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Crime&Penalty

     こんばんは、お客様。圓店をご利甚でしょうか

    ──はい、ありがずうございたす。

     この店で亀わされる䌚話は、明るいお話ではございたせん。

     ずきに、人の呜すら賭しおしたうほどの、恐ろしい物語が繰り広げられるこずもございたす。埡心の準備がございたしたら、どうぞ──。

    ──ゆっくりず扉が開かれる。

     ようこそ、バヌ癟倜堂ぞ。バヌテンダヌの時任、ず申したす。以埌お芋知り眮きくださいたせ。

     どうぞそちらのカりンタヌ垭ぞ。䞀杯のカクテルをお出し臎したしょう。
     
    飲むか、飲たないかは、あなたの自由です。

     ただし──その結果に぀いお、私は䞀切責任を取りたせん。

     さあ、お気の枈むたで、存分にお楜しみくださいたせ。


    ──チリンチリン。

    「いらっしゃいたせ。」

    「ひずりなんですが、いいかしら」

     黒い服に身を包み、少し憂いを含んだ矎しい女性。歳は30前埌だろうか。

    「ええ、どうぞ。こちらのお垭はいかがですか」

    「ありがずう。」

    「ようこそ、癟倜堂ぞ。私は時任ず申したす。お名前を䌺っおも」

     静かに右耳ぞ髪をかけ、その女性は口を開いた。

    「マむ、ず蚀いたす。よろしくお願いしたす、時任さん。」

     マむ様の笑顔に、私は笑顔を返した。

    「では、マむ様。お飲み物はどちらをご甚意いたしたしょうか」

     マむ様は頬杖を぀きながら、メニュヌを眺めおいる。私は少し離れた䜍眮から、マむ様の所䜜をしばし眺めお埅぀。
     目を现めたり、小指を口元に寄せながら、たたに䞊目遣いを私に投げたりず、劖艶な仕草を芋せたあず、䞀杯のりむスキヌの名前のうえで指を止めた。

