メインコンテンツへスキップ

1つめ


    全ての始まりは、セミだった。そう。あの夏といえばのあいつだ。
    その日は一日中動いて疲れて帰宅した、時間は夜にさしかかるあの感じの時間帯だった気がする。
    暑くて、足はだるくて、一刻も早く座りたくて、朝家を出る前にベランダに日向ぼっこさせている子たちを迎えにいこうと夏の暑さで縮み気味のスリッパに片足を通してすぐのことだった。
    何かが、暴れた。
    姿は見ていないが私の足のすぐそばで。
    私は虫という虫が、この世に存在しているあの小さい生き物が大の苦手で。
    苦手すぎる自分にもうんざりで、虫とともに自分もろとも苦手になりつつある今日この頃で。
    結論から言うと、セミが、いた。足元に。
    大きな悲鳴こそ我慢したが、と、言いたいところではあるがしっかり叫んだ。
    70m程の距離にある消防署まで響いた。おそらく。というか確実に。
    やや縮み気味のスリッパに通したばかりの足を今までしてきた全てのスポーツを生かしてぬぎ、窓も同じくの勢いで締めた。一日中日向ぼっこしてきたあの子達を置いて。
    あの時の私はとにもかくにもパニックで。それはパニックの人の顔をかいて下さい、と言われたら10人に7人はこんな顔を描くだろうというような顔で。
    どうしたらいいかが全くわからないこの状況でまさかこのあと来客まであるとはこの時の私は、まだ、思いもしなかった。
    その後の私はしばらく窓の内側から、確実な安全地帯から、ライトを使って眺めることしかできずただひたすらに観察を続けていた。小学校での理科の実験を思い出したがそんな余裕は長続きせず、すぐにセミの観察に戻った。
    どうしようか。このままでは日向ぼっこ軍団は救えない。
    隊員たちには申し訳ないが私はセミには勝てないのだ。いや。勝ちたくないのだ。逃げたいのだ。
    この世の何事も戦わないと進まないことが大半で、私とセミももれなくそうで。
    ただ先ほども言った通り戦いたくない私には何の手立てもなく、眺める以外の手段がなかった。。

    あなたへのおすすめ