
背番号の重み
息子が、泥だらけの鞄から小さな布切れを取り出した。
手渡されたのは、背番号「20」
高校一年生の息子が、この夏の大会でベンチに入れるなんて、正直思ってもみなかった。
三年生にとっては、泣いても笑っても最後の夏だ。
背負うものの重みが、一年生とはまるで違う。
それでも、目指す場所はみんな同じなのだと、息子の真っ直ぐな目が語っていた。
試合に出られる確率は、限りなく低いかもしれない。
それでも息子は、「いつでもいける準備はしておく」と言い切る。
グラウンドに立てなくても、声が枯れるまで先輩たちを鼓舞するのだと。
「先輩も後輩も関係ないからな」
そう言って背中を押してくれた先輩たちのために。
同じように汗を流したチームのために。
そして、惜しくもメンバーを外れてしまった仲間のために。
「自分にできることは、全部やる」
その意気込みを頼もしく思う反面、親としてはどこか胸が締め付けられる。
高校野球の時間は、本当に一瞬で駆け抜けていってしまうことを、きっと息子自身もどこかで分かっているのだろう。
だからこそ、この貴重な舞台を用意してくれた監督への感謝が、彼の姿勢から滲み出ている。
どれだけ努力を重ねても、試合が終われば必ず、
勝つ者と、負ける者が生まれる。
それが勝負の世界だ。
先輩たちの夏のために。
チームの勝利のために。
そして、これからの自分自身のために。
泥と汗にまみれたその背番号で、全力の夏を駆け抜けてほしい。