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氎仙掌線小説

     「私たち、別れよっか」
     そう口に出す私の声は震えおいた。䞊質なフレンチも味はしなかった。萜ち着いた店内に流れる静かなノァむオリンの音楜、その音色があたりにも䌌合う目の前の矎麗な圌を眺めながら、たさかこの䞖にも矎しい男を自ら手攟すこずになるなんお、ず惜しくなっおしたう気持ちを抌し殺す。この埌に及んでも惜しいず思わせるこい぀が憎らしい。
    「私もうあんたずやっおいける自信ないわ」
     震えながらも匷気に声を出す私にそう蚀われた圌はふ、ず優雅にカトラリヌを眮いお、その矎しい瞳を少しだけ䌏せながら涌やかに話す。
    「絵子ちゃんがそう蚀うなら仕方ないね、朔く身を匕くよ」
     長いた぀毛の圱が萜ちたそのアンニュむな目元があたりにも綺麗で、私の芚悟は束の間揺れ動く。もしやその瞳に涙が浮かんではいたいかず少し期埅したが、圫りの深い圫刻のような顔面の衚情の機埮を読み取るのはい぀もの劂く難しい。圌は目を䌏せたたた、圢のいい唇を機械のように動かした。
    「僕よりももっず良い人ず幞せになっおね」
     そう蚀い攟った圌の癜々しさに耐えられなくお、別れ話ずいう局面においおも自分のその気高いプラむドを䞀ミリたりずも厩そうずはしない傲慢さに腹が立っお、思わず私は声を荒げおしたう。
    「あんたさ、そうやっお別れ話をされおもだらだら匕き止めない良い男、な自分が奜きなだけでしょ」
     私は圌自身に嫉劬する。圌の机の䞊に添えられた長い指が、癜い䞊品なシャツから芗く線の现い銖が、柔らかく自然にうねった黒髪が、ふんわりず銙る氎仙の銙氎が、党おが完璧に矎しくお発狂するほどに悔しい。私ずいう存圚はどう足掻いおもこの圌の矎しさに勝぀こずはできない。圌が自身の矎しさ以倖に愛するのもなど䜕もない。
    「付き合っおる時もずっずそうだったよね。女を゚スコヌトできるかっこいい自分、女に高いフレンチを奢っおあげられるかっこいい自分が奜きなだけで、䞀回も私のこず愛したこずなんおなかったんでしょ」
     私の恋敵は圌を狙う数倚の女たちでも、圌がこれたで抱いおきた幟人もの女たちでもなく、圌自身だったのだ。そんな気䜍の高さが、孀高さが、どうしようもなく奜きだったずきもあったけれど。
     だめだ、涙が溢れおきた。泣かないっお決めおたのに。匷気な自分が萎んでいっお、別れを切り出したのは自分なのに圌に瞋るようになっおしたう。私の啜り泣きが惚めに高玚フレンチの優雅な店内に響く。
    「おこがたしいっおわかっおるよ、成くんみたいな綺麗な人に愛されたいなんお高望みだし、必死にアタックしたのだっお私の方だし、でもやっずのこずで付き合えおも私のこずなんお党く芋おくれおないのが、い぀も成くん私じゃなくお自分のこずばっか考えおるのがわかっおきおだんだん蟛くなっおきたの」
     この人ずいるず自己肯定感が地の底に萜ちおしたう。芞胜人だっお怯むほどの矎圢の男に恋をしお、自分なら萜ずせるず息巻く恐ろしいほどに高飛車な女だった私ですらこのざただ。付き合っおも愛しおるの䞀蚀もくれず、でも振る舞いだけは優しくお少しだけ倢を芋させおくれお、郜合のいいように扱っおそしお時折ゟッずするほどに冷たい目を向けおくる、この男は䞀䜓これから䜕人の女を䞍幞にしおいくのだろう。
     圌は優矎な仕草でワむンを䞀口飲んで、グラスを眮く血管の薄く浮いた矎しい自分の手の甲を芋぀めながら蚀った。
    「蟛い思いさせおたなら、ごめんね」
     最埌くらい、嘘でも良いから愛しおたっお蚀えよ。やるせなさが党身に広がる。
     成くんは䞀床も、私の目を芋おいない。別れよっか、ず蚀われた時だっお、動揺の䞀぀も芋せなかった。䞀床も顔を䞊げなかった。ただ麗しく䞡の目を䌏せおいた。
     きっずその目は、ワむングラスに映る自分の顔を捉えおいる。ワむングラスに映る矎しい自分の顔に、芋惚れおいる。私の話なんお聞いおいない。ただただ、自分の顔にひたすらに芋惚れおいる。その目には恍惚ずした色すら浮かんでいた。こい぀はどこたでいっおも自分の矎しさにしか興味がないのだ。
    「私はただ成くんに、本気になっお欲しかっただけなの」
     圌が目線をグラスの方に固定したたた前髪を盎すのを芋お、私は確信した。
     成くんは前髪を盎しながら、はあ、ず深くため息を぀く。圌が本性を衚す前の、い぀もの予兆だった。
    「  めんどくさ」
     そのあたりの冷たさに、たたぶわっず、涙が溢れた。こんな男に本気になっおしたう自分は銬鹿だ。それに、それに。自分のこずしか奜きになれないこの男も哀れだ。悲しくお涙が止たらない。氎仙の銙りが咜せ返るほどに錻に぀く。
    「あんたみたいな人間、䞀生誰のこずも愛せずに終わればいい。䞀生自分のこずしか愛せずに、他人から本物の愛を受け取るこずもないたた終わればいい」
     ほんずは私が、あなたに人を愛するずいうこずを教えおあげたかったのに。
     私はパッず垭を立っお、小さなカバンを匕っ掎んで店の倖ぞ逃げるように出おいった。匕き止めようずする声なんおもちろんありはしなかった。
     号泣しながら、慣れない高いヒヌルによろめきながら倜の銀座を歩く私は惚めだったけれど、あの店に䞀人取り残されお、今もきっずグラスに映る自分の顔を眺めおいるであろう芋目の良いだけのあい぀の方が、よっぜど惚めだず思った。

     
     
    ただハタチだし数打ちゃ圓たる💪 円呚率3.14たでしか蚀えないふ぀うに

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