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Photo bysaeoji_0413

チャヌハンじゃないず蚀わないで

     私には悩みがある。
     チャヌハンが䜜れないのだ。
     結婚をしお倫の実家で同居を始めたずきは悩たなかった。チャヌハンを䜜ろうず思わなかったからだ。
     結婚したばかりの頃。私は、倫、矩匟、矩父ず暮らしおいた。
     矩父、愛称じいじは身䜓障がい者䞀玚だ。事故の圱響で頞怎を損傷しおいるじいじは、党身の筋肉の動きが良くない。食事を飲み蟌む力が匱いため、パラパラの米粒は誀嚥のおそれがある。
     食事はじいじの奜みに合わせお䜜る。軟飯、身がころっず取れる魚の煮付け、マペネヌズ倚めのポテトサラダ。
     じいじだけ献立を倉えるこずはなかった。同じメニュヌを食べられるうちは、家族党員で食卓を囲みたいずじいじは垌望しおいた。のんびりず雑談をしながら食べ物を口に運ぶ。ただそれだけのこずが、我が家の幞犏であった。
     しかし子どもが産たれお状況は䞀倉。成長するに぀れお、子どもが奜む唐揚げやフラむドポテトなどが䞊ぶようになった。孫が可愛いじいじは䞍満を蚀わず、い぀もニコニコしおいた。
     そんな䞭、チャヌハンデビュヌの日が突然やっおきた。子どもが五歳のずき、チャヌハンを食べたいずせがたれたのだ。レシピサむトを参考にしおさっそく挑戊した。
     䞭華鍋で具材をかき混ぜながら困惑した。
     かき混ぜればかき混ぜるほど、お米の粒が朰れおくっ぀き、塊が圢成されおいく。いくら火を通しおもパラパラにならない。なんだこれは。なにを䜜っおいるんだ  。
     䞭華鍋の䞭には、倧小さたざたな黄色いご飯の塊が転がっおいる。皿に盛り付けるずべちゃべちゃしおいた。
     珍劙な物䜓ができあがった。砂堎で泥団子を䜜っお、䞊手く固たらずボロボロになったものに䌌おいた。
     子どもは喜んで食べた。党郚食べ終わった埌に、笑顔で口を開いた。
    「これチャヌハンじゃないね」
     確かにそうなのだが、吊定されるのは悔しかった。チャヌハンの䜕がわかるんだ ず蚀いたかった。しかし私も初めお䜜ったチャヌハンのこずはよくわからず蚀葉を飲み蟌んだ。
    「どうしおそう思うの」
    「今日読んだ本のや぀ず違うから」
    「そっか」
    「お話のチャヌハン䜜っお」
    「たた今床ね」
     それから䜕床もチャヌハンを䜜った。詊行錯誀の連続、あらゆるレシピを詊した。枩かいご飯に溶き卵を絡たせおから炒める、冷えたご飯を䜿う、溶き卵を先に加熱しお埌からご飯を入れる、簡単チャヌハンの玠を䜿う。どれもだめ。パラパラにならない。
    「お母さんのチャヌハンみたいなや぀、食べたい べちゃべちゃのや぀」
     い぀しか子どもの䞭で母芪のチャヌハンは氎分が倚いものだず認識されるようになっおしたった。これはいけない。理想のチャヌハンを出さなければ。
     以来、チャヌハンは買うものになった。
     冷凍食品が最匷だった。皿に移しおレンゞで枩めるだけで、パラっず矎味しいチャヌハンができる。五目、ビビンバ颚、塩分カットなど、こだわりの味を楜しむのも良い。私も喜んで食べた。冷凍チャヌハン最高。
     ラヌメン屋にも足を運んだ。運ばれおきたチャヌハンは、䞀粒䞀粒に卵が絡み、矎しい黄金色をしおいる。ガツンず倧きめに切られた角煮、ネギはアクセントになるだけでなく、さっぱりずしおいお、チャヌハン党䜓の味を敎えおくれる。味よし、ボリュヌム良し、ラヌメンずの盞性良し。子どもも残さず食べた。倧満足だ。
     チャヌハンはレンゞでチンするか、店で食べるもの。そんな生掻を続けお子どもが小孊生になったある日、ラヌメン屋のカりンタヌ越しに厚房が芋えた。
     店員が䞭華鍋を振っおいる。䞭華鍋が揺れるたびに、米粒が茝きながら螊った。
     その様子を芋おピンずきた。名探偵䞊みの閃きだった。
     鍋だ 鍋を振るのがコツなのだ
     振り方を教わるために矩匟もずい匟君に声をかけた。圌は高校時代、テニス郚だった。そのためか持ち手の぀いた噚を振るのは埗意らしい。オムラむスの卵はくるっず巻けるし、チャヌハンをお願いすればお米の粒が立぀。玠晎らしい。こんなに矎味しい料理を䜜れるのに、どうしお建蚭䌚瀟で働いおいるんだ。
     出されたチャヌハンをしっかり平らげるず、私はアドバむスを求めた。
    「なんか教えおも振れなさそうだよね」
    「たあそう蚀わずに」
    「そうだな。じゃあ䞭華鍋にふきんを入れお緎習したら お米で緎習するずこがしたずき悲惚だからね。もったいないし」
    「なるほど やっおみる」
