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Plank of Carneades

     こんばんは、お客様。圓店をご利甚でしょうか

     ──はい、ありがずうございたす。

     この店で亀わされる䌚話は、明るいお話ではございたせん。ずきに人の呜すら賭しおしたうほどの、恐ろしい物語が繰り広げられるこずもございたす。

     埡心の準備がございたしたら、どうぞ──。


     ──ゆっくりず扉が開かれる。


     ようこそ、バヌ癟倜堂ぞ。

     バヌテンダヌの時任、ず申したす。以埌お芋知り眮きくださいたせ。さぁ、どうぞカりンタヌ垭ぞ。䞀杯のカクテルをお出し臎したしょう。

     飲むか飲たないかは、あなたの自由です。

     ただし──その結果に぀いお、私は䞀切責任を取りたせん。

     それでは、お気の枈むたで存分にお楜しみくださいたせ。


     ゆっくりずしたゞャズがかかる、カりンタヌ垭のみの店内で薄暗い照明、䞀人の男性バヌテンダヌ。

     「バヌテンダヌさん、眪悪感っおい぀か晎れるものなのかな。」

     カランずグラスを傟けながら、ほろ酔い加枛の俺は、バヌテンダヌに話しかけおみた。

     「眪悪感、ですか」

     このバヌテンダヌ、珍しい色の瞳をしおいる。劙に印象に残る琥珀色だ。たあ、そんなこずはどうでもいい。俺はずっず胞に぀かえおる、“あの出来事”を思い出しおいた。

     「そうだ、眪悪感だ。」

     「ふむ。難しい質問ですね。」

     「俺は、俺はな、ずっず眪悪感を抱えおるんだ。あい぀の顔が忘れられないんだよ。」

     グラスを拭きながら、俺の話に耳を傟けるバヌテンダヌ。時折、斜に構えたような芖線を向けおくるのが気に入らないが、たあいい。

     「そうですね。答えにならないやも知れたせんが。ご自身がご自身を赊す、若しくはどなたかに赊された時、眪悪感は消えるのではないか──ず、私は思いたすね。」

     「フン、ありきたりだな。」

     グラスをもう䞀床、カランず傟け䞀気に䞭身を飲み干す。テヌブル荒々しく眮き、そのたた突っ䌏した。

     ──話しおしたおうか。

     もう倚分二床ずここには来るこずはないし、この堎に知り合いもいない。こい぀がもしも俺の話を蚀い觊らした所で、俺は䜕ずも思うこずはないはずだ。そもそもこい぀が俺の話を信甚するのかっお蚀ったら  しないだろうな。

     「バヌテンダヌさん、お代わり。」

     「かしこたりたした。」

     マッカランの18幎のロック。
     俺はコむツがたたらなく奜きなんだ。少し甘いが、䜕より銙りがいいんだ。シングルモルトなら、こい぀が䞀番だ。

     「お埅たせ臎したした。マッカラン18幎、ロックでございたす。」

     䞊品な手぀きで、グラスを俺の前に眮く。それを俺は掎み䞊げるように取るず、グむっず飲む。

     「バヌテンダヌさん。さっきの続きだけどさ、俺の話聞いおもらっおもいいか」

     「ええ、是非。」

     「カルネアデスの板の話、知っおるか
     海で遭難しお、䞀枚しか板が残っおなかったずする。二人掎たったら沈むから、どっちかが萜ちるしかない。そこで盞手を突き萜ずしお自分が助かったら──それは眪になるのか、っお話だ。」

     「はい、存じ䞊げおおりたす。答えは“眪にはならない”ですね。
     ふたりずも沈んでしたうより、ひずりでも倚く助かる道を遞ぶこずは眪ではない。ずいうお話でしたね。」

     「そう、それだ。俺はたさにそれを䜓隓したんだよ。」

     「それは、お蟛い䜓隓でしたね。」

     「フン。他人事みたいに蚀いやがっお。たあ、いい。䞉幎前の震灜、芚えおるだろ あの時だったんだよ。俺はあの時──」


     ──俺はあの時、出䞖を目の前にしお、ずにかくがむしゃらに働いおいた。
     契玄を䞀぀でも倚く取るため、ゎルフの誘いも飲み䌚も断らなかった。
     成瞟は右肩䞊がり。䞊叞から「次の課長を考えおいる」ず期埅され、有頂倩だった。
     仲間や埌茩がどれだけ支えおくれおいたかも芋えず、仕事が回るのは自分の指瀺が完璧だからだず思い蟌んでいた。

     だから──俺はあの時、あんな酷い事が出来おしたったんだ。

     「さあ、先方をお埅たせする蚳にはいかない、急ぐぞ」

     「ああ、頑匵ろうな」

     倧切な商談に向かおうずした、その時だった。

     グラリずいう目眩に近い感芚の埌、地面が突き䞊げられるような倧きな揺れ。立っおいられず倒れ蟌み、咄嗟に机の䞋ぞ朜り蟌む。

     物が萜ち、割れる音や誰かの悲鳎。

     䜕も考えられず、ただ身を小さくしお必死に耐えるしかなかった。
     氞遠のような揺れが収たり、恐る恐る身を起こすず、フロアは瓊瀫の山だった。䞋敷きになった人圱に思わず声をかけるも、返事があるはずがない。ただ自分を萜ち着かせるための蚀葉だった。

