
街灯
それがいつから、なぜそこにあったのか。
もう誰も覚えていない、古い街灯の話。
(所要時間:約2分)
街 灯
それがいつから、なぜそこにあるのか。
もう誰も覚えていない、古い街灯
それは、公園と道を挟んだ反対側にポツンと立っている。
そして、昔のように光の輪郭を作ることができなくなっていた。
LEDは、もっと広く、もっと明るく闇を払っていた。
その光は、それの存在する意味すらも一緒に払うようだった。
いっそ、もっと、もっと古ければ、
“アンティーク”として、人の目を集めただろう。
けれどもそれは、
お洒落ではなく、
明るくもなく、
ただ見窄らしかった。
誰もが、「新しくすればいい」と思った。
公園から響いていた子供の歓声も鳴り止み、
遠くで、車のクラクションが鳴った。
焼け残った赤は、藍色と黒に押し出されようとしていた。
そして、東通りから順にLEDが闇を払い始める。
突然に、頭上から光が降り注ぐ。
しかし、それは、明かりの輪を灯すまで、2度3度と瞬くのである。
その時、通り過ぎようとしていた誰かが、薄ぼんやりとした瞬きに気付いた。
そして、一度だけそれを見上げた。
その人は、薄ぼんやりの正体を確かめると、興味を失いまた歩き始めた。
数日後、それの撤去工事が行われた。
作業は何事もなく半日で終わった。
数十年もそこに立っていたはずのそれは、なんの痕跡も残さず姿を消した。
その日も多くの人が、公園前を通り過ぎた。
けれど、それが立っていたことを思い出す人はいなかった。
翌朝、おじいさんに連れられた柴犬が、ウロウロとそこを歩き回った。