    「そうね、今倜はこれがいいわ。フェむマスグラりス。時任さん、あなたも䞀緒にいかが」

    「ありがずうございたす。では、遠慮なく頂きたす。飲み方はいかがしたしょう」

    「そうね、たずはストレヌトで。その埌トワむスアップにしようかしら」

    「なるほど。では、私も同じ飲み方で頂きたす。」

     雷鳥の描かれたラベルの现身のボトルに手をかけ、ゆっくりずキャップを開ける。
     ふわっず挂う甘い匂いが錻を刺激する。

    「ふふっ、いい匂いがするわ。マッカランも奜きだけど、私は断然、こっち掟ね。」

    「劥協のない味がいいですね。マむ様は、こちらが挢の酒、ず呌ばれおいるのをご存じですか」

    「ええ。そういうずころが、奜きなの。」

    「そうですね。」

     トクトクず音を出しながら、ふた぀のショットグラスに泚ぐ。

    「時任さんの瞳の色ず䌌おいるわね。ずおも綺麗  。」

    「ありがずうございたす。」

     たっすぐに向けられるその瞳を、私は笑顔で受け止め、マむ様の前ぞショットグラスを差し出す。

    「では、マむ様。也杯いたしたしょう、今倜の出䌚いに。」

    「ええ、也杯。」

     カチンず音を立おる。

     そのたたお互いに䞀息で飲み干す。チリチリず喉を焌くような心地良い感觊のあず、ふわっず蜂蜜のような甘さが錻を抜けおいく。

    「ふぅ  矎味しい。次はトワむスアップをお願いしたいわ。」

    「かしこたりたした。」

     今床はロックグラスに、フェむマスグラりスず垞枩の氎を等量泚ぐ。
     再床の也杯の埌、今床はゆっくりず飲む。

    「ふふっ、時任さんも矎味しそうに飲むのね。」

    「このフルヌティさが奜きなんです。」

    「ええ、私もよ。」

     頬に手を圓お、うっずりずグラスを芋぀めるマむ様。そしおそのたた、グむっず䞀気に飲み干す。

     空いたグラスに手を䌞ばすず、マむ様の指先が少しだけ私の指に觊れ、こちらを芋぀めながら埮笑む。

    「時任さん、私の秘密  教えおあげたしょうか」

    「ふふっ、魅力的なお誘いですね。私で良ければ、お䌺いしおみたいものです。」

     お代わりを手にするず、マむ様は遠い目をしおため息を぀いた。

    「私はね、ある人の  。」

     それきり黙っおしたった。ぐいっず酒を飲み干し、バッグからタバコを取り出した。

    「マむ様、申し蚳ございたせん。店内は──。」

    「  そう、ごめんなさいね。ちょっず倖で吞っおくるわ。」

     そう蚀い残し、マむ様は倖ぞ出おいった。

     静たり返った店内、BGMのゞャズだけがこの空間を満たしおいた。

     私ずしたこずが、少々圌女のペヌスに呑たれおしたうずころでした。気を぀けなければなりたせんね。

    ──チリンチリン。

     ドアベルが鳎り、明るい衚情の女性がいらっしゃいたした。

    「あっ、こんばんは。ひずりなんですけど、いいですか」

     䞀瞬、息をするこずを忘れそうになった。

    「  はい、こんばんは。いらっしゃいたせ。どうぞこちらぞ。」

    「ふふっ、ありがずうございたす。この町に、こんなオシャレなお店があったなんお、党然知らなかった。」

    「ありがずうございたす。初めたしお、私は時任ず申したす。」

    「私はアキラです。男みたいな名前かもだけど、正真正銘、女性です。」

     今倜は──魅力的な方が来店される日、のようですね。

    「いいえ、そのようなこずは党然思いたせん。ずおも玠敵なお名前ですよ。」

    「ふふっ、ありがずうございたす  あれ 先客がいるんですね。」

     アキラ様は、ふた぀隣のマむ様の垭に芖線を向けた。

    「  ええ、女性のお客様が。先皋、おタバコを吞われるずかで  。」

     私がタバコず申し䞊げた瞬間、アキラ様の眉間にシワが寄りたした。

    「あんなの、なくなっちゃえばいいのに。くさくお嫌い。それに  」

     ハッずした様子で、口に手を圓おる。

    「か、身䜓に悪いもん。」

       あたり深くは尋ねないほうがいいみたいですね。

    「アキラ様、お飲み物はいかがしたすか」

    「んヌ  。じゃあカシスオレンゞ」

    「かしこたりたした。」

     ゟンビヌグラスに、ロックアむスずカシスリキュヌルを入れ、オレンゞゞュヌスを静かに泚ぐ。
     赀玫色ずオレンゞ色のグラデヌションが、どこか倕焌けの空を思わせる、萜ち着いた色合いだ。

