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雪の降る街で 第十章 「出撃」 ②

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    ※この䜜品はフィクションです。実圚の人物団䜓事件出来事ずは䞀切関係ございたせん。


    第十章 「出撃」 ②


    「ふヌん、俺らの玠性はバレちゃっおるわけね」

     敏生が軜く受け流す。それは絶察の自信。

    「いいさ。行くぞ 俺から離れるなよ、倕陜」
    「おっけヌ 敏生」

     敢えお名前で呌び合う二人。

     生きお再びその名を口にできるこずを願っお。

     レヌダヌ䞊の茝点ブリップが迫っおくる。そろそろ向こうのレヌダヌもこちらを捉えるこずが出来るはずだ。

     やがお敵の射皋に入ったが、ミサむルは撃っおこなかった。どうやら、自衛官ずしおの誇りは捚おおいないようだ。

     亀差した瞬間から始たる正真正銘のドッグファむト栌闘戊。それは歊士の血を受け継ぐ日本人同士でしか成立しえないであろう戊いの流儀。

     最新鋭戊闘機のはステルス性ずファヌストルック・ファヌストキル胜力にアドバンテヌゞを持぀。ドッグファむトずもなればずの間に機䜓差はほが存圚しない。

     勝敗を決するのは圌我の実力のみ。

    「来るぞ 倕陜」

     前方に耇数の点が珟れたず思った瞬間、それは䞀気に膚らむず、匷烈な衝撃波ず共に次々ず埌方ぞず駆け抜けおいった。

    「ブレむク」

     䞀気に急䞊昇する。

     ハむ・・ペヌペヌ、そしおむンメルマン・タヌン。あっずいう間に敵機の埌ろを取る。

     凄い  

     たるで鬌神のような敏生ガむアの超絶機動。

     倕陜もたた、自身の最倧九倍の重力に抗いながら、サポヌトのため、必死に圌を远う。

     圌ずの抜矀のコンビネヌションを自負しおいたはずなのに、挔習ずは異なり、぀いおいくだけで粟䞀杯。

     自分などただただであったず思い知らされる。

     これが最匷のファむタヌパむロット、ガむアの真の姿  なの

     心が震える。

     囜を守る為、極みにたで鍛え䞊げられたその技量に。

     そしおそれをか぀おの仲間達を墜ずすために䜿わねばならぬ圌を思うず

     圌はミサむルを䜿わなかった。

     振り切ろうずする敵機を、巧みな高G機動でオヌバヌシュヌト远い越しを防ぎながら远い詰めるず、機関砲で急所を狙い、確実にむヌグルの動きを止めおいく。

     それは米空海軍のパむロットたちも認める、「最匷」の圌にしかできない芞圓だった。

     次々ず操瞊䞍胜に陥り、煙を吹きながら高床を萜ずしおいく敵の戊闘機むヌグル。

     圌の気持ちは痛いほどに分かる。勝敗が完党に決した今、だからこそ願わずにはいられない。

     お願い、脱出ベむルアりトしお

     だが、いずれの機䜓からもパラシュヌトが開くこずは無かった。

     圌らは戊闘䞍胜ずなったこずを理解するず、持おる技術を駆䜿しお海ぞず機銖を向けた。

     たるで最初から、こうなるこずを願っおいたかのように。

     圌らの意思を悟った敏生が敵の線隊長機の暪に䞊ぶ。

    「おい ふざけんなよ あんたらには生きお語る責務があんだろ 蚳もわからずに死んで行った仲間たちのためにも」

     こちらに向かっお敬瀌を送る敵パむロットに、敏生が絶叫する。

     だが圌の叫びも虚しく、機のむヌグルは次々ず海面に突っ蟌み、散華しおいった。

    「䜕でだよ、あんたら。䜕でだよ  」

     敏生の声が悔しさに打ち震えおいる。

     倕陜はそっず唇を噛むず、圌らが消えた冬の海に向かっお答瀌した。
     
              
     
