
おかしな子⑪じゅりちゃんへ
小学4年生の頃。
休み時間になると人通りの少ない廊下に女の子達が集まり、じゅりちゃんを中心に女子トークで盛り上がっていた。
いつからか、じゅりちゃんは学校に来なくなった。病気で入院したらしい。
特に見舞いに行くということもなく、私は中学生になった。
ある日、体育館で発表会の練習があった。
ちょうど休憩中で、みんなで走り回って遊んでいた。
その時、じゅりちゃんが来た。
お母さんに付き添われながら、並べられているベンチに座り、走っている私達を嬉しそうに見ていた。
その顔はパンパンに腫れていた。
ふと目が合う。
ニコッと微笑んでくれたように感じた。
なにか声をかけたかった。
でも、何と言えばよいのかわからなかった。
声をかけていいのかどうかもわからなくなった。
だから私は、スッと目を逸らして遊びに戻った。
それからしばらくして、同級生から電話があった。
じゅりちゃんが亡くなったという知らせだった。
お葬式に行くかどうか聞かれた。
「行かない。」
遊びの誘いを断るくらいの軽い感覚で、そう答えた。
実感がなかったからなのか。
死に向き合えなかったからなのか。
今でも、その理由はわからない。
どうしてあの時、行かなかったのだろう。
とても後悔している。
でも、その後悔があったから、 私は今もじゅりちゃんのことを忘れていない。
小学生の頃の文集を開いた。
あの頃、じゅりちゃんはどんなことを思っていたのだろう。
じゅりちゃんの将来の夢は、保母さん。
作文には、体育館の気持ちになって書かれたものもあった。
子どもたちの歌や演奏を見守りながら、
「よくがんばったね」 と声をかけてあげたいと綴られていた。
子どもたちのことが大好きだったんだね。
あの時、声をかけられなくてごめんね。
お葬式にも行けなくてごめんね。
でも、じゅりちゃんのこと、 私はちゃんと覚えてるよ。