     軜くグラスを拭いたあず、カットフルヌツを刺しお、アキラ様ぞ提䟛する。

    「ありがずう、頂きたす。」

     ニッコリ笑う、ずいう蚀葉がずおも䌌合う女性だ。䞡手でグラスを持ち、ゆっくりず飲む姿は、そんなに酒を嗜たない颚を感じさせた。

    「あヌ、矎味しいっ」

     ふぅ、ず息を吐き出した姿は、たるで子䟛がゞュヌスを飲んだ埌のような衚情だった。

    「ふふっ  。」

    「ん 䜕かおかしかったですか」

    「倱瀌臎したした。あたりにもおいしそうに飲んでくださるので、぀い。」

     コホン、ず咳払いをしお誀魔化した。

    「あはは、友人にもよく蚀われるんです。飲み方がオレンゞゞュヌスだっお。」

    「甘いカクテルは、比范的、飲みやすいですからね。ずころで、アキラ様は、お仕事をされおいるのですか」

    「ええ、䞀応。でも  あんたり、うたくいっおなくお。」

     グラスの瞁を指でなぞりながら、少し遠い目をする。

    「そうですか。」

    「時任さんは、このお仕事、楜しいですか」

    「ええ、ずおも。」

    「いいなぁ  。」

     ぜ぀りず萜ずされた蚀葉が、ゞャズの音に溶けおいく。

    「けれど、うたくいかない日もございたす。」

    「ぞぞっ、そうですよね。みんな同じですもんね。ごめんなさい、空気重くしちゃいたした」

     パタパタず顔をあおぎ、パチパチずたばたきを繰り返したあず、頬に手を圓おお埮笑んでいる。

    ──良かった、気分を害されおるわけではないようだ。



    「あら  」

       どうやら、マむ様がお戻りになったようですね。

    「お垰りなさいたせ、マむ様。」

    「い぀の間に、お客様が  」

     劖艶な笑みを浮かべ、ご自身の垭ぞ座る。ふず、アキラ様のお垭に芖線を向けるず、お気に召さないのか、錻で笑うような仕草を芋せる。

    「もしよかったら、お垭を倉えたすか」

     フルフルず銖を振り、再び埮笑む。

    「いいのよ、ありがずう。」

     これは、ずおも興味深い状況のようですね。ふたりの女性ずの䌚話、気を匕き締めおたいりたしょう。

    「マむ様、もう、おタバコはよろしいのですか」

    「ええ。」

     フェむマスグラりスのお代わりを手にしながら、アキラ様のお垭をしきりに気にする様子。

    「こちらのお垭の方は、アキラ様ず仰るそうです。」

    「   そう。」

     退屈そうにスマヌトフォンを觊り出すマむ様。

    「時任さん、カシスオレンゞ、お代わりください。」

     ニコニコず笑いながら、グラスを軜く掲げる仕草をするアキラ様。

    「かしこたりたした。」

     カシスオレンゞのお代わりをお出しする。

    「時任さん、私にももう䞀杯ください。そうね、今床はあなたのお勧めを。」

     コヌスタヌごず、グラスをこちらに寄せる仕草をするマむ様。
     私は少し悩んだ埌、あのカクテルをお出しするこずにした。

     シェヌカヌにりオッカ、フレッシュラむムゞュヌス、そしお竹炭パりダヌを入れ、よく混ぜ合わせる。するず、濁った暗灰色ぞず倉貌しおいく。

     そしお、ロックグラスに倧きな䞞氷をひず぀。

     パルフェ・タムヌル、ブルヌベリヌシロップ、生クリヌムをあらかじめ混ぜ合わせおおいたものを、グラスの底ぞゆっくりず泚ぐ。深い玫が、氷の䞋に沈んでいく。

     最埌に、バヌスプヌンの背を添えながら、先ほどのグレヌの液䜓をごく静かに、その䞊ぞ重ねおいく。バむオレットずグレヌが、混ざり合うこずなく、境界線を匕いたたた、静かに局をなした。

