
胃カメラで、靴下を検査されました
これは、先日の仕事中に立っていられないほどの腹痛がしたので、翌日に消化器内科へ行ったら、急遽胃カメラすることになった男の話。
そして、看護士さんたちに爆笑されたこと以外は、まったく何事もなかった話である。
「一度、胃カメラしましょうか。実は、この後15時から空いているんですよね」
問診が終わった後、その若い男性医師は、お茶にでも誘うように胃カメラを勧めてきた。
兼ねてより胃腸の弱い僕であったのだが、内視鏡検査というものは全く受けたことがない。
「一度ちゃんと見てもらった方がいい」
妻にも親にも、事あるごとにそのように言われていたので、なんの抵抗もなく予約をとった。
「お履き物を脱いで、こちらに足をのせてくださーい」
数時間後、待合室にて看護師さんに言われるがまま、足をストレッチャーにのせる僕。
「はーい、では右手を出してくだ……フフッ!!」
顔をあげると、看護師さんの視線が僕の足元に釘付けになっている。
「く・つ・し・た!!」

や・ら・か・し・た!!
いや、もう完全に油断していた。
まさか診察を受けたその日のうちに胃カメラすることになったり、靴を脱ぐ機会があるなんて思ってもみなかったので、鴨川シーワールドで買った35歳のおっさんが履くにはあまりにも可愛すぎるシャチ柄の靴下を履いてきてしまったのだ。
「あ、えへへ。ありがとうございます」
なにが、えへへだよ。
いや、しかしここで下手に言い訳をすると格好悪い。えへへって言うくらいでちょうど良いのかもしれない。
あくまでも自然に、「あ、いつもこういう靴下履くタイプの人間なんですよねー」くらいの余裕を見せていきたい。
なに。嘘なんてつかなくて良い。人生100年時代である。35歳なんてまだまだ若造。シャチの靴下を履いていて何が悪い。
それに、足元くらい少し若作りしたほうが良いに決まっているではないか。オシャレは足元から。若作りも足元から、である。
すると、看護師さんは「良いですね!かわいい!」と一言述べたあと、何事もなかったかのように準備を再開。
僕もすかさずヘラヘラ顔を顔面にしまいこみ、人生初の胃カメラに向けて神妙な面持ちで気持ちを作ることにした。
「……ご自身で選ばれたんですか?」
まさかの深掘り!
「あ、いや、娘が……」
そして咄嗟の大ウソ!
娘!巻き込んでごめん!
その後、処置室に通されたかと思えば、待ち構えていた看護師さん2名にも「靴下かわいいー!」「鴨シーですよね!私も持ってますそれ!他にも種類あるんですよー!」などとおだてられ。
「あ、あぁ……靴下?かわいいね」
と、寡黙でクールビューティな雰囲気の女医さんからも、忖度かわいいねを頂いてしまった僕。ほんとごめんなさい。シャチに代わってお詫びします。
というわけで、胃カメラ自体は全く問題なく、軽い逆流性食道炎との診断がおりた。
薬を飲んだら翌朝には殆ど治り、今は元気に過ごしている。
これから歳を重ねるにつれ、様々な検査を受けることになる。もちろん、突然病院で靴を脱ぐ機会も増えることだろう。
その度に、今回のようなファンシー靴下を着用しようもんなら、嘲笑の的になることは確実である。
万が一に備えて、我が靴下のラインナップも少し、見直さなくてはならないのかもしれない。
【あとがき】
何か大きなイベント(入卒式など)の時には、SUPER DADと印字された、スーパーマン柄のド派手な靴下を履いています。いまだに誰にもつっこんで貰えていないです。悲しいです。