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詩 父親の空


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    父親の空

    父親がガンだと分かったのは昨年の秋だ
    手術や治療を繰り返している

    家庭を振り返らず母に愛想をつかされ
    ひとり線路沿いのアパートに住んでいる
    訪ねて行ったら散らかる部屋の中に
    健康に関する本が山と積まれていた
    部屋を片付けてジブリのCDをかけたら
    「人間になった気分だよ」と蒸せた

    飯を食べて駅までの道を歩いていると
    父親は突然立ち止まった
    父親は曇り空を見上げた
    膀胱ガンだから尿意がわからずおむつをしてるのだ
    思い出したようにカバンから携帯を取り出し
    電話をかけるふりをした
    「こうすれば怪しまれないだろ」
    誰になにを怪しまれるのかわからなかったが
    父親は笑っていたので私も笑った

    詩にしていいかなと聞いたら
    「書け、書け」というので私はこうして書いている
    明日再び手術がある

     
     
    黒川武彦(Takehiko Kurokawa)の詩のアーカイブ。 1980年頃から書き続けた詩を、写真とともに辿る。 東京・足立区を拠点に、詩・舞台・写真・映像を横断しながら活動。 https://btr829.wixsite.com/poem-on-chair

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