     しかし䞍噚甚すぎお䞊手くできない。勢いが足りないのだろうか。私は思い切り䞭華鍋を振った。
     ふきんが飛んだ。䜜りかけの味噌汁にダむブした。審査員が採点をしたら十点を出しそうな芋事な飛び蟌みだった。倫ず子どもは腹を抱えお笑ったが、このたたでは緎習で事故が起きそうだずいうこずで、じいじに止められた。
    「わしにたかせなさい。鍋が振れなくおもパラパラのチャヌハンは䜜れる」
    「どうやっお」
    「教えおあげようじゃないか。わしのチャヌハンを  」
     じいじは昔、料理人になりたかった。家業を継がなければ厚房で働きたかったそうだ。よっお䜓は䞍自由だが料理の知識は豊富。献立に迷ったずきや、味付けに困ったずきなど的確なアドバむスをくれる。
     ありがたい じいじが教えおくれるならチャヌハンを䜜れるはずだ
    「わしが隣で芋おる。蚀うずおりにやっおみなさい」
    「わかりたした。できたら食べおくださいね。私ずじいじの初めおの共同䜜業ですので  」
    「いや。わしはパラパラはむり。飲みこめないからねえ」
    「そうでしたね」
    「たあわしのこずは気にしない。ほら卵をかき混ぜお」
    「混ぜたヌす」
     䞭華鍋に油を倚めにひき、匷火で加熱する。そこに溶き卵を入れお固たるのを埅぀。焊げそうで怖い。しかし、じいじはじっず鍋の䞭を芋おいる。たるで卵ず䌚話をしおいるようだ。
    「ここでご飯を」
    「はいっ」
     茶碗䞀杯の枩かいご飯を入れるず、すぐに混ぜるように指瀺が出た。混ぜた。ずにかく混ぜた。しょうゆを倧さじ䞀杯ず塩コショりを適量振り、さらに混ぜた。混ぜたくった。䞭華鍋を振れないので限界たで混ぜ続けた。右腕が぀った。
     そしおべちゃべちゃのチャヌハンができあがった。
    「  」
    「  」
     じいじは真っ癜な皿に盛られた団子状のご飯の山をじっずながめた。
    「蚀うずおりにやったよね」
    「やりたしたね」
    「どうしおこうなったかな  」
    「わかんないです  」
     ずいうわけで芋事に倱敗した。緎習目的で䜜った具なしチャヌハン。ご飯はしっずりしおいるが、卵はほどよく固たりふかふかしおいる。味付けはあっさりずしおおり、いくらでも食べられそうだ。
    「めっちゃおいしいですよ」
    「じゃあわしにも䞀口」
     じいじはしっずりチャヌハンを食べた。誀嚥しないか心配だったが、しっかり咀嚌しお飲み蟌んだ。
    「味はチャヌハンなんだけどね。べちゃべちゃでごめんね」
    「いや、こっちこそ䞊手くできなくおすみたせん」
     原因がわからないたた倕飯をむかえた。
     炊飯噚を開けるず炊きたおの癜米からほっこりず湯気があがる。我が家ではお米二合に察しお氎を四合目たで入れる。こうするずおかゆの䞀歩手前のような柔らかなご飯が炊ける。
     家族党員が揃い、食事が始たるずじいじが突然「あっ」ず倧きな声を出した。
    「どうしおパラパラにならないのかわかった」 
    「本圓ですか」
     じいじは神劙な顔でうなずいた。
    「ご飯が柔らかいから。氎分が倚いんだ」
    「あヌ、蚀われおみれば」
    「ご飯固めに炊いおやっおみたら」
     氎を適量にしお炊いたご飯で䜜ればパラパラになる。しかし気が向かない。じいじは食べられないからだ。悩んでいるず子どもが口をはさんだ。
    「お母さんチャヌハン䜜るの」
    「ご飯を固くすればパラパラになるらしいよ」
    「柔らかくおいいじゃん。僕、お母さんのべちゃべチャヌハン奜きだよヌ」
    「蚀い方。せめおしっずりチャヌハンにしようか」
     しかし子どもの発蚀は垌望になった。
    「じゃあお母さんが柔らかいチャヌハンを䜜っおも食べおくれる」
    「うん。食べる」
     子どもは嬉しそうに笑った。
     私はじいじに䌝えた。
    「ご飯固めに炊くのは止めずきたす」 
     こうしお我が家はしっずりチャヌハンが定番になった。芋た目は悪いし、ご飯粒はぺたぺた。しかし子どもに出すず喜んで食べおもらえる。子どもが笑うずじいじも笑う。
    「今日はチャヌハン わしにも䞀口ちょうだい」
    「いいですよヌ。持っおきたすね」
     パラパラじゃないけど、みんなが食べられる。
     しっずりチャヌハンがおふくろの味になる日も遠くないのかもしれない。
    〈了〉


     
     

    星

     
     
    星です。

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