
嫌な夢を見た
昨年に骨折した母の回復具合を見に、実家へ帰った。
新幹線を降りて電話すると、
「何時に来るか分からなかったから、ずっと家にいた」と言う。
「聞けばいいじゃないか。コミュニケーションを取りなさいよ」
そう返した。
実家では、二十年以上ぶりに二階で寝た。
夢を見た。
母と父について話している夢だった。
「お父さんって、こんな人だったよ」
「こんな良いところがあって、こんな悪いところもあったよ」
そんな会話をしていた。
目が覚めた。
気づいた。
自分は父のことを何も知らない。
父のことは、家の中ではタブーだった。
口に出すことも、聞くことも、ためらわれた。
今の自分は父親になっている。
妻と何度も話し合い、養子縁組という形で娘を迎え入れた。
母はいま、おばあちゃんだ。
けれど母は養子縁組を受け入れられず、娘とはいまだに一度も顔を合わせていない。
会ったこともない祖母のこと、骨折のことを気にかける、とても優しい娘なのに。
実家では、今度は娘の話がタブーになっている。
目が覚めてから、そのことを強烈に意識した。
何かの感情で、胸がいっぱいになった。
「聞けばいいじゃないか」
「コミュニケーションを取ればいいじゃないか」
自分が口にした言葉が、頭の中で何度も響いている。
嫌な夢を見た。