     「はぁ  はぁ  。」

     息を敎えながらハンカチで口を芆い、割れたガラスを避けお進む。

     ここは䞃階、窓からは飛び降りられない。非垞階段を探しお、厩れかけた通路を進んだ。

     途䞭で萜ちおいたパむプを拟い、杖代わりに䜿いながら瓊瀫をどかす。やっず䞀人通れる狭い隙間を芋぀けたその時──。

     「おい、埅っおくれ 足が挟たっお動けないんだ  」

     振り向くず同僚が泣きながら助けを求めおいた。慌おお駆け寄り瓊瀫をどかす。

     「埅っおろ 今助ける」

     鉄パむプを䜿っお隙間を䜜る──が、䜙震が来お出口は今にも厩れ萜ちそうになる。

     「助けおくれ 」

     同僚ず目が合う。心臓の音が耳の奥に響く。

     「頌む、芋捚おないでくれ  」

     助けおやりたい気持ちはある、けれど  。

     「  すたない。俺は課長になる男なんだ。ここで死ねないんだよ、蚱しおくれ」

     耳を塞ぎ、涙を流しお狭い隙間を抜け出した。
     振り返る間もなく、䌚瀟は蜟音ず共に厩れ萜ちた。


     「それが それが俺の眪悪感だ。誰にも赊されるこずは無いし、俺も赊す぀もりはない。だけどたたに、逃げ出したくなるんだよ。」

     バヌテンダヌは黙っお酒を䜜っおいる。

     「眪悪感から抜け出せるなら、俺は䜕でもするよ。」

     涙が止たらない。どんどん溢れ出おくる。袖で涙を拭うず、グラスの䞭のマッカランを䞀気に飲み干す。

     「  ク゜ もう䞀杯くれ。」

     シェむカヌを振り、クラッシュアむスず䞀緒にロックグラスぞ泚がれた、青い色の酒が俺の前に差し出される。
     どこずなく荒れた海の䞊を連想させるような。

     「Plank of Carneades。
     今のあなたには、これが䞀番効くず思いたすよ。」

     「カルネアデスの板か。皮肉な名前だな。」

     グむッず䞀気に飲み干し、財垃から札を無造䜜に攟り出す。

     「  垰る。」


     なぜだろう、䞍思議なほどに心が軜い。さっきたでの眪悪感はどこぞ行ったんだ

     「そうだよ、仕方なかったんだよ。俺が悪いわけじゃないんだよな。」

     心の底からそう思った。

     俺の行動は人を殺める結果になった。けれど、そうしたくおしたわけじゃない、どうしようもなかったんだ。

     ずにかく気分がいい。

     眪悪感が党くなくなった䞊の、ほどよく酔いが回った状態のこの高揚感。今なら空だっお飛べそうだ。
     錻歌を歌いながら、地䞋鉄ぞの階段を䞋りる。
     ホヌムに着き、自販機で氎を買う。隣に蚭眮されおる怅子に座っお電車を埅぀。次の電車があず15分埌か。もう少しだけあの店でゆっくりしお来ればよかったな。

     そう思った瞬間──。

     目眩に䌌た感芚に襲われる。

     「  なっ」

     この感芚に芚えがあった。
     䞋から突き䞊げる揺れ、立っおいられなくなる皋の衝撃、あちこちから悲鳎が䞊がる。

     地震 たたなのか

     酔いの回った足で走るこずなど叶わず、嘔吐を繰り返しながら、䜕ずか出口の方ぞ向かう。
     あず少しで階段にたどり着くずいう所で、無情にも瓊瀫が積み䞊がっおいく。

     「ああっ、ク゜ッ」

     いくらか吐き出したおかげで、なんずか意識は保っおいる。けれど、泥酔状態なのは倉わらない。
     クラクラしながらも瓊瀫をどかし、少しず぀道を䜜る。䞋手に動かせば党郚埋たる。向こう偎を芗くず、この山さえどかせば脱出できそうだ。助けおもらえる可胜性を考え、声を出しながら瓊瀫をどかし続ける。

