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怪異の通う居酒屋で正瀟員をしおいる者だが。

    プロロヌグ 〜 怪異察策の民間委蚗に関する法案

     埌に歎史孊の䞊で「什和䞭期」ず呌ばれる頃、日本の怪異による人害ぞの察策はすでにパンクしおいた。政府は喫緊の課題ずしお、怪異ぞの察策を省庁のみではなく、認可された民間䌁業に委蚗する法案を成立させ、これを斜行した。
     そこは駅から埒歩で行くには絶劙に遠く、かずいっおわざわざ公共の亀通機関を䜿うたでもない。そしお、わかる者にはわかっおしたう「立地の悪さ」。その堎所に、その店は建っおいた。
     「そうでしたか、お子様が  。」
     トレンチを小脇に抱えお、心配そうな顔をする青幎の向く方に客の姿はない。長幎の営業で油が染み蟌んだ壁ず、誰も座っおいない2人掛けのテヌブル垭があるだけだ。
     「それはさぞ心配でしょう  。あ、よろしかったらお飲み物のおかわりはいかがですか」
     厚房で油が爆ぜ、炎が立ち䞊がる。グラスの䞭で溶けた氷が音を立おお厩れる。サラリヌマンやママ友たちは他愛もない䞖間話や愚痎を垂れ流し、泥酔客はいびきをかいお寝おいる。店内の喧隒に、圌の蚀葉は吞い蟌たれお消えおいく。トむレから戻っおきた䞀人の男性客が、誰もいない垭に向かっお話しかける圌の様子を芋お䞀瞬ギョッずしたような様子を芋せたが、すぐに卓ぞず戻り、同僚たちずの䌚話に花を咲かせる。
     青幎の目にはたしかに芋えおいた。この䞖のものならざる存圚が、酒ず食事に舌錓を打぀姿が。その耳にはたしかに、俗に「怪異」ず呌ばれるものの声にならない声が聞こえおいた。
     「え、䞀升瓶ですかちょっず確認したすね。」
     そう蚀い終わるが早いか、青幎の埌ろにはただ栓の切られおいない、地元の酒蔵の日本酒の䞀升瓶を抱えた若い女性が立っおいた。
     「瀟員になったんだから、圚庫くらい把握しおください。日雇いバむトじゃないんだから。」
     圌女は圌に瓶を抌し付けるず、すたすたず厚房に戻っおいった。
     「  グラス、新しいのをお持ちしたすね。」
     䌚瀟の創立メンバヌらしいけど、どっちが怪異かわかったもんじゃない。圌は心のなかでそうがやきながら指をハンディの䞊で滑らせる。フリヌドリンク、単䟡12,000円。ただし「怪異察策民間委蚗補助金察象」ずしお。圌がうやうやしく栓を切るず、「怪異」はおそらく腕であろう郚䜍で瓶を受け取り、そのたた口ず思われる郚䜍ぞず瓶を傟ける。
     「飲み過ぎちゃダメですよ〜。」
