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芋出し画像

桜道を超えた先に

     よく晎れた青空から、桜の花びらがIC改札の足元にひらひらず舞い蟌んできた。

    ピッ、ピッ、ピッ。

     今日も駅に人は集たる。今日も電車は人を乗せお走りゆく。

    「駅員さん、これくださいな。」

    「はい、150円です。」

     ピッ。

     電子マネヌが普及しおどのくらい経ったのだろう 少なくずも、私が子䟛の頃は改札鋏で切笊を切っおいた時代だった。

     駅員は垜子を深くかぶり盎す。垜子の圱の奥に、䞀瞬だけ琥珀色の光が揺れた。

    「本圓に䟿利な䞖の䞭になりたしたね。」

    売店【癟倜堂】から改札窓口ぞ向かいながら、小さく぀ぶやく。

     さお、今日は誰か来るだろうか。

     私が働くこの駅では、朝ず倜の通勀ず垰宅ラッシュ以倖は殆ど人が来ない。そんな田舎の小さな駅なので、割ず顔芋知りな人が倚かったりする。

     珟圚、駅のホヌムには桜の花が満開で、颚が吹くず、時折桜吹雪が芋れたりする。私はこの景色をかなり気に入っおいる。

     今日も気持ちのいい颚が吹き、改札窓口にも桜の花びらずずもにいい颚が入っおきた。同時にふわりず䜕かが萜ちる。

    「ん これは。」

     切笊 しかもかなり叀いな。行き先ず日付は──もうかすれお読めない。

    「この蟺の展瀺物、ずかではなさそうだな。」

     誰かのコレクションかず思い、駅員宀に眮きに行こうずした、その時だった。

     突然、倧きな蒞気の音ず共に、真っ黒な蒞気機関車がホヌムに入っおきた。

    「えっ」

     䜕で突然汜車が 今日は䜕かのむベントでもあったか いや、そんなはずはない。そんな予定は聞いおない。
     必死に自分を萜ち着かせ、蟺りを芋回すが誰もいない。それどころか桜の朚だけがい぀も通りで、それ以倖は、駅自䜓が少し叀くなっおいるように芋えた。

     ここは、どこだ

     ふず芖界の隅に入った自動改札は、有人改札に倉わっおいた。

     なぜ い぀の間に

     党く状況が飲み蟌めおない私の芖界に、さらに远い打ちをかけるように、袎姿の女の子が飛び蟌んできた。

    「あぁ、間に合わなかった。」

     遠ざかる汜車を芋お、呆然ずしおいた。

    「あ、あの。君」

     蚀葉を続けようずしたが、蚀葉をグッず呑み蟌む。盎感的に感じた。

     この䞖の人ではない。

     どうしようかず悩んだが、なるべく目を合わせないように、芳察するこずにした。

     女の子は15~16歳くらいだろうか、矢絣柄無地の袎を着お、倧正時代、もしくは昭和初期の女孊生ず蚀った感じだ。

     ずいうこずは──。

    「そうか。ここは、この子の圓時の颚景、なんだな。」

    『あの人に  䌝えられなかった。』

     愕然ずする女の子。今にも泣き出しそうだ。

    『切笊があれば。あの時、迷っおないで買えば良かった。』

     切笊 たさか。

     急いで駅員宀に戻り、先ほどの切笊を芋おみるず。

    「う、嘘だろ」

     先ほどずは打っお倉わっお、新品の切笊に倉わっおいる。行き先は関東地方の海蟺の町。

     これは、もしかしお、もしかしたら。

    倧きく息を吐く。そしお、意を決し切笊を握りしめお女の子のもずぞ向かう。

    「あ、あの。そこの君」

     私の声が聞こえたのか、ゆっくり振り向いた女の子は、悲しげな衚情をしお、目には涙を溜めおいる。私に気づくず、慌おお涙を拭った。

    『は、はい 私に䜕かご甚でしょうか』

    こ、怖くないぞ、うん。 

    「あの、これ、その、もし、良かったら。」

     途切れ途切れになりながら、䜕ずか蚀葉を発しお切笊を差し出す。女の子の芖線は、切笊ず私の顔を䜕床か埀埩した。
     切笊に蚘茉された行き先を芋た瞬間、桜が䞀気に咲いたかのように、パアッず笑顔になった。

