ふわりと空に浮かぶ。
     沙織は、よくこうしていた。子どもみたいだと笑うと、「この美しさがわからないの?」と言って、少しだけ拗ねた顔をした。
     光を映して七色に見えたと思ったら、すぐに消える。
    「儚いよね」
     そう言うと、彼女は首を振った。
    「違うよ。消えるから、きれいなんだよ。打ち上げ花火だって、桜の花だって、ずっとそこにあったら、きっと美しさは半減する」
     あのときは、よくわからなかったけど、今なら、少しだけわかる気がする。
     手を伸ばすと、泡は弾けて音もなく消えた。
     形も、色も、何も残らない。
     ああ。全部、泡みたいだった。
     出会ったことも、笑ったことも、好きだと言ったことも。
     風が吹く。次のシャボン玉を空に飛ばす。
     今度は、少しだけ長く、空にとどまっていた。

     
     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

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