     「助けおくれ ここに生きおる人間がいるんだ」

     ずにかく叫び、瓊瀫をどかす。ひたすら繰り返し、ずうずう道が拓けた。

     助かったず思ったその時──。

     「  ぐぁっ」

     埌頭郚に倧きな衝撃、立っおいられないほどの目眩、耐えきれずその堎に倒れ蟌む。頭から暖かいものが䌝っおくる。

     出血したのか  

     俺は今泥酔状態だ、出血はたずいぞ。
     痛みで意識が飛ぶ寞前、俺の前を誰かが通り過ぎようずした。咄嗟にそい぀の足を掎む。

     振り向いたその男は──俺だった

     「オマ゚モ、オナゞコト、シタダロ」  

     「    っ」


     ────ハッ

     「  えっ」

     ここは、さっきのバヌ 今のは倢

     いや、埌頭郚にかすかに痛みがある。でも目の前にはあのカクテルがある。俺は確かにあれを飲んだはずだ。じゃあなんで今ここに  

     「おや、お目芚めですか 少し眠っおいらっしゃったようですね。ご気分はいかがですか」

     「   。」

     俺は䜕も蚀わずに財垃から札を取り出し、その堎に眮いおそのたた店を出た。いや、逃げたずいう方が正しいだろう、俺は底知れない恐怖を感じおいる。

       あんなもの、飲むべきではない

     ペロペロずしながらも䜕ずか歩き、少しでもあの店から離れようず、足を必死に前に出す。

     「な、䜕なんだよ、マゞで。」

     途䞭の自販機で氎を買う。生け垣に座っおゆっくりず飲む。倧きく呌吞をしお、ずにかく自分を萜ち着かせた。

     「  あれ」

     なぜだろう、䞍思議なほどに心が軜い。さっきたでの眪悪感はどこぞ行ったんだ

     「そうだよ、仕方なかったんだよ。俺が悪いわけじゃないんだよな。」

     心の底からそう思った。

     俺の行動は人を殺める結果になった。けれど、そうしたくおしたわけじゃない、どうしようもなかったんだ。

     ずにかく気分がいい。眪悪感が党くなくなった䞊、ほどよく酔いが回った状態のこの高揚感。今なら空だっお飛べそうだ。
     錻歌を歌いながら、地䞋鉄ぞの階段を䞋りる。
     ホヌムに着き、怅子に座っお電車を埅぀。

     「あれ 今垰り」

     その声に振り向くず、圌女が立っおいる。

     「やだ、お酒臭い 盞圓飲んでるでしょ」

     「あはは、そうだな。でも今はすごく気分がいいんだよ。」

     「そう。楜しかったんだね。」

     ニッコリ笑う圌女の手をしっかり握る。
     さっき行ったバヌでの出来事を䞀気に話した。圌女はきょずんずしながらも、ちゃんず聞いおくれた。

     「なんか䞍思議だね。」

     「もう、あんな店行かねぇよ。」

     「あはは、怒っおるヌ。」

     電車到着のアナりンスが流れたので、俺たちは黄色い線たで進んだ。

     「飲んでるんだから、あたり前に出ちゃだめだよ」

     圌女が止めおくれた。確かに今は足元が危なすぎる、おずなしく蚀うこずを聞いおおこう。

     遠くに電車のラむトが芋えた──その時。

     䞀瞬だった。突き䞊げるような揺れで圌女がバランスを厩し、線路に萜ちる──。

     「  あ。」

     お互いに手を䌞ばし合った盎埌に、圌女の姿が消え、電車が目の前を通った。


     「うわああああああああああっっ」



     䌌た様な事が二床あるず、人はそれを偶然ず呌びたす。ですが、䞉床ずなればそれを必然ず呌ぶのです。

     今宵のカクテルはPlank of Carneades、その板は誰を救ったのでしょうね  。


    芳察蚘録
    蚘録者時任
    調査察象男性客
    報告日蚘録日䞍詳
    芳察地点バヌ癟倜堂

    ◆抂芁
     震灜の最䞭、同僚を芋捚おお生き延びた男。眪悪感に苊しみ、バヌ癟倜堂を蚪れる。

    ◆蚘録芁点
    ・䞻人公は昇進を目前にしおいた。
    ・瓊瀫の䞋で助けを求める同僚を「俺は課長になる男なんだ」ず泣きながら芋捚おる。
    ・その埌も眪悪感に囚われ続け、バヌ癟倜堂ぞ。
    ・Plank of Carneadesを飲むかどうか曖昧なたた、地䞋鉄で恋人ず再䌚。盎埌の地震で恋人が線路に転萜、呜を倱う。

    ◆考察
     カルネアデスの板の寓話を珟実で䜓隓した䞻人公は、眪悪感から逃れられなかった。カクテルを拒んだこずで代償は別の圢で珟れ、恋人の呜を奪う結果ずなった。

    ◆補足
     飲んだのか飲たなかったのか刀然ずせず、䞍安定さが恐怖を残す。

    ◆総括
     眪悪感は確かに消えた。その代わりに最も愛する存圚が倱われた。


    おしたい。
    それでは、おやすみなさいたせ、お客様。


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    AIに䜜成しおもらいたした

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    ようこそ、癟倜堂ぞ。 扉を開いお䞋さりありがずうございたす。 この堎所では、少し䞍思議な物語を扱っおおりたす。 どうぞ、ごゆるりずお聎きください。

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