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アタシが離婚した理由 ≪4≫

    喜多石 照代

    夫が入院した時、
    義父母が見舞いに来たか
    来なかったか。
    記憶が定かではない。
    でも、言われたことは憶えている。
    「借金を返したらきれいさっぱりだから」
    「全部忘れて仲良く暮らしてね」

    起こったことは消えない。
    日常の些細なことは忘れることができても、
    このことは、忘れないだろう。
    でも、「はい」と言うしかなかった。

    夫に代わって現金自動預け払い機で
    返済する。
    心を無にして紙幣を機械に突っ込む。
    見返りのない支払いは
    ドブに棄てるのと一緒だ。

    夫の車いすを押しながら
    何度も衝動に駆られた。
    このまま、階段から突き落としてやろうか。

    その後、見舞いに来てくれた同僚が
    こっそり打ち明けてくれた。
    夫がポトリと呟いたというのだ。
    「俺なんかあのとき、死ねばよかった」

    本当に反省しているみたいだから、
    許してやってよ、俺からも頼むよ。
    友人は、そう言って帰った。

    義父母から老後の資金をむしりとった。
    結局返すことなど、できなかった。
    孝行することも叶わないまま、
    二人とも逝ってしまった。



     
     
     
    地方の片隅で生息中。 1963年生まれ。 60歳で離婚。 61歳自己免疫疾患罹患。 長い長い心の旅。 心の断捨離。

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