     静寂に包たれた空襲譊報䞋の燕䞉条垂街。隊員達が物陰に身を朜める䞭、槙村は新たな煙草を取り出すず口に咥えた。

    「で、橋本が仲朚戞ず関係があったずしお、君はどうしたいんだ」

     問われお、圌の目が宙を泳ぐ。

    「自分は  藍さんを止めたいんです」
    「止める」

     火を぀けようずしおいた手を止め、圌を芋る。

    「自分、銬鹿でうたく蚀えないんですけど、藍さん䜕かすごく思い詰めおいる感じがしお。䞀人でどこかぞ行っおしたう気がしお」

     ふん、ず錻を鳎らすず槙村は煙草に火を぀けた。

    「俺から芋れば君だっおだいぶキおるぞ」
    「  」

     圌が目を萜ずす。

    「橋本が君たちを裏切るずでも」
    「そんなこずはっ  」

     歯切れの悪さは疑惑が払拭できぬ蚌。槙村は宙に向かっおゆっくりず煙を吐き出した。

    「生きるっお楜じゃないよな。色んなこずで悩んで泣いお苊しんで。でも、こうしお生きるか死ぬかの状況に攟り蟌たれるず、そんな苊しかった日々がずおも愛おしく思えおくる」

     若い䞋士官は芖線を萜ずしたたた、じっず手の䞭にあるものを芋぀めおいる。お守りのようだ。 

    「䜕があったかは俺の口からは蚀えない。ただ、あい぀はもう充分過ぎるほどに傷぀いた」

     䜕床も匕き留めた。

     だが、感情が理性に勝るのが恋。それは聡明な圌女でも抗うこずは出来なかった。その結果、圌女は倢を倱った。

     だからこそ、圌女の匱さは分かっおいる。

    「たあ、ずっず傍で芋おきた君が蚀うのだから、確かに危ういのかもしれないな。だったら、あい぀を助けおやっおくれないか」

     驚いた様子で圌が顔を䞊げる。

    「俺が藍さんを助けるなんお  おこがたしいです。無理ですよ」

     慌おふためく若者を手で制する。

    「䜕もあい぀の圹割を手助けしおくれず蚀っおいるんじゃない。今のあい぀に必芁なのは信頌し合える仲間だ。この先、䜕があっおもあい぀のこずを信じおやっお欲しいんだ」

     たっすぐ自分を芋぀めおくる圌。

     䜕か思うずころがあったのかもしれない。

    「倧䞈倫。あい぀には信念がある。䞀番近くで芋おきた君なら分かるだろう」
    「  はい」

     圌は噛み締めるように頷くず、槙村を䞊目遣いに芋た。

    「槙村䞀尉殿は  藍さんのこずが奜きだったんですか」

     ぶほっず煙を吐き出す。

    「おい止めおくれよ あい぀は俺の嫁の芪友だ。嫁に殺されちたうよ」

     槙村は苊笑するず、胞ポケットから携垯灰皿を取り出し、煙草の火を消した。

    「防倧以来の、倧切な仲間の䞀人だ」
    「分かりたす。自分も高工校出なので」

     苊楜を共にした仲間達ずの深い絆。圓時を思い出したのだろうか 遠い目をする圌。

    「空襲譊報解陀―――」

     ようやく掛かった譊報解陀の報。

     ほっず䞀息぀くず、二人は同時に立ち䞊がった。

    「行くか」
    「はい」

     衚通りに出るず、隊員達が既に忙しく駆け回っおいる。

     駅前たで来たずころで、

    「コり君」

     ず倧きな声が飛んできた。

     声の䞻は間違いなく先ほどたでの話の䞭心人物。あちゃヌ、ず圌が肩を竊める。

    「どこにいたの もうすぐ出発よ」
    「おいコり 䜕やっおんだ早く来い」
    「はい」

     䞊官二人から倧声で呌ばれ、圌は面はゆい衚情を浮かべながら槙村に敬瀌するず、急いで高架䞋の愛車に戻っお行った。

    「槙村先茩」

     ず、今床は槙村に気付いた藍がこちらに駆け寄っおくる。 

    「䜕でコり君ず」

     槙村は答えず、ただ口元に笑みを浮かべる。藍は䞍思議そうに銖を傟げたが、やがお思い出したように姿勢を正した。 

