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眠れない、シロクマ文芸部、447文字

    氷堂出雲


    「眠れない」と、妻が言った。
    「寝かさない」と、僕が言った。
    妻が私を睨む。
    「マジで眠れずに困ってるのにふざけないで。だいたいあなたはいつもそう。私が本気で心配事を相談してもふざけて冗談で返すし、デリカシーがかけらもなくって、マジ、ムカつく。この前だって……」
    また、妻のマシンガントークが始まった。それを子守唄にして寝ようと思ったが、やはり、眠れなかった。

    妻の言葉が途切れると、僕はようやく口を挟む。
    「僕も眠れない。ずっと前から」

    妻が一瞬だけ黙る。
    「なんで言わないの? また、心配させたくなかったとか言うんでしょ。バカね」
    妻はため息をついて、額を押さえる。

    「うん、知ってる」
    僕が答えると妻が布団を少し持ち上げた。

    「ほら、こっちに来なさいよ。どうせ、二人とも眠れないんだから」
    僕は妻に寄り添った。
    妻の体温を感じながら、その日は久しぶりに、ぐっすりと寝ることができた。
    それを妻に伝えると、目の下にクマができた彼女は微笑んだ。
    「よかったわね。今晩は、私があなたの胸に顔を埋めて寝るからね。覚悟しなさいよ」

     
     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

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