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AIに怯える僕が、蝶に泣かされた話

    正直に言うと、最近ずっと、AIが怖かった。

    毎日のように新しいツールが現れて、「これも、あれも、もう人間がやらなくていい」と告げてくる。 ものをつくることで生きてきた僕にとって、それは静かに足元を崩されていく感覚だった。

    そんな僕が、まさか蝶に泣かされるとは思っていなかった。


    週末、子どもたちをどこかへ連れていきたくて、頭の中で電車の乗り継ぎをたどる。 「これなら行けそうだ」 そう思って向かったのが、多摩動物公園だった。

    ほとんど下調べもせずに行ったのに、ここが想像をはるかに超えてすごかった。

    ゲートをくぐると、ベビーカーの貸し出しがある。 途中で長女が疲れて、のたうち回る未来がはっきり見えたので、迷わず借りた。

    最初に向かったのは、入口から一番近い昆虫館。 いま絶賛"虫ブーム"中の長女は、もう大喜びだ。

    カブトムシが幼虫から成虫になるまでが、成長の順に並んでいる。 それも、標本ではなく、生きた展示。 親としても説明しやすくて、子どもと顔を見合わせながら、自然と会話が生まれていく。


    しばらく進むと、ドーム型の温室のようなエリアが現れた。 どうやら、蝶が放し飼いにされている場所らしい。

    足を踏み入れた、その瞬間だった。

    右を見ても、蝶。 左を見ても、蝶。 見上げれば宙を舞い、花のまわりにも、葉の上にも、蝶。

    色とりどりの蝶が、数えきれないほど舞っていた。

    40歳を過ぎて、こんな大きな声を出したのはいつ以来だろう。 気づけば僕は、子どもより先に「わぁぁーー!!」と叫んでいた。


    そして、その片隅にあった説明書きを読んで、僕は不意に泣いていた。

    ここは、ただ蝶を放しているだけの場所ではなかったのだ。

    幼虫を育てる。
    成虫になるまで見守る。
    幼虫が食べる植物を育てる。
    蝶が蜜を吸う花を育てる。

    そのすべてを、多摩動物公園のスタッフの方々が、手で支えていた。

    目の前に広がっていたのは、自然そのものではない。 けれど、自然以上に"自然"を感じさせる空間だった。

    地道な努力と、深い愛情。
    その積み重ねの果てに生まれた、自然ではあり得ない自然。

    蝶に泣かされたのではなかった。 正確には、その裏側にある、誰も気づかない手仕事に、泣かされたのだ。

    このドームは、蝶の「展示」ではない。
    ひとつの劇場だったのだと思う。


    「力作」という言葉がある。

    時間をかけたもの。
    苦労したもの。
    一生懸命つくったもの。

    とても大事なことだが、
    それだけでは、人の心は大きく動かないのかもしれない。

    つくり手の魂と時間が注がれ、その上に、観る人を喜ばせるための設計と演出が重なったとき。 はじめて、そこに感動が生まれる。

    蝶の楽園には、その両方があった。


    帰り道、ずっと足元を崩していたはずのAIへの怯えが、少しだけ静かになっていた。

    AIを使うか、使わないか。
    その手前に、もっと大事なことがある気がしたのだ。

    受け手の喜ぶ顔を想像すること。
    その人が驚く瞬間を思い描くこと。
    見えないところにまで、手をかけること。
    頭と手をフル回転させて、夢中でつくること。

    きっと、そういうものにしか、本当の感動は宿らない。
    そして、そここそが、AIには立ち入れない場所なのだと思う。

    多摩動物公園の蝶は、それを静かに教えてくれた。


    僕も、そういう仕事をしていこう。

    そう、背筋が伸びた休日だった。

     
     
    中小企業専門ブランディングデザイン会社の株式会社ふうけいです。 企業の「想い」を「価値」に変えるブランド構築から、ロゴ・WEBサイトなどをワンストップで制作。 理念や文化をブレずに伝え、顧客との絆を創り、ファン化させる仕組みを構築します。 https://hukei.co.jp

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