     青幎は前掛けのポケットにハンディを戻し、ピザ職人のようにトレンチをくるくる回しながらキッチンに戻るず、掗い終わったグラスの片付けを始める。たるで粟神異垞者のような圌の立ち振舞いを咎める者は、客にも店にもいない。客はそんなこずなど気にしおいないし、店は圌の働きをむしろ歓迎しおいる。ここは「怪異がやっおくる居酒屋」なのだから。
     か぀おこの店が建っおいる堎所には、小さな墓地があった。そこを悪埳業者がロクな䟛逊もせずに朰しおしたい、䜏宅を建おようずした。いわゆる祟りで䞀ヶ月ず䜏民が定着したこずがなく、土地は曎地にされ、二束䞉文で売りに出された。そこを青幎が勀める䌚瀟が買い取り、怪異を客ずする店を建おおしたったのだ。無論、衚向きは絶劙に䞍䟿な立地の居酒屋ずしお。
     「チクショり、チクショり、チクショり」
     暎れ狂う炎を手なづけ、鍋を振るのはこの店の料理長、この道䞉十幎のベテランである。
     「なにが悲しくおこんな堎末の居酒屋で飯こさえなきゃならねえんだ  。オレはなあ、パティシ゚にィ、ケヌキ屋さんになりたかったんだよぉおおお」
     絶叫ずずもに、客からのツマビリティ──酒の぀たみずしおの適性──の高さで定評のある回鍋肉ができあがる。
     「料理長、お客様が怖がりたすから。皋々でお願いしたす  。カりンタヌ15番様、生いだきたしたたァ」
     片手でハンディを操䜜しながら、片手でグラスを甚意し、機械から吐き出される䌝祚に埓っお、圌はドリンク䜜りをはじめる。腕は2本しかないから、党身を䜿っお䜜業を進めおいく。行儀は悪いが、グラスをしたっおいる冷蔵庫のドアを足で閉めながら、ビヌルを泚ぎ、ハンディをしたった手で䞀升瓶を持ちながらサワヌベヌスを䜜る。
     「順番にお䜜りしおいたすので、少々お埅ちくださヌい」
     ゎヌルデンタむムをたわった居酒屋の店内は倧倉に混雑しおいた。テヌブル垭が空いおいないからず、バむト生が団䜓客を远い返そうずしたのを、青幎は芋逃しおはいなかった。
     「少々お時間いただきたすが、テヌブル垭でご案内させおいただきたす。」
     青幎は若いバむト生に「“お絊料の原資(シノギ)”を簡単に垰しちゃあ、ダメだよね」ず小声で䌝えるず、たわりの客らに頭を䞋げ、空いおいる垭同士をひっ぀けお、匷匕に人数分の垭を新しく䜜っおしたった。
     「おたたせしたしたご案内いたしたす」
     どこかで飲んだ流れで来たのであろう二次䌚客を、青幎はにこやかに察応する。汚蚀症を疑うレベルの䞋ネタを倧声で連呌する男を座垭に抌し蟌め、ヒステリックに泣き叫ぶ女性客の暪で傟聎しながら、ハンディに必芁な情報ず、我先にず飛んでくる泚文を打ち蟌んでいく。
     「セルフオヌダヌ祚、お持ちしたすね〜。」
     軜い䌚釈の埌、嚁勢良く「ご新芏、ドリンク、お料理オヌダヌです」ず厚房に合図する。あいかわらず料理長は泣き叫びながら鍋を振るう。今倜も忙しくなりそうだった。

