
『ベイマックス』予定外の人生と、心優しいロボットの物語
『ベイマックス』レビュー
先日『ズートピア』のレビューの記事を書きました。
この記事のビューが想像以上に伸びていて、密かに喜びを感じています。
そして、この喜びをモチベーションに変え、また一つ映画レビューの記事を書く事にしました。
今回は同じくディズニー映画『ベイマックス』です。
作品概要と興行収入
映画『ベイマックス』(原題:Big Hero 6)は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが2014年に世に送り出したアニメーション作品です。
興行収入を他の作品と比較してみましょう。
『ベイマックス』の興行収入は、 世界で約6億5,787万ドル、日本では約91.8億円を記録しました。
一方前回ご紹介した、『ズートピア』(2016年公開)は、 世界で約10億2,412万ドルという大ヒットを飛ばしましたが、日本の興行収入では約76.8億円と、『ベイマックス』を下回っています。
世界的には『ズートピア』が優勢でしたが、日本では『ベイマックス』の方がより多くの観客を魅了したことがわかります。
日本人の感覚として『ベイマックス』の方が人気の印象があったので、世界の興行収入は意外な結果でした。
また、歴代のディズニー映画を見ても、『ベイマックス』は素晴らしい成果を上げています。
例えば、『アナと雪の女王』(世界約12.7億ドル、日本約255.0億円)や『アナと雪の女王2』(世界約14.5億ドル、日本約133.7億円)があります。
実写版『ライオン・キング』(世界約16.6億ドル)、そして『トイ・ストーリー3』(世界約10.6億ドル、日本約108億円)といった大作に肩を並べる成功を収めました。

予定通りに行かない人生
原題のBig Hero 6という名が示す通り、この映画の主人公達がヒーローです。
しかし、主人公達は最初からヒーローだった訳ではなく、ヒーローを目指していた訳でもありません。
主人公は14歳の天才少年ヒロです。
彼はロボット開発者として凄まじい才能を持っていましたが、裏路地のロボットファイトに明け暮れ、無為に過ごしていました。
そんなヒロの人生に光を当てたのは、唯一の理解者である兄のタダシでした。
タダシは名門サンフランソウキョウ工科大学に通い、「ベイマックス」というケア・ロボットを開発していました。
そして、弟の才能を『正しく使う』為に、同じ大学に進学するよう誘うのです。
しかし、物語は悲劇的な転換点を迎えます。
大学の発表会で発生した火災により、タダシは突然この世を去ってしまいます。
深い悲しみに沈み、心を閉ざしたヒロの前に現れたのは、タダシが遺した優しさの象徴、ベイマックスでした。
人生は時に思いがけない方向に進むものです。
大切な人を失った悲しみや怒りを乗り越え、ヒロは自らが意図せずヒーローとしての道を歩み始めます。
この「予定通りに行かない人生」の中で、彼は兄の遺志を継ぎ、新たな仲間たちと共に成長していきます。
真のケア
ベイマックスは、タダシが「多くの人を助けたい」という純粋な願いを込めて作り上げた、献身的なケア・ロボットです。
ヒロが兄の死の真相を突き止めるため、当初は復讐心に駆られていたときも、ベイマックスは彼の心と体を「ケア」し続けました。
ベイマックス、そしてタダシの友人たちの支えを通じて、ヒロは真の「ケア」とは何かを学びます。
映画の中で印象的に繰り返される「ベイマックス、もう大丈夫だよ」というセリフは、単に体の怪我が治ったことを示すだけではありません。
この言葉は、ヒロの心が癒され、悲しみや怒りから解放され、前向きに生きていけるようになったことを意味しています。
物語のクライマックスで、ヒロを救うためにベイマックスが自らを犠牲にする場面でも、このセリフが使われます。
それは、ベイマックスが与え続けた真の「ケア」が、ヒロの心に確かに届き、彼を救い、成長させたことの証なのです。
アメコミ×ディズニー
本作は、マーベル・コミックの『ビッグ・ヒーロー・シックス』を原作としています。
アイアンマンやスパイダーマンといった人気キャラクターで知られるマーベル作品が、ディズニーのアニメーション映画として制作されるのは非常に珍しいことです。
この点が、『ベイマックス』の唯一無二な魅力となっています。
原作コミックでは、ヒーローたちが超能力を駆使して戦う、正義と悪の対決が中心であり、ベイマックスを開発したのはヒロとされています。
しかし、映画版ではディズニーならではの「友情」や「家族愛」といった心の交流が深く掘り下げられています。
ベイマックスはタダシが開発したという設定に変更され、アメコミの持つワクワクする要素と、ディズニーらしい温かい物語が絶妙に融合し、多くの観客を惹きつけました。
(原作コミックのリンク)
日本へのリスペクト
この映画を初めて見た時、「まるで日本のアニメのようだ」と感じた方も少なくないでしょう。
私もそうでした。
それもそのはず、『ベイマックス』には日本への深い愛情と敬意が随所に散りばめられています。
まず物語の舞台となる架空の都市「サンフランソウキョウ」は、サンフランシスコと東京が融合したデザインです。
街並みには、東京ならではの路地裏や自動販売機、そして雑居ビルといった細部の特徴がリアルに再現されています。
そして、主人公のヒロ・ハマダは日系人です。
ロボットファイトの主催者であるヤマさんのように、他にも日系キャラクターが登場します。
さらに、ベイマックスの印象的なつぶらな瞳は、「鈴」がモデルになっているという細やかなこだわりも見られます。
監督のドン・ホール氏とクリス・ウィリアムズ氏は、幼い頃に観た『科学忍者隊ガッチャマン』などの日本アニメから大きな影響を受けたと語っています。
特に宮崎駿監督の作品からは、その壮大なスケール、豊かな想像力、そして力強いメッセージに感銘を受けたそうです。
彼らは『ベイマックス』を「日本文化に対するラブレター」として制作し、日本の観客への感謝を表現したかったと語っています。
実際に日本人スタッフも制作に参加し、東京の魅力を細部まで作品に落とし込むことに貢献しました。
また、ディズニーと日本の関係は非常に古く、深い絆で結ばれています。
アメリカ国外で初めて誕生したディズニーテーマパークが東京ディズニーランドであることは、この特別な関係性を象徴しています。
このような背景も、『ベイマックス』が日本のアニメーション文化に敬意を払い、その影響を色濃く反映している理由の一つと言えるでしょう。
『ベイマックス』は、アクション、感動、そして心温まるメッセージが凝縮された、まさにディズニーからの「日本へのラブレター」のような作品です。
少し長くなりましたが、このレビューが、誰かの映画鑑賞のきっかけになれば幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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