
3つの行動をチェックするだけで、人材開発が変わる――Fastenalに学ぶ「市場を見つける社員」の育て方
「主体性のある社員を育てたい」
「顧客志向を高めたい」
「問題解決力の高い人材を増やしたい」
HRの仕事をしていると、こうした言葉をよく耳にします。
でも、ここで一つ疑問があります。
その社員は、実際にはどんな行動をしているのでしょうか?
今回は、工業用品メーカーFastenalの顧客現場で働く社員の行動を材料に、この問いを考えてみます。
そして最後に、皆さんの会社でもすぐに使える3つのチェックリストにしてみました。
DashとPeemoがFastenalの社員行動を見てみる
Dash:
Peemo、Fastenalの社員について、今回は何に注目した?
Peemo:
私は公開情報から、社員が顧客の現場で「実際に何をしているか」を調べました。
特に面白かったのは、次の3つです。
① 現場を見る
② 問題を問い直す
③ 顧客のために動く
Dash:
なるほど。
「主体性」「顧客志向」「問題解決力」という言葉を、具体的な社員行動に置き換えられそうだね。
では、一つずつ見てみよう。
CHECK 1 社員は「現場」を見ているか?
Peemo:
Fastenalには、顧客の工場の中に入り、日常的に顧客の仕事を支援する
Onsiteという仕組みがあります。
E-Z Drillの事例では、担当者が工場を毎日訪問し、リーダーや作業者と話しながら、商品の使用状況や不足などを確認しています。
単に「注文を受ける」のではなく、顧客が実際にどのように仕事をしているかを見るわけです。
Dash:
ここはHRにとって重要です。
自社の社員は、
□ 顧客の仕事を直接見る機会がある
□ 顧客と直接話す機会がある
□ 顧客が何に困っているかを知っている
□ 「自社の商品」ではなく「顧客の仕事」に関心を持っている
この4つ、チェックしてみてください。
意外と「顧客志向の研修」をしている会社でも、社員が顧客の現場を見る機会は少ないかもしれません。
CHECK 2 社員は「依頼された問題」を問い直しているか?
Peemo:
nuCampというRVメーカーでは、Fastenalの社員が在庫管理の改善に取り組みました。
でも、単純に「在庫を改善する」のではありません
。
現場を見ると、社員が約14~18キログラムの箱を運んでいました。
そこで、在庫を1か所に置くのではなく、五つの保管場所を設置。
RFID(Radio Frequency Identification:電波を使ってICタグのデータを非接触で読み書きする自動認識技術)を利用したFASTBin(ファステナル社の電子在庫管理システム)も導入しました。
結果として、歩く・待つ・運ぶといった無駄を減らし、年間約14,000ドル(約225万円)のファスナーコスト削減につながっています。
Dash:
ここではPQAの視点が使えます。
顧客から、
「在庫を改善してほしい」
と言われたら、そのまま在庫問題として扱うのではなく、
「本当に在庫が問題なのか?」
と問い直す。
HR担当者の皆さん、自社でもチェックしてみてください。
□ 社員は依頼された問題をそのまま受け取っていないか?
□ 「そもそも何が問題なのか?」と問い直しているか?
□ 現場を見てから問題を判断しているか?
□ 上司や顧客に「別の見方」を提案できるか?
「問題解決力を高める研修」を実施するだけではなく、問題を再定義する行動まで育成対象にできるか。
ここがポイントです。
CHECK 3 社員は「売る」より「顧客の成功」を考えているか?
Peemo:
E-Z Drillの担当者、Riley Flackさんの行動がとても興味深いです。
毎日顧客の工場を訪問し、現場の人たちと話しています。
そして、Fastenalの売上が減る可能性があっても、顧客にとって良い方法なら提案する、とされています。
顧客からは、まるで「自社の社員」のようだという評価も出ています。
Dash:
ここはDialogue Worksの観点から考えると面白い。
売り手と買い手では、当然、立場も利害も違います。
だから、
「どうすればもっと売れるか?」
だけを考えると、対話には限界があります。
一方で、
「どうすれば顧客がもっと成功できるか?」
という問いに変えると、対話の質が変わる。
チェックするなら、
□ 社員は顧客の立場から考えているか?
□ 自社に不利な情報でも顧客と話せるか?
□ 顧客にとって本当に良い提案をしているか?
□ 「売上」と「顧客価値」がぶつかったとき、考えて判断できるか?
です。
では、「飛びぬけたリーダー」の観点では?
Fastenalの事例をThe Extraordinary Leader™ by Zenger Folkmanの視点から見ると、興味深い行動がいくつも見えてきます。
例えば、
問題を発見する。
自分から動く。
顧客にとっての価値を考える。
異なる可能性を考える。
結果につなげる。
こうした行動は、一つの能力だけで説明できるものではありません。
リーダーシップは「役職者だけのもの」ではなく、社員一人ひとりが仕事の中でどんな行動を取るかにも表れます。
ここからHRにとって、面白い問いが生まれます。
HR担当者への3つのチェックリスト
ここまでを、シンプルにまとめてみましょう。
① 現場を見る
□ 顧客・現場を見る機会がある
□ 人の仕事を観察している
□ 現場の声を直接聞いている
② 問い直す
□ 言われた問題を鵜呑みにしない
□ 「本当の問題は何か?」と考える
□ 別の見方を提案できる
③ 顧客の成功を考える
□ 自社の都合だけで判断しない
□ 顧客にとって良い方法を考える
□ 必要なら、自社にとって不都合な提案もできる
さて、皆さんの会社はいくつチェックがつくでしょうか?
人材開発は「研修」だけではない
Fastenalの事例から見えてくるのは、研修プログラムそのものよりも、社員が日常の仕事の中でどんな行動を取るのかということです。
「主体性を高める」
「顧客志向を強化する」
「問題解決力を向上させる」
こうした目標を掲げることは大切です。
でも、その先に、
「その社員は、具体的に何をするのか?」
まで落とし込めているでしょうか。
社員が顧客の現場を見て、問い、考え、動く。
その行動が顧客価値を生み、時には新しい市場機会を発見する。
そう考えると、
Talent Development × Market Development
は、意外に近いところにあります。
HRの皆さん。
まずは、皆さんの会社の社員を、この3つの視点で観察してみませんか?
「見る」
「問い直す」
「顧客の成功を考えて動く」
もしかすると、まだ会社が気づいていない「次の市場」を、すでに社員が見つけているかもしれません。
▼記事はこちら
[https://smartworks.co.jp/fastenal-employee-leadership-insight/]
Akira Chida / Dash
CEO, SmartWorks Co., Ltd.
HLS Global Case Research
Research Support: Peemo / AI Research Partner
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