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逢いたい菜、毎週ショートショートnote、410字

    氷堂出雲

    彼女は、会いたい人の姿を見せる「逢いたい菜」の球根を手に入れた。

    あっという間に成長し、葉の表面に元彼の顔が浮かび上がった。

    彼女は毎日、言葉を紡いだ。別れた日のこと、後悔していること、もう一度会いたいという願い。そのたびに、葉の顔は優しい表情を浮かべた。

    でも、ある日の彼の顔は、目を細めて軽蔑の表情を浮かべた。

    次の日、葉に「知ってるよ」という文字が浮き出た。

    彼女は動揺した。自分が隠していた、小さな嘘が原因で関係が冷え切ったことを、彼女は薄々感じていた。

    「君が逢いたいのは、本当の僕じゃない」

    葉に現れた言葉に彼女は凍りついた。そして気づいたのだ。彼女がずっと逢いたいと願っていたのは、現実の彼ではなく、自分で美化した彼の幻だったことを。

    やがて葉は枯れた。捨てようとした時に、新しい小さな球根を見つけた。球根の気持ちが浮かんでいた。

    「ごめん、俺、嫉妬しちゃった」

    彼女はその球根をじっと見つめた。
    「今度は、相談相手になってね」

    ーーーー
    元彼に嫉妬するなんて、妙に人間臭い菜っぱだな。
    そして、今度は相談相手になってねか。

     
     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

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