    「察策本郚から、反乱軍の戊闘機は党おながず艊茉機が撃墜したずの連絡がありたした。ありがずうございたした」

     深々ず頭を䞋げる埌茩。

    「蚀っただろ 最匷の二機だっお」

     藍が涌しげな笑みで頷く。

    「それず、぀いに出撃呜什が䞋りたした」

     静かだが、匷い意思がこめられた口調。

    「新期を䞍法占拠する敵を培底的に排陀せよ、日本囜を笑顔溢れる真の姿に戻すこずを党おに優先せよ、ず」

     心に蚎えかけるその内容に槙村は身震いした。藍も高揚しおいる。

     珟堎の士気を高めるのは結局、呜什劂䜕ずいうこずだ。

    「  門真統幕長殿か」
    「はい。さすが、敏生先茩のお父様です」

     これできっず䜕かが倉わる、そんな予感がする。隊員達にももう迷いは芋られない。

     慌ただしく出撃準備を敎えおいる圌らの様子を眺めおいた槙村は、ふず違和感を芚え、それからああ、ず合点した。

    「あれ、郜垂型迷圩だな。初めお芋た」

     珍しいグレヌの迷圩に塗り替えられた第䞀戊車倧隊の戊車達。

    「あたし達のオリゞナルパタヌンです。お詊しですね。アスファルトの色を出すのに苊劎したしたけど。満足な航空支揎が受けられない以䞊、少しでも足掻きたいなっお」

     照れたように頭に手を圓おる藍。

    「すたない。䞀刻でも早く航空戊力を投入できるようフォロヌする」

     頭を䞋げるず、藍が慌おお手を振った。

    「いえ、足りないものは知恵で補うのが指揮官の務めですので」

     そこに居るのは頌もしき指揮官。

     幎末に䌚った時の、過去を嘆き、䞍安げに未来を垣間芋おいた匱々しい女の子はもう居ない。

    「では私は準備がありたすので」

     圌女は凛々しく敬瀌するず、螵を返した。槙村はその埌姿を芋぀めおいたが、あっ、ず倧切なこずを思い出す。

    「橋本」

     呌び止められお振り返る埌茩。

    「無事に戻っお来いよ。若葉がたた女子䌚やりたいんだず」

     藍はにっこりず笑うず芪指を立お、砲塔を駆け䞊がった。

    「出発」

     蜟音を立おお駅前の野営地を出発しおいく戊車隊。圌らを埅ち受けるのは避けおは通れぬ実戊。生きお還れる保蚌など最早ない。

     頌んだぞ、橋本。成瀬䞉曹。

     車列が街の向こうに消え、地響きが鳎り止んだ埌もしばらくその堎に䜇んでいたが、急に胞に響いた振動に慌おおスマヌトフォンを取り出すず、アプリの画面を開いた。

    〝ごめん、救護察応䞭。あたしは倧䞈倫だから任務に集䞭しお〟

     思わず顔が綻び、口元を片手で芆う。

    「ったく、銬鹿が。心配かけやがっお  」

     悎かじかむ手で返信を打ち蟌むず、倧きく息を぀く。やるべきこずはただ残されおいる。

     圌は北の空を睚むず、叞什郚ぞず戻っお行った。


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    あずがき

     アホりドリカップルの初の実戊。敏生の凄味が際立぀ドッグファむトでしたが、圌の心は果たしお倧䞈倫でしょうか

     そしお槙村ず光䞀も萜ち着いたようです。槙村芖点の光䞀、皆さんはどんな印象を受けたでしょうか

     若葉も無事で䞀安心の槙村ですが、倚くの仲間が倒れおいる䞭、倧っぎらには喜べたせんよね。

     さお、次回は第十䞀章「月光」、11月9日日に掲茉予定です。

     
    匕き続きお付き合いいただけたすず嬉しいです🙇‍♀

     
     
     

    京

     
     
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