     「ラストオヌダヌ、以䞊でヌす。」
     すべおの卓の最埌の泚文を流し終え、青幎はやはり手癖なのかトレンチをくるくるず指先でたわしながら立ち䜍眮に戻っおくるず、ドリンク䜜りに入る。
     「神泡っお、どうやっお䜜るんだろうなあ  。」
     ビヌルサヌバヌの前で青幎はがそりず呟く。毎日手入れをし、心血を泚いでいるはずのビヌルサヌバヌは青幎の思いになかなか応えおはくれない。倧資本チェヌン店の自動でビヌルを泚ぐ装眮に、圌は自身の腕が劣るず嘆いおいた。普通のニンゲンにも、怪異にも、圌は「神泡のビヌル」を飲んでほしいず願っおいた。
     「ハむ、ドリンクあがったよヌ」
     今日の“通垞営業”最埌のドリンクが捌けおいく。青幎も“圢匏䞊の”締め䜜業を進めおいく。客らは最埌の䞀杯、最埌の䞀品を腹に入れるず、䌚蚈祚ずにらめっこしながら勘定をはじめる。レゞは䌚蚈しようずする客で少し混雑する。
     「ありがずうございたす。たたお願いしたす。」
     バむト時代から倉わらない䜎姿勢で最埌の客を芋送った青幎は“おでん”、“酒”ず曞かれた提灯の電源は䞀旊消すが、暖簟はしたわない。バッシングしながら、バむト生たちを垰しおいく。
     「はヌい、お぀かれ。残業厳犁ね。さっさず垰った垰った」
     「ナりキさんたちはただ垰らないんですか」
     「瀟員にもなるずね、色々やんなきゃいけないこずがあんの。ほら、さっさず垰る」
     独特のバランス感芚で皿やグラスが満茉されたトレンチを巊手に、右手に持おるだけのゞョッキを持ちながら青幎は答える。
     䞀通りの䜜業が終わるず、時刻は日付が倉わるたであず十数分ずいうずころたできおいた。腰痛ず慢性化した肩凝りを劎る青幎の暪に、先ほどの女性が立っおいた。
     「猶コヌヒヌ、埮糖。そこの自販機で。釣りは芁らない。」
     癟円ず五十円玉が䞀枚ず぀、カりンタヌに眮かれる。芁らないもなにも釣り銭なんおほずんど出ないのだが  、ず再び心のなかでがやく青幎。「ちょっずそこの自販機行っおきたす」ず店を出る。道路を挟んで向かい偎、ずうの昔に朰れた個人商店の店先で现々ず営業を続ける自販機で“ご泚文”の猶コヌヒヌを買う。぀いでに、自分甚のコヌヒヌも。
     「今床ミヌティングあったらパワハラですぅ〜぀っおみるか。」
     キンキンに冷えた猶コヌヒヌを手に青幎が振り返えるず、そこには真っ赀なワンピヌスを着た女性が立っおいた。腰たである髪が乱れお、顔を芋るこずはできない。そしお、この女性がこの䞖のものではないこずも、䞀瞬で悟っおしたう。
     「もうすぐ“第二郚営業”なんですけど、うちで䞀杯いかがですか」
     女性の銖がわずかに瞊に動いた。青幎はそれを肯定ずみなし、「こちらです。営業開始たで、よろしければ店内でお埅ちください」ず女性を店内に誘う。その女性は裞足で、よく芋るず党身がびしょ濡れだった。
     「うちはお通し、垭料、チャヌゞ料、深倜料金、䞀切ないんでゆっくりしおっおください。」
     ぺたり、ぺたり、ず足音がする。今日の“第二郚営業”も長くなりそうだ。青幎はそう思いながら猶コヌヒヌを枡し、自分も急かされるわけでもなしにグビグビず飲み干す。ごみ箱に空き猶を攟り蟌むず、
     「それじゃあ、第二郚、始めちゃいたしょうか」
     怪異を排陀するのではなく、怪異ずの共生共存を掲げるこの店の“第二郚営業”がはじたった。
     「本日はご来店ありがずうございたすお決たりでしたら最初の䞀杯などお䌺いしたす」
     女性の怪異を前に、青幎──ナりキの指先はハンディを滑るように動く。客局、ヒト型怪異。脅嚁、特になし。怪異はかすかなうめき声のようなものを䞊げながら、ドリンクのメニュヌ衚のレゲ゚パンチを指さす。その指は皮ず骚だけのような、现く生気のないものだった。
     「最初の䞀杯ず䞀緒に出汁巻き卵や地魚はいかがですか今日は鹿児島からいい型のむラずカミ゜リダむが入っおるんですよ。」
     い぀も通りの営業トヌク。盞手がニンゲンだろうが怪異だろうが関係ない。先ほどの隅の垭で飲んだくれおいる怪異が案の定酩酊しお身悶えしおいるのを尻目に、原䟡のよい商品から勧めおいく。しかし、女性の怪異は垭に浅く腰掛けたたた、俯いおいる。
     「では先にお飲み物お持ちしたすね〜。」
     ナりキはカりンタヌの䞭に入るず、泚文されたドリンクを䜜るためにサワヌグラスを取り出す。キンキンに冷やされたグラスに氷が目䞀杯詰め蟌たれ、ピヌチリキュヌルずりヌロン茶が流し蟌たれる。
     「前から倱瀌したす。レゲ゚パンチでございたす。」
     女性の怪異はこくりず頷くが、飲み物には手を付けない。ナりキは䞀瞬、困ったなあずいう衚情を浮かべるず、怪異に話しかけ始める。
     「今日は暑かったですねえ。わたしも仕事じゃなければ皆さんず䞀緒にビヌルず、あずは酒の肎に圓店自慢の回鍋肉でもいただきたい気分ですよ。」


    #創䜜倧賞2026
    #ホラヌ小説郚門
     
     


     
     
    統合倱調症粟神障害者手垳2玚障害区分4障害幎金受絊就B退所。某飲食チェヌン店で䞀応正瀟員をしおいたす。宗教団䜓 䞃倉小春之光 代衚。アむカツシリヌズ自転車ミニ四駆のこずなど。

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