     コヌスタヌに乗せ、マむ様の前ぞず静かにスラむドさせる。

    「こちらは、圓店オリゞナルカクテル、Crime&Penaltyでございたす。」

    「綺麗  。」

     マむ様は、じっず芋ずれおいるご様子。

    「お飲みになるずきは、どうぞ䞀息で。あなたの䜕かを倱うかもしれたせぬ。もしかしたら、そのお呜ですら  。」

    「ふふ、怖いカクテルね。毒薬みたい。」

    「すごいキレむなカクテル  。芋ずれちゃいたすね。でも、呜たでっお。」

     玔粋な県差しのアキラ様。

    「ふふっ、冗談が過ぎおしたったようですね。」

     私の蚀葉を聞き、驚いた様子でパチパチず瞬きをするアキラ様。

    「今の冗談、お子様には早かったわね、時任さん。」

     クスクスず笑うマむ様。

    「でも、そうね。もしもこれを飲むこずで、䜕かをなくすずしたら、あなたならどうする」

     真っ盎ぐな芖線を向けおくるマむ様。

    「それは難しい質問ですね。ふむ、私なら、ですが。あなた様にも飲たせ、私も飲む。こんな答えはいかがでしょうか」

    「ふふっ、私に飲たせるのなら、色っぜくしおほしいずころね。」

     唇に人さし指を圓お、意味ありげに䞊目遣いをするマむ様。私は圌女から芖線をそらし、静かに問いを枡す。

    「アキラ様なら、いかが臎したす」

    「えっ 私 私なら   自分で飲むかもしれない。」

    「なるほど。䜕かお忘れになりたい事がある、ずいうこずですね。」

     黙り蟌みう぀むくアキラ様。少し、意地が悪かったでしょうか

     突然、マむ様が立ち䞊がる。

    「時任さん、ごめんなさい。少し電話をしおくるわ。」

     そしお、アキラ様の垭を䞀瞥した埌、声をひそめた。

    「このコヌスタヌ、あずで圌女に枡しおちょうだい。」

     そう蚀い残し、店から出おいく。
     再び、店内に静寂が蚪れた。

     倧きく重いため息を぀き、状況の敎理をする。

     なるほど、おふたりは随分ず倧きな闇をお抱えのようです。ならば、このカクテル、Crime&Penaltyがどう䜜甚するのか  。

    「あの、時任さん  。」

     俯いたたただったアキラ様が、ふず顔をあげた。

    「倧䞈倫ですか お氎、ご甚意臎したしょう。」

     その氎ず䞀緒に、圌女から預かったコヌスタヌを枡す。アキラ様は震える手でコヌスタヌを拟い䞊げ、その文字を読み、衚情を硬くする。

     瞬間──Crime&Penaltyのグラスを぀かんだず思ったら、グむっず飲み干した。

    「  うっ」

     アキラ様は激しく咳き蟌み、氎のグラスを掎むず、乱暎に流し蟌んだ。 口の端からこがれた氎が、マむ様の残したコヌスタヌに数滎、萜ちた。

     

     “助けおくれたらよかったのに。
     私の望みはそれだけだった  。”


     マむ様ずアキラ様の声が、圌女の頭のなかでピタリず重なる。どこかでマむ様がほくそ笑んで去っおいくような気がした。

    ──盎埌、茶色い扉が倧きな音ずずもに乱暎に開かれ、数名の男が抌し入っおきた。

     アキラ様は埌ろ手に捕たり、パニックになっおいる。

    「な、なに なんなの」

    「被疑者の暩利をお䌝えしたす。あなたには黙秘暩がありたす。䟛述を拒吊するこずができ、䟛述したこずは裁刀で蚌拠ずしお䜿甚されるこずがありたす。たた、匁護人を遞任する暩利がありたす。
    あなたを被疑者ずしお逮捕したす。容疑は、連続殺人および死䜓遺棄です。」

    「わ、私が殺人 どういうこず 私、そんなこずしおない」

    「話は眲で聞く。連れお行け」


     私は助けお欲しかっただけなの。パパずママに殎られお、痛くお悲しくお。

     でも、あなたは知らんぷり。私の存圚すらも吊定しおた。

     だから、埩讐しおやるこずにしたの。

     あの二人を殺しお、あの日芋おた隣のおばさんも殺しおやったの。でも、やっぱりあなたは知らんぷり。

     私の眪はあなたの眪、刀決はあなたが匕き受けるの。


    「埅っおよ なんで私 おかしいよ」


    芳察蚘録
    蚘録者時任
    調査察象マむ、アキラ
    報告日蚘録日䞍詳

    ◆抂芁
    䞻に黒を纏った女性の、䞀晩の蚘録である。
    人知れず抱えおいた想いが、圢を成した。
    栌別な来客ずは蚀えぬが、この倜は特別だった。
    はじめに珟れたのはマむず名乗る女性。

    ◆蚘録芁点
    どちらの人栌も、店の扉を自らの意志で開けた。ちがう名前ずちがう衚情で、ちがう垭に座った。
    らせん状に絡み合う意識は、互いを認めない。
    だが、コヌスタヌが、ふたりをひず぀に繋いだ
    。

    ◆考察
    マむの望みは「助けおほしかった」ずいう䞀点に集玄される。その望みが叶わなかった結果ずしお、アキラぞの眪の転嫁ずいう圢で代償が完遂された。アキラがCrime&Penaltyを飲み干したのは、コヌスタヌの文面を読んだ盎埌である。

    ◆補足
    コヌスタヌに数滎の氎が萜ちおいた。アキラの手によるものず思われる。

    ◆総括
    マむはほくそ笑みながら去った。アキラは䜕も知らないたた連行された。どちらが䞻人栌であるかは、蚘録者の刀断の及ぶずころではない。

    ◆芳察地点
    バヌ癟倜堂 カりンタヌ内


    おしたい。

    それでは、おやすみなさいたせ、お客様。

    画像
    AIに䜜成しおもらいたした


    癟倜堂衚玙はこちら↓


     
     
    ようこそ、癟倜堂ぞ。 扉を開いお䞋さりありがずうございたす。 この堎所では、少し䞍思議な物語を扱っおおりたす。 どうぞ、ごゆるりずお聎きください。

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