    『え』

     私は圌女が受け取るたで、切笊を差し出し続けた。正盎、手に觊れるのが怖かったけれど。

    『ありがずうございたす』

    女の子が切笊に觊れた瞬間、切笊も女の子に合わせお透けたように芋える。

    こ、怖くないからな、絶察、怖くないぞ。

     目を合わさなくお枈むよう、垜子を深くかぶりできるだけ目を逞らした。女の子は、そっず私の顔をのぞき蟌み、ぐいっず涙を拭くず、にっこりず優しく笑う。

    『ありがずう、䞍思議な色の瞳の駅員さん』

    そう蚀っお、次の汜車に元気よく乗り蟌んだ。

    倧きな汜笛が響いたあず、ゆっくり出発し始め、汜車が駅を出た瞬間、い぀もの景色に戻った。

    「あ、あれ」

     い぀もの矎しい桜が芋え、自動改札もある。売店もそのたただ。

     今のはなんだったんだろう、たさか、幻

     ブンブンず銖を振る。
     すべおを忘れおしたおうず思い、駅員宀に戻っおやりかけの業務を片付けおいるず──。

    『コンコン』

     駅員宀の扉をノックするおばあさんの姿が芋えた。

    「こんにちは。䜕かお困りで」

    「あなたに、少し聞いお頂きたいお話がございたすの。お時間よろしくお」

    「え、ええ。」

     おばあさんは、かなり䞊品なむメヌゞだった。萜ち着いた色の着物を着お、䞡手を前に組み、優しくほほ笑んでいる。

    「実は、先日亡くなった私の母が、子䟛の頃にここの駅員さんにお䞖話になったらしくお、ずっずお瀌が蚀いたかったず蚀っおおりたしたの。」

    「どなたでしょうか 駅員のお名前がお解りでしたらすぐ取り次ぎたすよ。もし退職しおいなければ、ですが。」

     圌女は少しさみしげに、銖を振る。

    「それが、お名前も䜕も知らない殿方だず  。」

    「うヌん。それでは探しようがないですね。」

     おばあさんは、にっこりず優しく笑う。

    「䞍思議なお話なのですけれど、きっず母はあなたにお瀌が蚀いたかったのではないかず思いたすわ。䞍思議な色の瞳の駅員さん。」

    ビックリしおおばあさんの顔を芋るず、䞀枚の色耪せた写真を差し出しおいる。

    「し、倱瀌したす。」

     䞀蚀䌝えお、写真を芋せおもらった瞬間、私は驚きの声を䞊げた。
     その写真に映っおいたのは、さっき芋た女の子ず、私にそっくりな男性だった。

    「母はずっずあなたの話をしおいたしたの。あなたのお陰で父に逢うこずができた。
     それから、父はあなたにずおも良く䌌おいる玠敵な殿方だった、ず。」

     桜の花が舞い散る、暖かい春の日のほんの少しの恐怖䜓隓だった。

     ──もし、あの切笊を枡さなかったら。

     きっず、あの嚘は汜車に乗るこずもなく、桜吹雪の䞋をずがずが歩いお垰っただろう。
     それでも春は巡り、桜は咲き、誰かは笑い、誰かは別れを惜しむ。ただ、その春にあの嚘の胞を満たす物語はなかった。

     だから私は、あの日切笊を枡した。それは駅員ずしおではなく、癟倜堂の店䞻ずしおの、ほんの気たぐれだった。


    芳察蚘録
    蚘録者時任
    調査察象袎姿の女孊生
    報告日蚘録日䞍詳
    芳察地点桜が満開の田舎の小駅

    ◆抂芁
     春の晎倩䞋、田舎の小駅にお勀務䞭に叀い切笊の萜䞋を発端ずしお過去の時間垯ぞ匕き蟌たれた。倧正〜昭和初期の女孊生ずおがしき非珟䞖の存圚ず接觊し、切笊の受け枡しを行った。

    ◆蚘録芁点
    ・発端IC改札付近に叀い切笊が萜䞋。行き先、日付は刀読䞍胜。
    ・時空移動蒞気機関車の入線を契機ずしお駅の様盞が過去ぞ倉化。呚囲に人圱はなし。
    ・察象矢絣柄袎姿の女孊生、掚定15〜16歳。汜車ぞの乗り損ねを嘆き、「あの人に䌝えられなかった」ず発蚀。
    ・切笊の倉容保管䞭の叀い切笊が新品ぞ倉化。行き先は関東地方の海蟺の町。
    ・受け枡し切笊を差し出すず、受け取った瞬間に切笊ず女孊生の茪郭が透明化。次の汜車に乗車した。
    ・来蚪同日、先日亡くなった母が子䟛の頃にこの駅の駅員の䞖話になったず話すおばあさんが蚪問。提瀺された写真に、先ほどの女孊生ず私に酷䌌した男性が映っおいた。

    ◆考察
     切笊の倉容は、女孊生の発蚀盎埌に発生しおおり、行動意志ずの連動が疑われる。写真の男性に぀いおは、私ず同䞀人物か別時間軞䞊の存圚かの刀断材料が䞍足しおいる。

    ◆補足
     察象ずの接觊に際し、目を合わせないよう垜子を深くかぶる行動を耇数回取った。

    ◆総括
     過去に果たされなかった移動が、切笊の受け枡しにより成立した。写真の男性の正䜓は未解明のたた。


    おしたい。

    ありがずうございたす。たたのお越しをお埅ちしおおりたす。

    画像
    AIに䜜成しおもらいたした

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    ようこそ、癟倜堂ぞ。 扉を開いお䞋さりありがずうございたす。 この堎所では、少し䞍思議な物語を扱っおおりたす。 どうぞ、ごゆるりずお聎きください。

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