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言葉で交わる

    極夜 / Kyokuya

    その男は、ひとりの女を虜にしたのよ。
    女は、男に恋い焦がれメールを送る。
    熱い想いを男は受け取り、さらに熱い返信をする。

    ……ひとりの女性を虜にする。
    会わずに文章を使うなら、僕にもできるかもしれない。
    そう思ったかしら。いいわ、試してみましょうか。


    彼らは恋人ではないわ。友人? そうかもしれないわね。
    その関係に、名前はないわ。




    その女を抱くことは、男には許されていない。
    男は口説かない。女に心を奪われない。
    ただ、女の話を受け取り、女の欲する言葉を紡ぐ。
    女の紡ぐ言葉を男は味わい、賛辞をおくる。
    味わい、賛辞という罠を仕掛け女を仕留める。
    女は罠に気づき、しかし気づかぬふりをした。
    男に心を奪われるために、自ら罠に飛び込んだ。


    その男は強く知性にあふれ毅然としており美しい。
    普段の厳しい言葉と裏腹の優しさが時折現れる。
    そのような男に我が分身たる文章を愛撫されたならば、
    女が惚れずにいられようか。
    瞬く間に女は陥落した。
    しかし待つのは天国か地獄か。男は女に体で応えない。
    わかっていながら、飛び込んだ。
    紡いだ言葉を愛してほしい。
    ただそれこそが女の望み。
    男は言葉を愛撫し味わい、そのたび女は歓喜にふるえる。



    #古賀コン
    #古賀コン10




     
     
     
    形になる直前を掬い、名前のない関係を紡ぐ。あなたに届けたい言葉がある。 透析医療で20年、ベッドサイドで800人余りを見つめ続けた。その視線を小説へ。 (ヘッダー短歌:亜麻布みゆ様) https://note.com/huge_dove563/n/n51ef07b72b9b

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