
葉蔵は、死にたがりじゃない。――偏愛覚書・No.01:人間失格(太宰治)
偏愛覚書・No.01 標本:葉造『人間失格』(太宰治)
葉蔵は、死にたがりじゃない。
そう気づいたのは、何度目かに読んだときだった。あれだけ生に抗い、酒に溺れ、女に縋り、グチグチと弱音を吐き続けた男が——死にたかったなら、もっと静かに消えていたはずだ。
あれは、甘えだと思う。
生きたいけれど、生き方がわからない。どうしたらいい、と誰かに問い続ける声が、ああいう形になっただけだ。直接「助けて」と言えない人間が、酒と女と自虐という回り道で、それを言い続けていた。
そして、葉蔵のそばにはいつも女の人がいる。
偶然じゃないと思う。葉蔵は感情を隠さない。怖い、辛い、わからない——子供が泣くように、そのまま出してしまう。飾らないから、受け取る側は本物だと知る。だから放っておけなくなる。
面白いのは、葉蔵を救おうとしたのが、いつも自分で立っていられる人間だったことだ。
弱い女が弱い男に縋ったのではない。むしろ、しっかり立っている人間ほど、葉蔵の無防備な弱さに心を動かされることがある。
守りたいと思わせる人間には、才能がある。葉蔵はその才能を、自分では一生わからなかっただろうけれど。
生きたかったよ、きっと。ただ、誰かに「生きていていい」と言ってほしかっただけで。
これは分析じゃない。ただの、偏愛の記録だ。――記録者・やよい
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(あの独特の紙の匂いと、本棚に並べたときの質感がたまらない)
