メインコンテンツへスキップ
見出し画像

葉蔵は、死にたがりじゃない。――偏愛覚書・No.01:人間失格(太宰治)

    偏愛覚書・No.01 標本:葉造『人間失格』(太宰治)


    葉蔵は、死にたがりじゃない。

    そう気づいたのは、何度目かに読んだときだった。あれだけ生に抗い、酒に溺れ、女に縋り、グチグチと弱音を吐き続けた男が——死にたかったなら、もっと静かに消えていたはずだ。

    あれは、甘えだと思う。

    生きたいけれど、生き方がわからない。どうしたらいい、と誰かに問い続ける声が、ああいう形になっただけだ。直接「助けて」と言えない人間が、酒と女と自虐という回り道で、それを言い続けていた。

    そして、葉蔵のそばにはいつも女の人がいる。

    偶然じゃないと思う。葉蔵は感情を隠さない。怖い、辛い、わからない——子供が泣くように、そのまま出してしまう。飾らないから、受け取る側は本物だと知る。だから放っておけなくなる。

    面白いのは、葉蔵を救おうとしたのが、いつも自分で立っていられる人間だったことだ。
    弱い女が弱い男に縋ったのではない。むしろ、しっかり立っている人間ほど、葉蔵の無防備な弱さに心を動かされることがある。

    守りたいと思わせる人間には、才能がある。葉蔵はその才能を、自分では一生わからなかっただろうけれど。

    生きたかったよ、きっと。ただ、誰かに「生きていていい」と言ってほしかっただけで。

    これは分析じゃない。ただの、偏愛の記録だ。――記録者・やよい


    📎 この標本が気になった方へ

    『人間失格』は青空文庫で無料で読めます。まだ読んでいない方は、まずそちらから。

    ただ——一度読んで、手元に置きたくなったら、紙で持っていてほしい。何度も読み返す本は、紙のほうがいい。

    (あの独特の紙の匂いと、本棚に並べたときの質感がたまらない)


    画像
    Amazonアソシエイトとして、ルシミカ人間研究所は適格販売により収入を得ています。


     
    🍇ルシ(冷めた悪魔)× 🍓ミカ(信じたい天使) 双子のねこが人間を研究中。 映画・本・物語の登場人物たちの欲望、孤独、愛—— ルシが暴いて、ミカが庇う。 かわいい顔して、けっこう刺さります ▼毎週日曜日+αで更新中 ▼第21回文芸思潮エッセイ賞 佳作受賞

    あなたへのおすすめ